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転生!貧乏貴族の下剋上物語  作者: かめねこ
第一章 タイゼック家の使用人
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第25話 英雄!料理長カッコいい(笑)

 わ、忘れてた...。

 そうだ、脅しに使ったネタがクイキの『大事な秘密』ってことになってるんだった...。まさかその『大事な秘密』と俺の秘密が関係してるとは...!


「...ねぇ? ...まさか私の秘密...知らない?」

「...ははは!そんな訳ないじゃないか! 確証がないから確認するだけだよ!」

「...でも「え?」って言ってた」

「............早く教えて?」


 クイキは少し(あや)しみながらも、「一応」と何も知らない(てい)で話してくれた。ありがたい。


 まずクイキが知っている俺の秘密だが、思った通り恩恵スキルが沢山あることだった。

 知っている理由はクイキがレアスキルの[鑑定の目(ディサーニングアイ)]を持っているからだ。このスキルはその名の通り、見るだけで色々なものの情報を知ることのできる。これで俺を覗いたところ恩恵スキルが沢山あり、最初は警戒していたらしい。でも一緒に過ごしているうちにこの子は信用できる人だと確信したんだと。


「何で俺が信用できる人だと思ったの?」

「...思ったんじゃない...確信」

「いや別にどっちでもいいけど...」

「...私のもう1つのレアスキルと勘」


 どうやらクイキは珍しくレアスキルを2つ持っているらしい。

 そのレアスキルは[真偽の耳(ジャッチメントイヤー)]と言って、その人の言った言葉が嘘か本当かが判るスキルだ。

 だから俺の秘密を握っているって言葉もすぐに信じちゃったのね。まさか前日のクイキのパンツが白だっていう秘密だとは思わないからね。

 それにしても『情報が判る目』に『真実が判る耳』か...だいぶ厨二病めいてるが、それでもこの2つはとても強い。特に政治とか商談とかがあった時に大抜擢されるスキルだ。ぜひ欲しいな。


「ねぇその2つのレアスキルっていつもはどうやって使ってる?」

「...このスキル、使いたい...?」

「...そうだよ」


 すごいな、[鑑定の目(ディサーニングアイ)]でそのスキルの内容まで判るのか。

 クイキは減るものじゃないからと丁寧に教えてくれた。教えると言っても、本人にはなんとなくできるものだからぼんやりとしか教えれないらしいけど。それでもクイキは結構分かりやすく教えてくれた方だと思う。


「ありがとう。明日から試してみる」

「...それと、自分の情報を隠す方法も教える」


 クイキはそういうと[偽造]スキルと[隠蔽]スキルも教えてくれた。クイキ本当にいい子!!!


「...これでレベルの高い鑑定士に見られても[隠蔽]で隠せる。...もし見破られても[偽造]まで見破ろうとはしない」

「なるほど! 頭いい!」


 クイキを褒めるとクイキは照れたように顔を火照らせうつむき――


「...それほどでもない」


 ――モゴモゴとギリギリ聞こえる声で返事をした。かわいい。

 そこから俺とクイキは特に意味もない話をし続けたが、クイキは2~30分ぐらい経った頃に眠ってしまった。

 実はスイレンにはまだ大きいままで俺達の背もたれになってもらっていたが、クイキも寝たので狐の姿に戻ることを勧めたらまだこのままでいたいという。


「こっちが我の本来の姿だからな。それにお前も我の毛を布団にしていた方が眠れるかもしれんぞ?」

「...そうだね。じゃあもし誰か人が来たらすぐに狐の姿に変われよ?」

「わかっておる」


 俺はスイレンの言葉に甘え、温かくて優しい匂いのする狐のベッドで寝させてもらった。今日はもう寝れないと思っていたのだが、スイレンベッドがあまりにも心地良くすぐに深い眠りに落ちた。


◇4日目-朝


 次に起きたのはいつも通りの日が上る少し前ぐらいだった。3歳ぐらいから毎朝日が上る前に起きて、みんなが活動し始めるぐらいまで頭の中の本で勉強することが今では日課になっている。

 この世界がなのかここ周辺だけなのかはわからないが、俺の家もタイゼック家もほとんどの人が空が完璧に明るくなってから活動を始めるため、1日に1~2時間は勉強できている。

 今も[全世界図書館(オールライブラリー)]でこの世界の歴史について学ぼうと思っていたのだが...どうやら今日は出来ないらしい。


「スイレン」

「わかった」


 俺がクイキの膝裏と首に手をかけ、お姫様抱っこをするとと、スイレンはボンッと小さな狐になった。

 クイキはそのまま元々の布団に移し、俺も自分の布団に横になった。

 ドアの外から男以外の声が聞こえて来たので面倒事になる前にいたって普通に見えるように部屋を整えたのだ。

 男の大人がドア前に放り出てるからすぐに誰かくるだろう。


「これは何事ですか!?」


 ほら来た。声を聞くに、あまり交流のないメイドのようだ。

 勢い良くドアを開け、いきなり質問を投げ掛けて来たメイドだが、クイキも俺も布団で眠っていて反応しない。ただ俺は寝たフリだけど。


「起きなさい! これは何事ですか!」


 メイドはクイキの体を揺さぶりながらさらに大きな声で問い詰めている。しかしクイキはまだ起きなさい。

 それからもメイドは諦めることなく3回ほど揺さぶり、クイキはやっと起きた。それにあわせて俺も今起きたフリをした。


 騒ぎを聞きつけて来たのか部屋と部屋の外には沢山の人が集まっている。その中にはラリアもいて、丁度目が合った。それで俺の伝えたいことを察したのかコクンと頷いた。


「それで、何があったんですか?」


 さっきのメイドが改めてクイキに説明を求めているが、クイキにはスイレンのことも俺ことも秘密にしてくれとお願いしてあるので、なんと答えればいいか迷ってしまっているようだ。


「クイキは夜中にあった出来事のショックであまり話したがりませんよ?」

「...じゃああなたが話して下さい」


 先に2人で設定を相談した方がよかったな、と思いつつ、俺はクイキに助け船をだす。

 メイドは俺と話すのが嫌だったようで、それをおもいっきり顔に出したまま話し相手を俺に変えた。

 そんな露骨にださなくても...。少し心を痛めたが、気にしないことにして話を進める。


「実は...昨日外で捕らわれている3人にクイキが襲われて...」


 俺はそういうと後ろにいたクイキにウインクする。

 合図を受け取ったクイキは最初不思議そうな顔をしたが、すぐに意味に気づいたようで、体を小刻みにふるふると震わせ、今にも泣き出しそうな感じを(かも)し出した。どっからどう見ても、恐怖に怯えているか弱い少女になりきっている。

 実際、昨日は襲われているので、もしかしたら表に出してなかっただけで本当は今もこんなに恐がっているのかも知れない。思い出させて悪いが、もう少しクイキには役者になってもらう。


「ぼくも守ろうと頑張ったんですけど、大人の男性に敵う訳もなく...」


 俺も両方の拳を強く握り、ギッと歯ぎしりをして、自分の無力さに悔しく思う少年を演じる。


「だけど!...そこいる.........料理長さんが駆けつけてきて! クイキを助けてくれたんです!」

「......え?俺?」


 俺はその場にいた男3人にも勝てそうな人を探し、そして料理人にしては体格の良い料理長を見つけたので、人差し指で注目をそこに集めさせる。

 料理長自身には全く身に覚えのないことなので、指を指した時に意味がわからないと驚いた顔をしたが、俺は料理長の喋る間も無くたたみかける。


「あの時はありがとうございます! クイキに代わってぼくからお礼を言わせてもらいます!」

「いや、何の話しか――」

「クイキはまだ喋れませんが、クイキもあなたにとても感謝しています! あなたはクイキのヒーローです!」


 するとその様子を見ていた使用人達が「さすが料理長!」「料理長優しい!」と誉め称え始めた。おそらくクイキの渾身の演技で、本当にピンチから救ったヒーローに見えているんだろう。

 それでも料理長は戸惑っていたが、ある「料理長カッコいい!」って声に気持ち良くなったのか、自分がやったことにして、みんなに「ありがとう!」と返した。

 するとさらに歓声は高まり、料理長も調子良くなっちゃって、ついには筋肉をアピールするマッチョポーズをとり始めてしまった。

 そのせいでなのか、使用人達は興醒めしてしまいパラパラと帰り始めた。


 ちなみに料理長が調子に乗り始めた現況の「料理長カッコいい!」はラリアが言ったものだ。

 ラリアのことだから絶対に本心では無いだろうが、とても助かった。お陰で誰にも疑われずにこの場をやり過ごすことができた。

 使用人達とポージングを止めた料理長が帰って行くなか、部屋に最後まで残ったラリアは俺の方に近づいてきた。


「ありがとう。だいぶ助かった」

「そうでしょう? じゃあこのお礼期待しとくね♡」


 む?...何故か俺がラリアにお礼する事になっている。助かったことは事実なのでそう言われたらやらざるを得ない。 何が良いか聞こうと思ったがラリアはもう背を向けて部屋からでていくところだった。...女性が喜ぶことって何か後で[全世界図書館(オールライブラリー)]で調べてみよう。


 やっとこの件も片付いたと思い、ドアを閉め、後ろを振り向くとすぐそこにクイキが迫っていた。


「うぉ!? びっくりした...! クイキさっきは凄い役者っぷりだったね」

「...ありがとう。...それより、あのメイドとは仲が良い...?」

「ラリアのこと? それならまぁ、それなりに」

「...そう」


 クイキは顔には出さないが、なんか不機嫌そうだ。俺はまだクイキの感性がよく分かってないから、怒らせてしまった原因がどれだか全然わからない。起きる前までは機嫌は良さそうだったので、さっきまでで起こった出来事だとは思うけど...。

 謝りもせずこのままは悪いと思い、俺はクイキに直接聞いてみる。


「何で怒ってんの? 俺のせい?」

「...そう」

「なんかした?」

「............知らない筋肉男を勝手に私のヒーローにした」


 いつもより長い()の後、クイキは不機嫌になった理由を教えてくれた。

 なるほど、俺の独断でクイキの気持ちを語ってしまった。これは確かに本人からしたら良い気分なはずないよな。


「ごめん」

「...じゃあ私にもお詫び」

「え...」


 まさかあの優しいクイキが謝罪だけで許してくれないとは...! そんなに料理長がヒーローなのは嫌だったのか...。でもそのぐらいなら説得力を増すための必要経費と考えれば割と釣り合っている。ただ、今この場では無理だ。


「せめてクイキもまた今度で」

「...わかった。...期待してる」


 今日は昼食の時に[全世界図書館(オールライブラリー)]で何冊も入念に読むことにしよう。


   *


 今日の朝の朝礼でメイド長から男3人の刑が発表された。

 解雇は人手が足りなくなってしまうため、寝床を物置小屋にして、仕事以外は外出禁止、仕事中も誰かが常に見張っている状態にするらしい。

 俺を嫌っているメイド長にしてはクイキや俺に優しい処置だった。

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