第15話 談話!裏庭の相談会
俺とラリアは裏庭の倒れた木に腰かけて見つめあっていた。
「大事な話がある」
「だ、大事な話!? わ、私たち...というかソルト様には結婚はまだ早いと思けど、ソルト様がそういうなら...!」
「何を勘違いしているんだ。この歳でそんな話をする訳ないしまだできる歳じゃない。第一、今から何をするか知っていたろ」
「い、いやソルト様をからかおうと思ってね!!! アハハハハ...」
少しごまかすようにラリアは笑う。
こいつ、少し期待したな...。
「大事な話だが、さっきのトゥアベアの時のことだ」
「あ、秘密教えてくれるんでしょ?」
「ああ、その前に今から話すことは絶対に誰にもいうなよ」
「うん、わかってる」
「実は俺...別の世界からの転生者なんだ。その時神様にスキルの成長が早くなるスキルをもらったんだ」
「そうなのね! だからあの剣術技を使えたのね」
「驚かないのか?」
「うんまぁ。生まれた時からそういう恩恵スキルを持っている人は世界に何人かいるから。しかも私たち人間は召喚して勇者を呼ぶんだよ。勇者はそういう人と違って3つほど恩恵スキルを持っているの。確かこの前、王がまた勇者を召喚したって噂を聞いたかな」
全部知ってる。頭の中で読んだからね。
昔、成長速度をあげるスキルを持った人がいたことも知ってるだから少しぐらい言っても大丈夫だと思った。さすがに[技術成長速度増加・最]じゃなくてもっと弱いやつだったけど。
...いや全部は嘘だったな。最近に勇者が召喚されたなんて知らなかった。どんなやつかな。同じ日本からの転生者だといいな。
「そうなんだな。あ、それと辻褄があうようにしておこう」
とりあえずこの前ヒラムに言ったような設定にした。
「...でも、良いの? せっかくソルト様が倒したのに」
「良いんだよ。面倒事はやだからな」
「そう。じゃあ、スキルもその喋り方も二人だけの秘密ね!!」
「...そうかもな」
「じゃあ、盛り上がってきたところで、スキルの練習といきますか!」
「あ、そうだ。俺は恩恵スキルで修得も早いから、1週間毎日じゃなくても大丈夫だ。今日に修得するために何をすればいいか教えてくれればあとは自分でやる」
「え...。今日...だけ...?」
「ああ」
俺はそこまで鈍感じゃない。
ラリアが俺に好意を抱いているのは単純に嬉しいが、俺はまだ5歳だ。さすがにそういうのはやめるべきだろう。
これが勘違いだったらマジで恥ずかしいな。自信過剰のイタイやつになっちゃう。
「......そうよね。...じゃあまず[拳闘]スキルから始めましょう...」
明らかにラリアのテンションが下がってる。
こういう時って何をすればいいかわからないな。
こんな雰囲気のまま俺は3つのスキルを教えてもらった。
スキルを覚えるにはそれぞれスキルで決まった行動を1年間(俺は1日)練習しないといけない。その決まった行動が[全世界図書館]で検索しても発見されず、スキルを手に入れるためにはそのスキルを持っている人から教えてもらうしか方法がない。
さらに、レアスキルとなると教える側が覚える方法を知っているわけもなく、自分で研究するしかないので意外に大変。
「...はい。大事なことは全部教えた。あとはこれを続けるだけ」
「おう。わかった。ありがとう」
「.........」
「.........」
「.........」
気まずい。なんか話を...!
「そ、そうだ、聞きたいことがあるんだけど」
「...なに?」
「ウキリって知ってるか」
「...二大美女の1人でしょ?」
「ああ、それでウキリがいじめられてることは知ってるか?」
「...一応」
なるほどな、だいたいの人が知ってるけど、関わりたくないって感じか。
...知ったからには解決してあげないと出ていくとき、心残りができちゃうからな。
「1つ頼み事があるんだけどいいか」
「...内容によるわ」
「そのウキリをいじめてるやつと仲良くなって、そいつの情報を色々教えて欲しい。出来るか?」
「...できないことはないけど」
できないことはないけど、あまりやりたくないって顔だな。
でも任せられるのはラリアしかいないからやってもらおう。
「本当か! じゃあこれから毎日今日と同じ時間にここで集合な、誰にもバレないようにこい」
「毎日!? わかった! しっかりと情報をつかんで来てあげるね!」
ラリアは分かりやすく嬉しがる。これで...いいんだろうか。
「あ、自分が危ないと思ったら無理はしなくていいから」
「そうと決まれば早速仲良くなりに行ってくる!! また明日会おうね!」
俺の「気をつけてな~」は聞こえていないかな。
◇1日目ー夕飯
今はラリアと別れて意外に外が暗くなっていたので、食堂に夕飯を食べにきている。
「相席いい?」
「! なんだウキリさんですか。いいですよ」
...なぜ横に座った!?
ウキリは前にも席があるのにわざわざ横に座ってきた。しかもなんか近い!
使用人にはお風呂がないし石鹸もないはずなのに隣からは心地いい花の香りがフワーッと漂ってくる。
「ねぇ、お菓子あるけどいります?」
「いえ、大丈夫です」
「やっぱりあなたは歳のわりに大人びいてますね」
こんな子どもどこにでもいると思うけど。
ウキリは少し迷ったような顔をしたあと、その顔を俺のすぐ横に近づけてきた。
さすがに、超美人がこんな距離にくると緊張する。彼女の吐息が耳にかかる。
「...その...あなた私を助けてくれるって言いましたよね? それで...」
「...ぼくはもう食べ終わりました。それと他のみんなの視線が痛いので裏庭に逃げます」
まだ少し残っていたが、たち上がりご飯を持って食堂をでた。
美人に相席されていた少年がすぐに立ち去ったことにざわざわしている食堂のなか。
ソルトが出て行った扉をにらみ続けるメイドがいた。
それに気づいた少女が1人だけいたのだった。
*
「お、来たな」
「待ちましたか?」
「"いや全然"」
「ソルト様!? 私には言わなかった言葉を!? やっぱり美人だからなの? ねぇ!結局ソルト様も美人好きなのね!!」
「いやお前に教えてもらったからだろ」
「そうかも知れないけどぉ...!」
第一美人を嫌いな男はいない。
「あの、その方は? それにその喋り方...」
「あー、こいつはラリア。俺らの味方だから大丈夫。 喋り方はこっちが俺の地だから」
「あぁあ、せっかくソルト様と私だけの秘密だったのに...! あ、ラリアです。よろしく」
「...彼女ですか?」
「え!? か、彼女なんて...そんなんじゃー」
「全然違う」
「......もっと動揺したりしてくれてもいいのに」
ラリアはズーンと周りの空気を巻き込んで落ち込む。
俺はそれを無視して会話を進めようとしたが、空気が重かったからラリアの頭を撫でて空気とラリアの機嫌を戻す。
「やっぱり彼女ですか?」
「全然違うって、俺まだ5歳だし」
「でも、なんかあなたって大人っぽいし...」
「そうだとしても、さすがにまだ若すぎでしょ」
「そうでもないですよ。ボウラ様はすでに3人恋人がいます」
ボウラ? ああノリコ君ね、いそうだけど...え?
「...まさかそれって、あの取り巻きたち?」
「ええ。近所の貴族様の娘様たちなのですが、まだ婚約ではないものの恋人という認識になっています」
「なんだ、権力狙いか」
「そうだと思います」
どうせ仲良くなっときなさいって親に言われたのだろう。
ちなみに、この世界は一夫多妻だ。
「ソルト様!じゃあ私も恋人に―」
「ダメだ。さすがに歳が離れすぎてる。それに俺はお遊びの恋人は嫌だ。もし作るならちゃんと愛し合えるようになってから付き合いたい」
「あなた本当に5歳ですか? 何で知ってるんです? まず何で5歳からその発想がでるんです?」
これ以上勘ぐられるのは面倒だな。
「大人のソルト様とお遊びじゃないお付き合い...」とか言って息を荒くしてるやつはほっといて。
「...さて、そろそろ本題に入ろうか」
いつも読んでいただきありがとうございます。
*お知らせ*
ラリアの設定が不安定だったので修正しました。
これからもこの作品をお楽しみください。




