第37話 事後!ソルトがタイゼック家を出た後
なんとか土曜のうちに投稿できました。(-_-;)
書いてたらまだこれは一章に入るのではと思ったので割り込み投稿にしました。ブックマークで最新話から読んでいただいている方にはわかりにくくなってしまい申し訳ありません。
大きな伏線+おまけ伏線なので是非読んで下さい。
◇タイゼック家
「......ソルト=ヨーベクマ......か」
俺は街から帰って来たばかりだと言うのに大きな問題を目の当たりにしていた。
その現況と言うべき存在が今呟いたヨーベクマ家の三男のソルトというただの5歳児。
いや、ここまでのことをしておきながら“ただの”というのはおかしいか。
まさか敵である我が家に使用人として侵入してくるとは。これだけで情報が漏れた可能性が出てきてしまう。
それなのにゴーレムの退治、イカれたメイド長の始末、いじめ問題の解決、さらに我が家の使用人にヨーベクマ家は言うほど悪い奴ではないという洗脳まで成功させてきた。
しかもいじめ問題に関わるメイドを引き抜いて帰ったというじゃないか。
あのメイドは息子のボウラのお気に入りだった。
ボウラはお気に入りがいなくなって悲しんでいるが、ヨーベクマ家の三男に負けたのだからお前が悪いと、ヨーベクマ家への敵意に変換してやった。
ボウラ自身のことはともかく、問題はボウラがお気に入りだからと言ってそのメイドに我が家の秘密を漏らしてしまったのではないかと言うこと。
本当の身内しか知らない、紙にさえ書かない極秘情報もあるのだ。これが敵の手に渡ったとなれば俺の人生は終わってしまう。
これから俺はヨーベクマ家への交渉事などで有利に進めにくくなる。ヨーベクマ家に容易に関われなくなる。
「はぁ......」
これからの不安に思いを馳せると自然と溜め息がでてくる。
街で上手いことやって、少し贅沢をできると思った矢先のこれだからな。
第一なんでヨーベクマ家を我が家に雇ったのやら。いや、これはさっき事を知ってすぐに執事長に聞いてはいる。
答えは「可愛い坊やが困っているのです。普通助けます。本当なら私も一緒に働いてあげたかった」と返ってきた。
これだけなら優しいおじいさんの様に聞こえるが、真の姿はショタ&ロリコンクソ爺なだけだ。
仕事はそこらの執事より格段に上等だが、自分の趣味、つまり小さな子が関わるとその子供に良い姿を見せたいがために、屋敷よりその子供を優先させるという本来なら執事失格な思考の持ち主だ。
今まではそれでもポテンシャルは本当にいいのでなかなか解雇しづらいところもあったが、今回ばかりは許容範囲を越えているため、次に問題を犯したら、即刻解雇だと伝えてある。
......これだけの問題を起こしておきながら、手放すのは惜しいと思えるほど良い執事ではあるんだけどなぁ。
「はぁ............」
最近は溜め息も簡単に出るようになってしまった。俺も年なのだろうか。
前まで軽く振れていた剣も少し動きが鈍り、少し振っただけで肩を痛めてしまう。これは完全に年だ。
まだ40手前の年だが、ずっと机に向かっているから体が衰えてしまったようだ。
だがまぁ、戦力に関して言えば、一応娘であるウレイがいるから問題ない。あいつに敵う人間はそうそういないだろう。
さすがに国軍全体で来られたら相討ちになりそうだが、それでも相討ち。やはり問題ない。
戦力と言えばソルト=ヨーベクマは俺のゴーレムを倒したんだよな。
あれは魔物で言えばランクA相当の強さだ。まさか5歳児が倒せる訳がない。
......あれだな。ヨーベクマの奴も自分の子供を改造したんだな。
改造のことを知ってからまだ2年しか経ってないハズだ。まだ完全には改造できていないだろう。改造にかかる時間と費用はバカにならない。
とりあえず化け物と言える強さになるには最低でも10年、費用の問題を考えたらあの貧乏貴族じゃそこからさらに10年以上かかるだろう。
完全に改造される前になんとか阻止しなくては。
......ボウラも改造してやるか。ボウラにソルト=ヨーベクマの処理をさせよう。
確かソルト=ヨーベクマも貴族学校を狙っているとか。親がすぐに対応できないここで排除するか。
本当なら不相応な場所だと追い出すが、今回は他の貴族に手を出さないように声をかけておくとしよう。
金ならどうとでもなる。どうにかボウラを入学前に完成させてソルト=ヨーベクマを排除してやる。
と、そこでコンコンッコンコンッと扉を叩く音が聞こえる。
「フェイルです」
フェイルは前メイド長に替わって新しく就いたメイド長だ。
何故か勝手に決まっていたが、仕事はちゃんとしているので文句はない。
「伯爵様からのお客様でございます」
「わかった。すぐにいこう」
*
「ようこそいらっしゃいました。どうぞ御上がり下さい」
「いや、構わない。私はただの伝言役だ」
ならそんな偉そうにするなよ。ただの使用人風情が。
「ではどのようなお言葉を?」
「ご主人様から『娘が帰ってきた。貸していた二人を返してほしい』との伝言だ。3日後引き取りに来るので用意をしておいてくれ」
お願いみたいな言い方なのに決定事項なんだな。
ホント良いよな権力を持つものは。
まぁいい。そのうち俺の方が上になる。もう少しの辛抱だ。
あれ、そういえば引き取りはどっちかのハズじゃ......?
「両方ですか?」
「ああ。なんでも帰ってきた娘がだいぶやる気らしい。小さい頃から一緒の二人にサポートして欲しいとおっしゃられていた」
「わかりました伝えておきます」
はぁ......。三人分の穴を埋める使用人を雇わんと。
◇とある男爵令嬢の部屋
「スイレンちゃん。お休みなさい」
相変わらず私のスイレンちゃんは無反応ね。そういうクールなところも可愛いけど。
専属メイドがベッドの掛け布団を持ち上げて待っているからそろそろ寝ましょう。
ベッドに入り込んで、掛け布団を優しくかけてもらう。
「おやすみ」
「おやすみなさい、お嬢様」
光魔法が付与された魔石を解除してメイドが出ていく。
この前までは誰かが一緒の部屋にいないと不安だったけど、最近はこの家の長女だと理解したから我慢してる。
それに今はスイレンちゃんがいるしね。
「ヤッホー。やっと見つけたよ」
「誰!?」
唐突に聞こえた声に驚き、体を起こすと部屋の中には私と同じぐらいの身長の少年らしき人物がいた。
“らしき”というのはその人物が月明かりを後ろに浴び、全体が影になって見えないからだ。
ただこの声はどこかで聞いたような気がする。
「そろそろぼくのスイレンを返してもらうよ」
「!! あなたソルト=ヨーベクマなの!?」
この前ボウラ様の拷問部屋に閉じ込めた少年がそこにいた。
あの状態から脱出できたの? いや、それよりも......
「どうやってここに入ったの!?」
ここは貴族の屋敷だ。夜とは言っても厳重に警備されている。
さすがにボウラ様のように警報装置とかはないけど、雇っている警備員が寝ずの番をしているはず。
「普通に窓から」
「窓!? ここ2階よ!?」
「まぁ、どうでもいいじゃん。とりあえずスイレンは返してもらったからじゃあね」
そういうとソルトはスイレンちゃんを抱えて窓から飛び降りた。
「ちょ――!?」
あわててベッドから抜け出し、窓から身を乗り出してみたが、ソルトの姿はどこにも見えなかった。
「な、何者なのよ......」
「お嬢様? 怖い夢でも見ましたか?」
私の大きな声を不審に思ったのか専属メイドが覗いて来た。
「――って、ど、どうしたんですか!? そんなとこから飛び降りてはいけませんよ!?」
「なにを言って......」
すごい剣幕で近寄ってきたと思ったら、無理矢理ベッドに寝かされた。
「何かあったんですか?」
「侵入者を見つけたのよ」
「そ、そうですか。良かった......もしかして自殺しようとしたのかと思いましたよ」
ああ、窓から覗き込んでいるところを自殺しようとしてると勘違いされたらしい。
というか侵入者って言っているのに良かったじゃないでしょう。
「......大丈夫よ。まだやりたいことが沢山あるわ」
「ふふっ! 私もお手伝いしますよ!」
「これからもよろしくね」
「はい!」
このメイドは私のことを理解してくれる。
このメイドにだけはすべてを話せる。親よりも信用してるっていったら嘘っぽく聞こえるかもしれないけど、本当に小さい頃から私の世話をしてくれる家族みたいな存在なのよ。
それはともかく、本当にあのソルトは何者なのかしら。
スイレンちゃんを抱えて飛び降りるなんて危ないことして............。
はっ!? す、スイレンちゃん!! 連れてかれちゃった!?
「う、うわああぁぁぁん」
「え!? ど、どうしましたお嬢様!」
「すい......ヒック、スイレンちゃんがぁ!!! うあぁぁぁぁぁん!」
「す、スイレンちゃん? あ、スイレン様がいらっしゃらない! 逃げ出したのですね! 安心してくださいお嬢様。私たちみんなで協力して連れてきて見せます!」
許さない! ソルトは絶対に許さない!!
うーん。この世界の幼児は大人びてるので泣き出すとりまきAになんだか違和感を感じた。
「面白い」「もっと読みたい」「とりまきAの本名は?」と思った方は是非ブックマークと評価ボタンをよろしくお願いします! それを糧に作者も生きていこうと思います(笑)




