第36話 離別!さようなら......
すいません投稿遅れました!
これからは気をつけます!
と、言いたいところですが、作者の事情により週に一回の投稿さえ難しくなるかもしれません。
毎週楽しみにしていただいていた読者の皆様には申し訳ございませんが、ほんの数ヶ月だけ投稿が乱れることをお許し下さい。
落ち着いたら報告しますので、それまでは投稿が遅れても「作者本当に生きてるか?」と思って待っていて下さい。
それでは本編スタートです!
◇7日目ー夕方
夕方、俺とラリアとウキリは今、門の前に立っている。
そして目の前にはいつものメンバーが集まっている。
「もうお別れなのね」
ヒラムが悲しそうに言った。
俺たち臨時使用人は今日のこの時間までという契約らしいのだ。
おそらく主人と俺を会わせないための配慮もあるんだろう。
「はい、これ。メイド長のお金とあなたの給料両方入ってるから」
「重っ」
新しく(今はまだ臨時だけど)メイド長になったフェイルから抱えるぐらいの袋をもらった。
「だいたい金貨9枚分だったわよ」
ん?金貨9枚分?
いやいやいや、え、なに? メイド長ってそんなに給料いいの?
もうノルマの金貨15枚の半分以上をクリアしちゃったんだけど?
「クイキにも1割だけわたしておくね。クイキも活躍してたから」
「......ありがと」
1割ってことは、俺が3割で9枚だから金貨3枚分ぐらいもらったのか。合計金貨12枚。
えー、1金貨で1yで、1yが日本円で十万。
てことは俺ら今、120万の大金を抱えているんじゃ......。
いきなり渡された高額給料に戦々恐々としていると、ヒラムが俺に話しかけてきた。
「そうだ。ソルト、一つだけアドバイスしてあげる。前に言った言葉と矛盾しない言葉を選ぶことね」
「矛盾?」
「ええ、昨日は『家族に嫌われている』とほのめかしたのに、今日は『我が儘を聞いてもらっている』という情報が出てきたわ。今回はどちらだったとしてもウキリは安全だと思ったから良かったけど、矛盾した言葉は相手に不安を覚えさせて交渉で有利に進めづらくなるわよ」
あ、本当だ。
もし俺の『家族に嫌われている』が本当なら自分でこの強さを手に入れた凄い坊っちゃんということになる。
逆に『我が儘を聞いてもらっている』なら家族に好かれていて、俺の家に使用人用の風呂があることなどからその家族は使用人を大切にするとわかる。
なるほど、確かに今回はどちらでも大丈夫だな。
いや、まあ話術では失敗したけど、結局ウキリが家に来てくれることになったし結果オーライかな。
......あれ? よく考えたらヒラムが良いお姉さんならウキリを俺が保護する必要無かったんじゃ......。
向こうにもちゃんと信用できる人がいるとは限らない。こんな美人は何かしらに狙われるに決まっている。
なら信用できて人がほとんど来ないうちで匿ってあげた方がウキリの為になる。
そうだ。そういうことにしておこう。
「ウキリも雇い主に失礼のないようにね」
「もちろんです」
「これからは少し寂しくなるだろうけど、ちゃんと仕事するのよ」
「はい。また会いましょう、お姉ちゃん」
二人の挨拶も終わったな。
「それじゃあそろそろ行きますね」
「ええ」
俺らは門を出てもう一度振り替える。
「さようなら。今までありがとうございました。また会いましょう」
「......さようなら」
「長い間お世話になりました」
「またねー」
「ありがとうね」
「ソルトー! 忘れるなよー!」
凄い濃い一週間だった。
とても良い経験だった。
俺もここで成長する事ができた。
タイゼック家の使用人になって小遣い稼ぎ、予想を上回る出来でクリア。
*
私は今、屋敷を抜け出して全力で走っている。もちろん向かう先は私のヒーローのところ。
ソルト様とウキリとヒラムの背中が見えた。
「ソルト様ー!!」
「ほらきた」
どうやらソルト様は私がくることをわかっていたみたい。
さすがソルト様は聡明だ。さっき私が一言もしゃべらなかった理由がそこで別れる気がないからとわかったんだろう。
「はぁ、はぁ、......私もソルト様についていかせて!」
全力だったので息がつらいが何とか言いたいことを絞りだす。
「嫌だ」
「大丈夫、私もソルト様の為に――」
「いや、だから嫌だって言ってるだろ?」
「え......」
身長的に私がソルト様を見下す格好だが、今はなんだかソルト様の方が大きく感じた。
「何でお前みたいなお荷物抱えて旅しないといけないんだ? タイゼック家では使える駒だったから優しくしてあげたけど、外では使えないから要らないぞ? スキルももう全部教えてもらった。もうお前に用はない、ついてくんな」
「な、なんで? 私だってこの中じゃ一番年上だから交渉とか子供だけじゃ怪しいところとかで使えるよ?」
「そんなの自分でなんとかできる」
え?駒? お荷物? 要らない?
そ、そんな。嘘でしょ。ソルト様ってこんな性格だったの?
思わず私は力が抜けて座り込んでしまう。ソルト様と目線はだいたい同じ高さだ。
いや、まだ希望は捨ててない。
「じゃ、じゃあ何でクイキとウキリは連れていくの? 私だって使用人でいいから――」
「クイキはレアスキルを持ってる。ウキリは美人だから。お前には俺より優れているところが1つもねぇだろ」
「そ、それは......」
「じゃあな、お荷物さん。屋敷でおとなしく過ごしてるんだな」
「ま、待って! す、捨て駒で良い! 使い捨てでも良いから! なんなら奴隷でも――」
私がここまで言ってもソルト様は振り返らずに行こうとしている。
そっか、私とソルト様の関係ってそんなものだったのか。考えてみれば確かにソルト様は時々嫌そうな顔をしていた気がする。私のヒーローはこんな感じだったのか。
そう、私が項垂れていると前から叫び声が聞こえた。
「うわぁぁぁ!」
うつむいていた顔をあげると、ほんの少し離れたところでソルト様が尻餅をついていた。
ソルト様の前には4メートルを越す二足歩行の豚が、木製のハンマーを持って仁王立ちしていた。
「オークジェネラルだぁ!! た、助けてぇ!」
ソルト様はそう叫ぶと、すぐに向きを変え、赤ちゃんのハイハイ状態でこっちによってきた。
「そ、そうだ! 今捨て駒でも良いって言ったよな!? じゃあお前が時間を稼げ! 俺を助けろ!」
「え......? 私?」
「そうだよ! お前以外に誰がいるってんだ! 早く俺の為に死ね!」
ソルト様はそういうと何とか立ち上がり、オークジェネラルのいる方とは真逆の方向に走り去っていった。
残された私はオークジェネラルの方に向き直す。こころなしか、オークジェネラルも呆気にとられている気がする。
それも一瞬。すぐにオークジェネラルは私に向けてハンマーを振り上げてきた。
「あぁ......」
私の人生はここで終わりかな。
さっきの衝撃で抜けた力がまだ戻っていない。
憧れてたソルト様はクズだったし、どうせなら一回ぐらい本気で言い返してやりたかったけど、捨て駒でも良いと言ってしまったのは私だ。もう、しょうがないか。
そう私が降り下ろされるハンマーをただただ見つめていた時、唐突に横へ引っ張られた。
「大丈夫か!?」
「ソルト様!! やっぱり来てくれた――」
「何を言っているんだ。ソルトはお前を裏切って逃げただろう」
料理長だった。
「任せろ。こいつは俺が倒す」
料理長はそう言うと、オークジェネラルの方へ走った。
料理長の武器はなんと包丁。あの包丁も他より少し大きいサイズのものだとは思うが、オークジェネラルの巨体も相まってだいぶ心許ないように感じる。
「――おぅらっ!!」
しかしそれは杞憂だったようで、料理長は言い切っただけあってオークジェネラル相手に優位に立ち回っている。
......でも、なんだろう。これがランクBのオークジェネラル?
足も遅いし、攻撃も遅い。そのせいで大きな隙が生まれて、料理長に切り刻まれている。
昨日のゴーレムとソルト様の壮絶な戦いを見たから、とても弱く感じる。まぁ、ゴーレムは単体のランクBなら余裕で倒せるから比べる対象としてはどうかと思うけど......。
なんか、この前のトゥアベアの亜種より弱い気がする。気のせい?
それから数分後、料理長は宣言通りオークジェネラルを倒してみせた。
「大丈夫だったか?」
「あ、うん。ありがとうございます。さすが料理長ですね」
「そ、そうか......!」
料理長に差し出された手を素直に借りて、ノロノロと立ち上がる。
「......なぁ、ラリアちゃん」
「......はい」
料理長にちゃん付けで呼ばれると少し鳥肌が立つ。
一応命の恩人なのでそんな文句は言えないけど。
「お、俺らさ......そろそろ............つ、付き合おうぜ」
「は?............いや、ごめんなさい無理です止めて下さいこっちに寄って来ないで下さい助けてくれたことには感謝しますが本当に生理的に無理ですとりあえずソルト様並みの良い男になってから出直して下さい」
「ぐふぅ!? そ、そこまで言うか? 第一ソルトはお前をお荷物、捨て駒と言うクソ野郎だろ? なんでそいつ見たいになんて言うんだよ」
た、確かに。
多分ソルト様という大きな存在は、たった数日の間に私に大きな影響を与えたんだろう。
ソルト様の本当の性格を知ってもなお、男らしいと言えるのだから。
「だからさ、俺と――」
「だから無理です」
「......こんの、ソルトの嘘つきクソ野郎ーー!!!」
*
「あらラリア、窓の外なんて眺めてどうしたの?」
「ヒラム......」
「もしかしてソルト様にフラれた? ま、それはそうよね」
む、今の一瞬でヒラムにすべてを悟られてしまった。
「ソルトも小さいクセにいろいろ考えてあげてたからね~」
「え? ソルト様が?」
考えてくれてた? 利用してたの間違いじゃなくて?
「そうそう。貴族と使用人が結婚した後のこととか。あそこまですらすらと出てきたってことは一回はちゃんと考えたんでしょうね」
「......その話詳しく教えて?」
ヒラムから教えてもらった内容は小さい子供が考えるようなことではなかった。
そうか。ソルト様も私のこと真剣に考えてくれてたんだ。
なら、私を連れて行かないのは私のため。
じゃあ、あそこでクズらしさをだしたのは私に未練を残させないため。
だったら、あの二人を連れて行くのは家までで、それ以降の旅に連れて行くわけではないハズ。第一あの二人は事情があるからついていかせるんだった。
あそこで料理長が出てきたのもソルト様の計画ね。どうせあの料理長に告白の手伝いを任されたんでしょう。だから最後に嘘つきと叫んだと。
よく考えれば、私がお荷物とか言われたことはあのタイミングで助けた料理長が知るハズないもの。
オークジェネラルが弱かったのもおそらくソルト様がなにかやったんだ。
「あ、そうそう。はいこれ」
「これは?」
「ソルトに預かったものよ。ラリアに渡してだって。なんか『期待していたご褒美』って言ってたわ」
ああ、料理長を調子に乗らさせたあれか。
ヒラムに渡された封筒をあけると中には黒銀色の宝石がついたネックレスが入っていた。
「あのゴーレムから切り取ったんですって。それにしてはずいぶんとツルツルね。磨いたのかしら」
私は早速首にかけて見る。
......綺麗。本当に綺麗な金属光沢。基本は黒っぽいが、光を当てると綺麗な銀色。
確かゴーレムの素材はヘタマイトが中心だったはず。効果は治癒と防御。
この効果が私に使えるがわからないが、首にかけるだけでなんだか心の奥が温かくなって、安心できた。
そうか、ソルト様はこんなにも私のことを考えてくれていたんだ。
貴族と使用人の恋の試練? どんとこいよ。
要は私が全てに耐えれるぐらい強くなればいいんでしょ? 簡単じゃない。やってやるわ。
*
「ヒック」
「......しゃっくり?」
「うーん。なんか秘密で頑張ったことが全てばれたときみたいなしゃっくりだなぁ」
「なんですかそれ......」




