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転生!貧乏貴族の下剋上物語  作者: かめねこ
第一章 タイゼック家の使用人
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第23話 大木!両手に花の天然ベンチ

「それで?ここで何をするんですか?」

「ん?情報交換」


 聞いてきたのはウキリだ。別に隠すことも無いのでウキリをどかす様なことはしない。聞きたく無いなら別にいいが。

 俺は左にラリア、右にウキリという両手の花状態でいつもの大木に腰を落ち着かせている。


「それでラリア、いじめっ子はどんな感じだった?」

「私が仲良くなったのはいじめ側メイドの中心的存在のヨーエイって子なんだけど...うーん、なんかバックにいるっぽいんだよね。周りに聞いてもそのバックが怖くて注意できない感じだった」

「そうか。そのバックに心当たりは?」

「今のところは全く無いかな。もう少しで言ってくれるぐらいには仲良くなれそうだけど...」


 なにその超ハイコミュニケーション能力。2、3日で秘密を明かす仲になれるって...ラリアって意外に凄い人?


「じゃあこれからもよろしく」

「わかってるって!」


 すると右が申し訳なさそうにしゅんっと小さくなった。


「申し訳ありません、私のために無茶させてしまって」

「大丈夫だって、ちゃんとソルト様が解決してくれるから」


 2人は俺を挟んで会話を始めた。仲がいいのは嬉しいけど俺の頭の上で話し会うのは止めて欲しい。

 少し寂しくなった俺は膝にいる狐の背中を撫でてモフモフして気を紛らわせた。


「それでもスパイみたいな危険なことをさせてしまっているので...」

「全然心配いらないよ! いざという時は必ずソルト様が助けてくれるから! ね?ソルト様~!」

「.........。ねぇ、この狐には名前がないんだけど何かいい案ない?」

「え、今何で目と話しをそらしたの? え、無理なの? ソルト様でもできないの!? ねぇ! ねぇえ!」


 ラリアは俺の体をおもいっきり揺さぶる。あばばばば......の~う~が~シェ~イ~ク~さ~れ~るぅぅぅぅ。

 やっと止めてくれたときには既に地面が何処だか判別できなくなっていた。隣からの心配する声が聞こえ始めると、目眩も落ち着いて来た。いやー、ここまで目が回ったのは初めてだわ。

 

「...でも、あまり俺を信用し過ぎ無いで欲しい。出来ないことはないが、面倒だからやりたくないんだよ」

「ひどいな...」


 あら?心の中で呟いたはずが言葉に出てたらしい。2人はだいぶ驚いたようで、座っていた大木から立ち上がり、俺から少し距離をとる。

 でもラリアとウキリはもっと他のことに驚いているようだ。もしかして今俺に突っ込んだのってもしかしてこの狐?


「「キツネさんがしゃべった(話しました)!!?」」

「ぁー...そうそうこいつ妖狐だから喋るぞ」


 この2人になら教えても問題は無いと判断し、敵意が無いことを示すために狐の両手(まえあし)を持って、プラーンと2人の前につき出す。


「この格好、恥ずかしいのだが...//」

「妖狐!?あの森の主じゃないですか!?」

「ヌシ?」

「あの森を支配してる魔物よ! それをテイムしちゃうなんて...! ソルト様凄すぎて凄いから凄い!!」

「へ、へぇ...。それより、この狐の名前を考えて欲しいんだってば」


 なんかラリアの語彙力が心配だが、今はさっさと名前の案を考えて欲しい。


「というか、そのキツネさんは元々森の主だったのですから名前があるんじゃ無いですか?」

「...そうなの?」

「そうだ。だが...恥ずかしいからとりあえずこの格好を止めてくれ」


 この狐、最初に比べておとなしくなった気がするな。まだ会って1日も経って無いのにモフモフされても怒らないし。ほら今だって俺の膝の上で俺に撫でられてる。


「我の名前は睡蓮(すいれん)という。別に名前に意味は無いが、我は結構この名前を気に入っているからできればこのままにして欲しい」

「スイレンだな。わかったじゃあ今度からはお前のことをスイレンと呼ぶよ」

「感謝する」


 ...ちょっと落ち着き過ぎている。そんなに一緒にいる訳じゃないが、寝る前と後で人が違う様に...いや、狐が違う様に角がとれて、今はむしろ触って気持ちいいツルツルの石みたいになっている。実際は触って気持ちいいモフモフの狐だけど...。

 あれ?俺、自分が何を言ってるかよくわからない...。

 つまり何が言いたいんだ俺は...そうか、スイレンの様子がおかしいって言いたいんだ。


「...スイレン、なんかあったのか?」

「? 何がだ?」


 俺は早速単刀直入に気になっていることを聞いてみた。


「なんかだいぶおとなしくなったから...」

「...それは...お前には関係無い」

「...そうか」


 「そんなこと言うなよ!」なんてめんどくさい事言わない。その人が自分の問題と言ったならわざわざ首を突っ込む必要は無い。もしどうしても困ってしまって1人では何も出来ないという時があったのなら、その時はスイレンの主人として ―見られているかわからないけど― 助けてやろうじゃないか。

 そういう理由でスイレンとの会話を打ち切り、朝からずっと気になっていた事をラリアに聞く。


「ラリア、お前は何でメイド長を名前で読んでるんだ?」


 いつもなら「何でかな~」ぐらいにしか感じ無いのにこのことは何故か心に引っ掛かったのだ。俺の勘がこの情報は知らないと損をすると言っている。


「? 別に大した理由じゃないわよ?」

「いいから、教えくれ」


 ラリアは不思議そうにしながらも、何も言わず何故メイド長を名前で呼んでいるのかを教えてくれた。それにはラリアがこのタイゼック家に来た理由が関係していた。


 元々ラリアは伯爵貴族に仕えていたメイド長の子供だった。しっかりと仕事ができる様になるまでここで仕事というものを学べと送られたのが、このタイゼック家。しかしタイゼック家の貴族階級は子爵。

 ラリアは親がメイド長だった事から、他と比べて優遇されて育ってきたので他者を少し下に見る性格があったこともあり、爵位の高いところで育ったラリアは最初にメイド長を名前で呼んだ。それ以来、上下なんて無いと知った今でも変えずに名前で呼んでいるらしい。


 さっきから伯爵とか男爵とか言っているがこれは貴族を階級で分ける時に使う<肩書き>みたいなものだ。これらの事を爵位と言うが、爵位は権力が高い方から [国王→公爵→侯爵→伯爵→子爵→男爵→準男爵→士爵] と分けられる。

 士爵と言うのは戦争などで活躍した兵隊やならず者がもらう爵位で、階級というより称号のようなものと認識して良い。それ以外はちゃんとした昔からの貴族に渡される階級だ。

 また、士爵が階級を上がる事はほぼ無いが、それ以外は戦争で騎士として活躍したり、立派な功績をたてると階級が上がる事もある。


 俺の家族の爵位は準男爵、タイゼック家はさっきも言った通り子爵。階級が1つ違うだけで待遇はだいぶ変わってくる。

 俺の家族は少し特殊だが、それでも爵位が1つでも相手より低いときはへりくだらないと潰されるぐらい権力が違うのだ。


 自分の主人より爵位が上のメイドが来たなら、適切な対応をしないと自分の仕えている家がどうなるかわかったもんじゃない。だからメイド長も名前呼びを許したのだろう。


「だから私かヒラムのどっちかは20歳になったらタイゼック家を出ていくのよ?」

「ん?今なんて?」

「だから20歳になったらここを出ていくかも――」

「違う、その前」

「前?私かヒラムが――」

「そこ!何でヒラムが出てくるんだ!?」

「ど、そうしたのソルト様...。ヒラムが出てくるのは、ヒラムも私と同じ伯爵貴族様のメイドだったからで...」


 ヒラム...。あのヒラムもこの事に関係してそうな気がする。

 つい身を乗り出してしまったけど、俺の第六感がビンビンに感じ取った大事な言葉は聞き逃す訳にはいかなかったので許して欲しい。


「怖がらせて悪かったな」

「全然大丈夫よ。むしろソルト様の鼻息があたってご褒美...!」


 ラリアはそういうと両頬を押さえてにやけ始めた。

 このソルト様問題はここを出る前に解決しないとな。このままだと最悪の場合、ラリアに恋人や旦那さんが出来ないままになるかも知れない。...自信過剰だろうか。そうだとしてもこの問題は解決せず、はっきりしないで終わるのは男としてあり得ない。どういう方法でもラリアに幸せになってもらうためにここを出る前に俺を諦めてもらわないと...。


「あのー...私からも聞きたい事があるのですけど良いですか?」

「え?...あっ、ウキリ...居たんだった」

「酷い!!!」


 いやだってすっかり影になってたじゃん。

 ウキリは美人だけど凄いオーラは纏って無い。ウキリはどっちかと言うと道に咲く一輪の可憐な花って感じで、自分からオーラを出さなくても人が惹かれる魅力を静かに出す。だから黙って目に入らないところにいるとたまに忘れそうになってしまうのだ。実際忘れてたけど...。


「それで?聞きたい事って?」

「あ、おつかいって普通無理難題を出される筈なんです。実際今回のお題も私はクリア出来ないと思ってたのですけれど...どうやって卵を手に入れたののですか?」

「ああ、何だそんな事か。簡単な話しだよ。お使いに走っていたらたまたま俺の家の使用人が馬に乗って家に帰るところに会ったから、家まで乗せてもらって家で卵とお金を交換し、またここまで送ってもらったんだ。今考えても本当に奇跡としか言いようがないな」

「なるほど、そういうトリックだったんですね」


 まさか[剣術]スキルの技を使った、なんて言えないので俺はここに戻っている時に考えた嘘でカバーする。もし家に確認に行かれても、俺の家族の事だから察してくれるだろう。


 その後、ラリアにスキルの練習を見てもらい、今日の裏庭会議は解散となった。

 ウキリは自分の仕事に向かい、俺もクイキを探しに行こうとしたらラリアに呼び止められた。


「本当は奇跡なんて起きてないでしょ? 何があったか教えてくれない?」

「あ、分かった? でも面白い事なんて何も無かったぞ?」

「いいの、私が聞きたいだけだから...」


 ラリアに何があったか隠す事なく話した。


「さすがソルト様ね! やっぱりカッコいい! 多分その助けられた女の子もときめいちゃったと思うな」

「はいはいありがとう。そうだと嬉しいね」

「...本気?」

「へ?」


 ラリアの誉め言葉に適当に返事したらラリアの雰囲気が変わった。


「本気でそのデリアって子に惚れられて嬉しいの?」


 まさかラリアは浮気―いや、付き合ってないけど―をしていないかを確かめるために何があったかを聞いてきたのか!?

 ラリアの背後からゴゴゴゴゴ...と地響きのような音が聞こえる...気がする。

 それから誤解を解くのに苦労したのは言うまでもない。...それとも諦めさせるために解かないままの方がよかったのだろうか。

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