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転生!貧乏貴族の下剋上物語  作者: かめねこ
第一章 タイゼック家の使用人
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第29話 盗聴!はい確定~

「じゃあスイレンちゃんは私が責任を持って育ててあげるから、安心して良いわよ」


 それだけ言うと、とりまき達はスイレンを連れ、俺を残してこの拷問部屋から出ていった。

 ...行ったか。

 俺は早速とどめに連続で入れられた3発の技の傷を治す。今日で何回骨折られたのだろうか...。


 次に[亜空間収納箱(アイテムボックス)無限()]からウルセリア――兄さんから貰った短剣に付けた名前――をとりだして[剣術]スキルを発動すると手首の返しだけでウルセリアを飛ばし、口にされていた猿轡(さるぐつわ)を切った。

 吐血で真っ赤になった布が目の前にはらりと落ち、猿轡(さるぐつわ)取れたことがわかると、拘束されなかった足を限界まで伸ばして、地面に転がったウルセリアに触れる。

 よし!届いた!


「[剣術技・十二支剣技 寅]」


 底上げされた腕力の全力で鎖で繋がれた枷を引っ張ると鎖は簡単に弾け飛びんだ。腕についたままの手錠も割り外し、俺はやっと捕らわれの身から解放された。


◇5日目-午後の仕事


 地下の拷問部屋から脱出した俺は、とりあえず俺の分まで働いてくれているクイキのところにむかった。


「.........遅い。......なにしてたの」

「えっと...」


 どうやら俺が遅刻したことに怒っているようだ。言葉の前の沈黙がいつもより長い。

 一連のことを話すべきか隠し通すべきか悩んでいると、後ろからラリアに大きな声をかけられた。


「ソルト様!?」

「な、なに?」

「拷問部屋でボウラ様のとりまきにいじめられてスイレンちゃんをとりまきAって呼んでる女の子に奪われたの!?」

「なんで知ってるんだよ!!?」



 まさかどっかで聞いていた、もしくは見ていたのだろうか。


「...直感...?」


 超能力だった。

 確かに俺は一回もとりまきのことをとりまきAなんて口にしたことはない。

 超コミュ力やら超直感やら、ラリアは俺が思っているより大分優秀と言うかなんというか......すごいな。本当はそういうスキル持ってるんじゃないか?

 俺がラリアのハイスペックぶりに驚いているとクイキが核心を聞いてきた。


「...ソルト、スイレンちゃん取り返しにいく?」

「うーん。そうだな...とりまきAも"幸せにできる"みたいなこと言ってたからスイレン自身は無事だろうけど...」

「...その"とりまきA"って3人の内のリーダー格のお嬢様? ......だったらスイレンちゃんも危ないんじゃ?」


 まぁ、大丈夫かな。


「これ以上サボるとメイド長になんか言われそうだから仕事最終日まで待つよ」

「......それでいいの?」

「ま、大丈夫でしょ」

「.........軽い」


◇5日目-昼休み


 午前の仕事、お昼を挟み、その後の掃除も完遂し、今は裏庭でラリアと会議を始めている。


「ラリア、調べてもらったいじめが始まった時期はいつ頃だった?」

「色んな人に聞いたけど、皆だいたい1年前って言ってたよ」

「それはお前とヒラムが来た後か?」

「えーと、そうだね。私たちが来てすぐの辺りだね」

「......そうか」


 これでまたヒラムが関わっている可能性が高まってしまった。


 そのまましばらく2人で話していたが、途中からウキリも加わった。

 伝えたいことがあると前もって知らせといたのだ。来るか来ないかは自由にしたが、参加することにしてくれたようだ。こうやって集まれる機会があと何回あるかわからないから来てくれたのはありがたい。

 少し雑談してから本題に入った。


「ウキリ、もし解決できなかった時のために言うけど、これにはメイド長が関わっている」

「...そう、ですか。なんとなくそんな気はしてたんですけどね」

「それと言っておくが、ほとんどの可能性でヒラムも関わっていると思うぞ」

「え!? ひ、ヒラムさんは私に優しくしてくださっていますよ」

「それでも警戒はしといたほうがいいよ」

「......わかりました」


 その後、スキルの練習をしながら談笑しあって昼休みは終わった。


◇5日目-夜


 夕飯の後の夜の仕事も特に問題なくこなして、今は真夜中。今日も昨日と同じように張り込みである。

 ...話し相手がいないのはこんなにも淋しいものだっただろうか。ほんの数日しか暮らしてないのに、既に一緒にいるのが当たり前になっている俺のモフモフな毛玉。

 今何処からか「責めてペットにしてくれ!!」って聞こえてきた気がしたような。


 そんな感じでぼぉっとしていたとき、[世界地図(ワールドマップ)]に反応があった。

 [世界地図(ワールドマップ)]の機能は主に2つ。

 1つ、行ったことのある場所+α(スキルレベルが高いと自分でみてない範囲でもわかるようになる)の地図の記録。

 2つ、1つ目の範囲内に入ってる人や動物、魔物の数がわかる。人は緑、動物は青、魔物は赤って感じのマークでしかわからないため、それが誰なのか、どの動物なのか、などはわからない。


 この内の2つ目の効果で、廊下の反対側からこっちに向かってくる緑のマークが1つあった。

 壁の影からクビだけを出して誰が来るかを確認する。

 [暗視]と[遠視]で暗くても、ズームインして相手の顔はシワまでわかるぐらいはっきりと見える。あれは......メイド長だ。

 メイド長が自分の執務室に来るのはなんら不思議なことじゃない。忘れものだったり仕事だったり。


 しかし今度は俺の来た方向からもう1つ、緑のマークが向かって来た。

 前回俺は追いかけて来たのだから、よく考えれば当たり前だ。

 前にはメイド長、後ろには誰か...挟まれてしまった。

 だが問題ない。俺は[亜空間収納箱(アイテムボックス)無限()]からオークの群れ討伐にも使った赤黒いローブを羽織ると[隠密]スキルを発動した。


 [隠密]スキルはまだレベルが1だからそこまで大した効果はないけど、このローブは[認識阻害]の効果がついているので、おそらくバレることはないだろう。

 このローブはこの屋敷に来る前に、旅商人に魔物の素材と交換してもらったものだ。ただこれは認識を阻害するだけだから1回でも意識されるとそのあとまた隠れ(みの)に使うのは難しい。

 まぁ、そのために保険の[隠密]スキルをかけたんだけど。


 それらの用意が完了して少し経つと予想通りメイドが俺の前を横切った。ローブとスキルのおかげでこちらに気がつく様子もなく、そのメイドは一直線にメイド長の下にいき、2人で執務室に入って行った。

 ...案の定、と言うべきか、通りすがりに見た顔はどう見てもヒラムだった。

 あの優しいけど注意もしっかりする、俺等のお姉さんみたいなひとが悪い事をするなんて信じたくないな。

 それでもまだ確信は持てない。もしかしたら思い違いかも知れないという少しの期待を胸に、2人の入った執務室のドアに耳をつける。


「.........で、あのおぼ.........ね」

「......ね。せいこ.........」


 ...よく聞こえない。......わからないんじゃしょうがないよね、気のせいだったことにしよう。きっと俺の考え過ぎだったんだ。

 そんな風に現実逃避に走ろうと思った時だった。


『スキル[盗聴]を修得しました』


「早く明日にならないかしら! あれが成功すればあの貧乏貴族もきっと貴族という立場から降りてくれる!」

「これで今度こそ本当にウキリを退職させてくれるんでしょうね?」

「ええ、約束ですからね」


 はい完全に聞こえましたー...。

 2人とも黒なのは確定かな。

 俺がラリアに連れてかれたときにヒラムが心配したのはどうなるかわから無かったから、メイド長に連れてかれたとにに心配してないのはどうなるか知っていたから、ってことでいいのかな。

 今思えばクイキが全部に心配してなかったのは俺のチート性能を知ってたからか。


 それはおいといて、メイド長の言葉で言った"貧乏貴族"っていうのはおそらく俺だけのことじゃないだろう。もし家族に危害を加えるなら容赦はしないけど...。

 それにヒラムの"ウキリを退職"ってキーワードも大事かな。この言葉から考えられる意味は大きく分けると2つの意味に取れる。

 ただこれでヒラムが完全な黒じゃない可能性もできてくれた。どうかそっちの意味でありますように。

 

 2人は完全に理解しあっているのか、それからの会話に有益な情報はほとんど無かった。


◇6日目-午前の掃除


 次の日は朝から警戒して動いた。

 メイド長たちの計画はいつ頃始まるのだろうか。俺だけならなんとかなるけど、他の人が関わってくると色々面倒になりそうだ。

 ...こういう時、安心して任せられる仲間がいたらいいのに...スイレンは元気にしているだろうか。


「なに黄昏(たそがれ)ているんですか?」


 スイレンの連れてかれたと思われる方向を見ていると、近くにいたウキリが俺の目の前にヒョコっと表れた。


「離れてしまったあいつのことを、ね...」

「あいつ?」

「......自分で"いい"って言った。......さっさと掃除やる」


 少し格好つけたのにクイキに雰囲気を壊された。

 しょうがない、今日も今日とて掃除しますか。

 そんな感じで時間は過ぎていくが、結局今日の午前中は特に何も起こら無かった。


◇6日目-昼食


 2人はトイレに行ったのでとりあえず俺だけで食堂に来ている。

 1人寂しく昼食をとっていたら頭に何かが飛んで来た。


「いてっ」


 飛んで来た方向を見てみるが、誰も居ない。どうやら窓から投げ入れたようだ。

 辺りを探すと床には小石を包んだ紙が落ちていた。おそらく小石は重りとして使ったんだろう。


「変なイタズラだな。偉い人に当たったらどうす...る...」


 紙を開いて見て、それは可能性の少ないことだと気付いた。その紙には――


『2人は預かった。2人に何かあって欲しくなければ地図にある場所に来い』


 という文字が読みづらい字で書いてあり、裏にはここから目的地への簡単な地図がかいてあった。...ここは、拷問部屋か...。

 完全に俺に宛てた手紙だろう。あの小さな窓から俺に直撃させるとは、これを投げた奴は割と高いレベルの[投擲(とうてき)]スキルを持っているらしい。つまり俺みたいなチートじゃない限り子供のイタズラの可能性は無いわけだ。

 誰が何のためにこんなことするのかわからないが、これはいかないとマズイよな。


 拷問部屋の地図がかいてある事からボウラのとりまき達の命令ではないだろう。昨日案内したばかりなのにわざわざ道のりをかくわけない。

 第一あの子たちは俺が逃げ出しているとわかったら、すぐさま俺自身に向かって来る性格のハズだ。......たぶん。

 こんな回りくどいことなんてしないだろう。......たぶん。


 ならば誰だろうかと疑問を抱きながらも昼食を中断し、急いで指定された拷問部屋に向かった。

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