第16話 裏庭!ここばっかだな...
祝!ブックマーク件数 50件 突破!!
嬉しいことにこの作品のブックマーク件数が50件をこえることができました!
これもひとえに皆さまの応援のおかげだと思います!
まだたった50、されどこの夏に"なろう"を始めた作者にとってはとても価値の高い50です。これからも良い作品になるように努力してブックマークが100件、200件と増えていけたらな、と思います。
作者も精一杯頑張りますのでこれからもこの作品をお楽しみください。
では第16話のスタートです。
「やっぱりか...」
俺らはウキリからいじめに関することを話してもらった。
「大変だったね。もう大丈夫よ、ソルト様が助けてくれるから」
「フフッ そんな小さな体で何が出来るんです?」
相談しに来たのにそんなことを聞くとは、よほど助けてくれる人がいなかったのだろう。
そりゃ少し不安だよな。唯一頼れる存在がこんな小さい子供なんだから。
「ソルト様はこう見えて強いのよ。トゥアベアだって威圧だけで倒したんだから」
「「は?」」
何でそんな嘘を!? ほら余計に信用できなくしてるぞ!
「...その、無理はしなくていいですよ? 私ももうこの生活に慣れて来ました。正直あんまり期待していなかったので、断られても傷付きませんから」
「ほら、変な気を使わせてるじゃないか」
「...ごめんなさい。こうした方がソルト様の強さが伝わると思って」
まったく。さすがに俺でもそんなことは.........やろうと思えば出来るな。少し違う形になるけど。
「安心しろ。俺は断る気もないし、ウキリのことを見捨てる気もない。解決して見せるよ」
「...そう。ありがとう。やめる時は声をかけてください」
...まだ信用してない。
まぁいいか。どうせすぐに終わることだしな。
「ウキリ、この喋り方と俺に相談したことは誰にも言うなよ」
「何故です? 別にその喋り方でもいいじゃないですか」
「人に与える第一印象が変わってくる。極力人にはいいように見られたい。これ以上ヨーベクマの評判をさげたくないからな」
俺が外で悪い態度だと家の評価が下がる。すでにギリギリなんだからこれ以上は下げたくない。
別に俺の評判は少しイラつくだけでそんな気にしない。ただ、家のことになると兄弟の将来に関わるので、それだけは回避したい。
「わかりました。あなたも色々大変ですね」
「本当だよまったく、ここの旦那様のせいで...」
「「え?」」
「あ...」
ここの使用人は本当のことを知らないんだった。
話しても大丈夫だよね。だってもうすでに2人が理由を聞いてくるし。きっと大丈夫!......大丈夫?
俺はここと家に何があったかを父さんの話した通りに伝えた。
「ソルト様はそんな理由で貧乏になっちゃったのね...。大変...だったね...!」
「うん、なったのは俺じゃなくて父さんだけどな。同情してくれてありがとう」
「私には同情くらいしかできないけど...何もできないのが悔しい!」
「...ええ。まさか旦那様がそんなことしてたなんて...!」
2人とも俺の言ったことを疑うことなく聞いてくれた。
これでもそっちの旦那様が敵に見てるんだからもう少し疑った方がいいんじゃない?って思うほどに。
本当に優しい人たちだ。
◇1日目ー夜の仕事
ラリアにはこれからも情報収集よろしく、といって別れて今はクイキとウキリと俺の3人で裏庭にいる。
また裏庭かよ...。ここばっかだな。もうここは俺の庭で良くない?
でも今度の理由は厄介事ではなく普通に使用人の服の洗濯をするためだ。
俺は[洗濯]スキルを使って1枚1枚洗っていく。
「あ! これって女の子のパンt」シュバッ
バシャバシャ...
クイキに無言でとられた。
「もしかしてそれってクイキのパンt」ベシャッ
俺の顔に濡れた布が飛んで来た。これってまさか...
「うげー。男のパンツじゃん。顔に投げないでよ気持ち悪い」
「あなたも男でしょう」
「...私のじゃないから私のじゃないから」
別に恥ずかしいことはないのに。純白に小さい桃色のリボンがついてる普通のものなんて...。
それにクイキは恥ずかしがる歳じゃないでしょう。俺と同い年なんだから。
?あれ?
「クイキって何歳?」
「7」
「え!?ぼくより年上!?」
全然見えない。これからは敬語の方がいいのかな? ...今まで通りでいいか。
「...じゃあウキリさんは?」
「何歳に見えますか?」
こういう時って少し若く言った方がいいんだっけ?
えーと、見た目は...17歳に見える。それよりも若くだから
「14歳?」
少し若過ぎたか? さすがに成人になったばかりじゃないか。
この世界の成人は14歳、でも結婚できるのは16歳だ。つまりこの世界の14はもう大人という認識でいいが、少し若過ぎたかも知れない。
「...正解です......」
「え、正解?」
「よくわかりましたね。みんな17とかに見えるって言うのに...」
「はは...。ウキリさん大人びいてますもんね」
実際俺もそう思ったからな。顔は美しいより可愛いって感じだけど、雰囲気が大分大人っぽいし、体も結構発達してるからてっきり17歳だと勘違いした。
そんな感じで洗濯を7割ほど終わらせた時、俺が地雷を踏んだ。
「ねぇ、クイキってどういうスキル持ってるの?」
「...秘密」
「何でよ。少しぐらいいいじゃん」
「...じゃあソルトの教えて?」
今日1日共に過ごしたからか、クイキは俺のことをソルトと呼んでくれるようになった。
少し距離が縮まったかも知れないな、と俺は嬉しい気持ちだ。...いや、だったのだが
「俺?俺は[剣術][清掃][洗濯][調理]、それとレアスキルの「魔物支配」を持ってる。そんだけだけど」
「え! あなたレアスキル持っていたんですか!?」
俺は指を折りながら数えるようにして、ボロを出さないように注意する。
ウキリが驚いていたが、やはりレアスキルっていうのは相当レアなんだろう。
「...やっぱりウソつき。でもそれと同じ、私も言わない」
「.........」
「え? クイキさんそれってどういうことですか?」
まさかクイキは俺のスキルのことを知っているのだろうか。どこまでつかんでいるか知らないけど要警戒だな。
そんな気まずい雰囲気のまま少し早足で洗濯を終らせた。
◇1日目ー夜
「今日は凄い濃い1日だったな」
俺はトイレのために起き、今は帰るために夜のくらい廊下を歩いていた。
これでもまだ1日。否、もう1日たったのだ。これからあと6日。
やることはまだたくさんある。全てをこなしてからここをでていけるように努力しよう。
それよりも、雑魚寝部屋は1つしかないから女の子のクイキと同じ部屋ってのはいいのだろうか。
俺は幼いから別にいい。男共もまさか7歳の幼女を狙わないだろう。
問題はクイキの気持ちだ。さすがにたくさんの男と一緒に寝るって女の子にとっては地獄じゃないのか? 一応仕切りはあるものの、覗こうと思えば覗けるし、入ろうと思えば入れる簡単なものだ。こんな状況でぐっすりなんて寝れないだろうに...。
そんなことを考えながら部屋のドアをあける。
今男共がビクッって強ばった気がしたが、気のせいか?
俺は少し警戒しながらも眠りについた。
こうして、タイゼック家下働きの初日は色々な問題を抱えたまま終わった。
*
真夜中のある部屋。蝋燭の光で2つの影が揺れている。
少しふくよかな方は歯ぎしりをしてから口を開いた。
「...あのくそ貴族のガキ...新人狩りを回避したようね...」
もう片方の影は壁にもたれかかり腕を組んで答えた。
「まぁ、お願いしてやらせた訳じゃないから可能性は最初から低かったわね。でも、まさかトゥアベアがでて、そのメイドにあいつがなつくとは思わなかった」
「そんなことどうでもいい! さっさとあの貧乏貴族を追い払う策を考えて!」
「...そうね。じゃあ、おつかいさせてみれば?」
「ああ、あれをするのね。そうねそれならもしかしたらあのガキが死んでくれるかも......。そうすると、貧乏家族が悲しむから旦那様も喜んでくれるわね! よし、さっそく明日仕掛けよう」
ふくよかな影は口の端を吊り上げると蝋燭の火を消して、もう片方の影と一緒に部屋を出る。
部屋には少し濁った煙の匂いが残っただけだった。




