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転生!貧乏貴族の下剋上物語  作者: かめねこ
第一章 タイゼック家の使用人
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第27話 台風!ノリコ君はキミだ

 裏庭に着くとラリアとクイキがいつもの倒れた大木の上に座って話していた。


「...私はソルトのパートナー。...ソルトもそう言ってくれた」

「そんなの仕事上の話しのことよ!」

「...子供相手にムキになった。...恥ずかしい人」

「.........」

「やあ、お二人さん、お待たせ」


 何を話しているかわからないけど、見つめ合って笑っている二人に近づきながら声をかける。

 声をかけるまで俺が近づいてくることに気がつかなかったようで、二人は同時にビクッと肩を跳ねさせてからこちらを見た。何故か焦っているようにも見える。気のせいか。


「俺に気づかないほど楽しい会話だったのか...。遮って悪いな」


 そう言うと二人は細く短い息を吐いた。

 ......俺が来て安心したってことは...そうか! 俺ら3人以外に聴かれるといけない内容だったからか。そりゃいきなり声をかけられたら聴かれてしまったのかと焦るわな。少しタイミングがズレている気もするが...気のせいかな。

 俺は疑問が解けたことに満足しつつ、いつも通りラリアにスキルを教えて貰う。

 まぁ、スキルはもう修得済みだから本当はいらないんだけどね。(あや)しまれないようになんとなくやっている。


「あ、そういえばクイキも協力してくれるんだっけ?」

「...ん、私が知ってるスキルは全部教える」

「ありがとう。助かる」


 クイキにも夜中に教えて貰ったスキルと、さらに[隠密]スキルと[短剣]スキルを教えて貰った。

 [短剣]スキルは俺が[剣術]スキルを持っているからいらないと言ったら


「...違う。...[剣術]は全体だから補助的なもの。...[短剣]なら1つに特化、より強い」

「そうそう。使える技も全然違うからね」


 ―だそうだ。そういうことなら、と素直に習うことにした。嬉しいことに順調にスキルが増えていってるな。

 すると俺の恩恵スキルが何処までチート性能までは知らないラリアが、「さすがに多すぎじゃない?」とわざわざ耳元に来て小さい声で聞いてきた。

 ああ、クイキが俺の恩恵スキルを知ってることを言ってなかったけ。


「大丈夫だ。それと、俺が転生者で、()()()()スキルを修得できることはクイキも知ってるから大丈夫だぞ」

「そうなの!? わ、私とソルト様だけの秘密だと思っていたのに...!」


 クイキは俺が言いたいことを理解してくれたようで、俺にだけ見えるように小さく親指を立ててきた。

 察しが良すぎて怖い。クイキが有能過ぎて、もし敵にまわっていたらと思うと怖い。

 その後少し談笑をして情報交換に移った。


「―それで?裏にいるのは誰か分かったのか?」

「ええ、裏にはメイド長がついてるらしいわよ」

「...メイド長......?」


 これには普段あまり顔に出さないクイキも驚いたような顔をした。

 そうか、メイド長か。そりゃ注意できないよな、反抗したらクビにされるかも知れないし...。


「ただメイド長はそれを指示してるわけじゃなくて、それを黙認してるらしいんだ」

「そうなんだ。それでも注意はしづらいよな。あのメイド長、俺にウキリに...そんなに人をいじめるのが好きなのか...?」


 そんな誰も返せないとわかっている疑問をなんとなく(つぶや)くと、クイキが不思議そうな顔をしていた。


「...ソルトをいじめているのってメイド長?...ヒラムさんかと思ってた」

「え...何で?」

「...この前、食堂でソルトがウキリさんを呼び出したとき、...ソルトが出て行ったドアをずっと睨んでた」


 ヒラムがドアを...?ヒラムも俺を嫌っている?

 ...なんか違う気がする。一緒に過ごしていても全然そんな感じがしなかった。

 あの時はウキリが隣に座って...じゃあまさか...! 

 でも...まだわからないか。


「ラリア、次はウキリのいじめがいつ頃から始まったかを調べてくれ」

「分かったわ。もしかして何か気づいたの?」

「クイキのおかげでね。でもまだそんな気がするぐらいだから、調査よろしく」


 そんな感じで今日の裏庭会議は終わった。


4日目-夜


 月明かりのみが頼りの真夜中。

 俺は昨日と同じようにメイド長の事務室を影から見ている。勿論昨日の夜中のメイドが誰かを知る為だ。


 今回は[暗視][遠視][世界地図(ワールドマップ)]の3つがあるので顔まではっきりとわかるだろう。

 今日とは限らないが俺は俺がこの屋敷にいる間にまた現れると確信している。

 というのもメイド長は俺を嫌っているから、それについて相談しているのではないかと踏んだのだ。さらにおつかいに向かう前、メイド長に呼び出された時...


~~~

~~~~~


「あなたにはお――」

「や、止めてください! ぼくお仕事はちゃんとやってました! そんな悪いことしてないのに追い出すなんて、酷いですよ!」

「...何言ってるの? まだ追い出しませんよ。 今日は"おつかい"に行ってください」

「へ? おつかい?」


~~~~~

~~~


 ―という会話があったのだが、ここで引っ掛かったのがメイド長の"まだ"という言葉だ。これはつまり、今週中に俺を追い出す気満々という証拠だろう。


 しかし今日はいくら待っても、誰も現れてくれなかった。1人廊下に寂しい。


◇5日目-午前の仕事


「さぁ、今日も一生懸命タイゼック家に尽くしてくださいね」


 ということで使用人生活5日目が始まった。

 今日、午前中につくのはウキリだ。

 特に問題もなく仕事を進めていっていたある時、またそれはやってきた。


「ウキリ! 僕と一緒にお茶をしよう!」

「困りますボウラ様、お仕事中でございます...」


 いつものとりまき3人を引き連れて散歩をしていたボウラが、相変わらずウキリに言い寄って困らせている。

 悲しいな、俺もお茶会に誘ってよ。

 しょうがないからこちらからボウラに挨拶をする。


「ノリコ君!こんにちは!」

「ああ!こんにちは――って、だからノリコって誰だよ!!」


 そんなの...そんなノリツッコミができる君しかいないじゃないか。

 そんな意味とは知ってる訳のないボウラだが、この名称で呼ぶ度に気持ち良いほどに爽快なノリツッコミをしてくれる。やはりノリコという名称はこのボウラこそ相応(ふさわ)しいだろう。


「まったく...。それよりウキリ、今から仕事を中断してお茶を飲もうよ」

「ですから困ります」

「いいじゃないか! 早く行こうよ!」

「ぼ、ボウラ様!」


 ボウラはそんなにウキリとお茶をしたいのか無理矢理連れていこうと腕を引っ張っている。...こう見ると年頃の男の子って感じでかわいいな。

 ウキリも立場では上の人が相手だからか強く出ることができていない。

 助けてやろうかと前に出たとき、コツンと何かがウキリから落ちてきた。...髪飾りっぽいな。


「まだそんな古くさいもの持っているのかい? 言ってくれればオレがもっといいもの買ってあげるのに」

「すいません。これは、生き別れになった姉に貰った唯一の私の家族の手がかりですので」


 ウキリは大切そうにそれを拾い上げ、しんみりと眺め始めた。

 しかし空気を読めないボウラはまた腕を引っ張り、連れていこうとする。


「そうだっけ? まぁ今はそれよりお茶会しよう! 美味しいお菓子もあるからさ!」

「で、ですからボウラ様!」

「......ボウラ様、今日はぼくたちの仕事がまだたくさんあるので遠慮してもらっていいですか?」


 ボウラは腕を引っ張るのを止めて、俺を睨んできた。


「最近は会う度会う度、僕のウキリと一緒にいて...僕らの邪魔をするなよ」

「別にウキリさんはボウラ様のじゃないですけどね」


 ボソッと呟いたこの言葉がボウラじゃなく、とりまき達の(かん)にさわったようだ。

 ボウラを軽く押し退けてズイズイと俺の前に出てきた。

 恋人をそんな風に扱って良いのだろうか。

 3人のうち、この前俺を汚い言葉で罵り、サンドバッグを見るような目で見てきた女の子が代表して前にでた。


「その反抗的な感じ、止めなさいよ」

「ごめんなさい」

「謝るなら最初からやらないことね、貧乏貴族 ――いや使用人貴族。でもちゃんと謝れたのは偉いわね」


 あ、これ、圧倒的に自分の方が上だと思っちゃってる系いじめッ子だ。

 自分の方が偉い。だから下のものには何をしても良い的な感じに思ってる子だ。

 いいものを見つけたら、大切にしつつそれでストレス発散しちゃう子だ。

 こういう子は何をしてくるかわかんないから怖い。しかもやってる方はそれが悪いことと思ってないから尚のこと質が悪い。早く離れよう。


「ウキリさん、そろそろここの掃除も終わらせましょう」

「え、ええそうですね。ボウラ様、お茶はまたの機会にぜひ...」

「結局またソルトに邪魔されるのか!?」


 俺はボウラの横に行くとポンと肩に手を置き、さも同情するかのように声をかけた。


「かわいそうだねノリコ君」

「ああ、ありがと――ってお前のせいだろうが!」


 そうしてさっさとここから逃げようと思ったら例のとりまきの子に話しかけられた。


「...あなたお昼食の時にここに来なさい。おいしいご飯をあげるわよ」


 はい強制イベント確定。

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