第14話 再会!君の名前はボウラ
俺は廊下でラリアとわかれ、食堂についた。
ガチャ...
スープ冷めちゃったかなぁ? と思いながらさっきまで座っていた椅子に向かった。
...なんか注目されてる気がする。
「...ソルト? あ!ソルト! 大丈夫だった? 怪我は?」
ここは、とぼけた方がいいな...。
「何で知ってるんです? ぼくがトゥアベアに襲われたこと」
「トゥアベア? さっきの大きな咆哮はソルトたちのところからだったの!?」
「はい。ラリアさんに初めての仕事でつらくないか?って相談にのってもらってたら、急にトゥアベアが現れたんです。怖かったですけど怪我する前にラリアさんが追っ払ってくれて...」
「相談? それに守ってもらった?」
「はい。あのときのラリアさんカッコよかったです」
「.........そう。それならいいんだけ...ど。怪我とかはないのね、よかったわ」
おそらくラリアたちは新人潰しの常習犯だったのだろう。ヒラムは不思議そうな顔をしているけど、たぶん騙せた。
クイキの方は...?
.........なんかじっと見つめてくるんだけど。
その見透かしたような目を見返していると、クイキがちょいちょいと手を2回縦に振った。
こっちにこいってことだよな。
「なに? クイキ」
指示通り近づく。するといきなり耳を引っ張ってきた。
「いててて! 何すんの!?」
「...ウソつき」ボソッ
「.........」
これは2人になったらしっかりお話ししないとな。
「...いつの間にそんな仲になったの?」
「やだなぁ、そんなものじゃないですよ」
「ふーん、どうだか。あ、そうそう午後からは私じゃなくてウキリがつくから」
ウキリか。少し気まずいから心配だな。
◇1日目ー午後
「お願いしますウキリさん」
「...お願いします」
「はい。お願いします。午後は何をするんですか?」
お、思ったより自然に接してくれるな。
「中庭の掃除をしたら、後は夜の使用人の服の洗濯まで何もないです」
「そうですか。では早く終わらせて自由時間を増やしましょう」
中庭についた。
また[掃除]スキルで掃除していく。クイキは[掃除]スキルを持ってないので普通の道具で掃除しているが、器用なもので、俺のところと同じぐらいきれいになってる。
掃除を始めて少したったときだった
「おーい!! ウキリじゃないか!」
なんか子供が走ってくる。
...待てよ、そのまままっすぐくると俺が落ち葉を集めたところに...!?
バッサーッ
「うぉーい!! せっかくぼくがきれいにしたとこ通るなよ!!」
「は!? 使用人が何で僕にはむかって...あれ、お前...!? ヨーベクマ家の息子じゃないか!?何でここにいるんだよ!」
「どうしたの?」と、いつかの取り巻きたちがよってきた。相変わらずすごい5歳児だな。まぁ、俺が言えたことじゃないけど。
「よう!ノリコ君。その前にぼくに謝らないとダメだろ? ほら、ごめんなさいだよ」
「あ、あぁ。ごめんなさい...って違ーう!! 誰だよノリコ君って! 僕は何でここにいるのか聞いてんだよ!」
さすがノリコ君。相変わらずすごいノリツッコミだな。
「何でって、ぼくは1週間ここの下働きに就いたからだけど」
「は? 下働き? あなた本当に平民になったのね! やっと貧乏貴族がいなくなった。よかった~!」
なんか取り巻きの子が答えてきた。あ、この子汚い言葉使った子だ。
「いやまだ貴族ですが」
「はぁ? 何で貴族が働いてるの? あ、あなたのうちは貧乏だったわね。ごめんなさい。私貧乏貴族になったことなくて、あなたたちのしたいことがわからないわ。わかりたくもないけど」
さすがに俺でも少しイラつくぞ。
「そうですか。まぁどうでもいいですけど」
「.........」
その取り巻きの子の目がサンドバッグを見つけたボクサー見たいになってる。どう伝えたらいいかわからないけど、それがぴったりな気がする。簡単に言うといじめ相手を見つけたいじめっ子見たいな。いや、それよりひどいと思う。たぶん俺のことストレス発散の物として見てる。
「ボウラ様、何用でしょう」
「もう、わかってるでしょ? 用なんてないよ、君にあいにきたのさ」
「ボウラ様そういうのはよしてください、困ります」
「わかってるよ、まったくウキリは照れ屋だなぁ」
わかってないじゃん。ウキリは本気で困ってそうだけど...。
...あーね。なるほどよくわかったよ。ウキリがお気に入りなんだね。
取り巻きもすぐ側にいるのに。周りはしょうがないって顔している。いつものことなのか...。
そうなると.........やっぱりいた。すっごい睨んでるメイドが。
これでウキリが下働きの部屋で着替えていた理由がわかった。
よく思い出すと体にいくつかアザがあったような。
ノリコ君、いやボウラ様はわかってるのか? たぶんわかってないな。まったく...。
「ウキリさん、そろそろ終わらせて自由時間にしましょう」
「え? ええそうですね。ボウラ様掃除の途中ですのでまたの機会に...」
「チッ 今は使用人のくせにヨーベクマ家の息子め!」
「ボウラ様、ぼくはソルトでございます」
「え?.........わかった覚えておこう」
ボウラは屋敷の中に戻っていった。
「じゃあね、ソルト フフッ!」
取り巻きの子たちもついていった。
「...大丈夫だった?」
「え?ええ大丈夫よ」
「大変だね、ボウラ様のお気に入りは」
「!? あなた知ってるの?」
「いや全然」
「は? じゃあなんで...?」
「見てればわかりますよ。困ったことがあったら言ってください。微力ながらお手伝いしますよ」
「.........フフッ じゃあそのときはお願いします」
あ、冗談だと思ってるな。まあいいや、本当に困ってそうだったら助けよう。
◇1日目ーお昼休み
掃除が終わってウキリとクイキとはわかれた。
それで今はラリアのところにスキルを習いに向かってるところだ。
「えーと、ラリアの部屋は...ここだな」
ラリアの部屋のドアを2回ノックする。
「はいはい。あれあんた...」
出てきたのはラリアじゃなくて知らないメイドだった。
「あの、ラリアさんに用があってきたんですけどいらっしゃいますか?」
「さあね」
「え、部屋はここであってます?」
「ええ、部屋はあってるわよ。でもね、なんであんたなんかにラリアがいるか教えないといけないの?」
「それは用があるから...」
「どんな用か知らないけど、あんたなんかにラリアを会わせるつもりはないわ。さっさと帰ってちょうだい貧乏きぞ―」
「あ!ソルト様!」
廊下の来た道の方からラリアの声が聞こえた。
ドアにいたメイドは舌打ちを打ってから
「ちょっとラリア、この貧乏貴族のお坊っちゃんがあんたに用があるんだって。なんか言ってやんなよ」
「?待った?ソルト様」
「いやそんなに」
「そこは全然って言ってよ。もうソルト様は乙女心がわかってないな!」
そう言うとラリアは、俺に後ろから抱きついてきた。
...あれが頭に当たってるんだが。なんか姉さんを思い出すな。
「はぁ!?」
知らないメイドは廊下中に響く声で驚いた。 真ん前にいた俺の耳がキーンってするほどに。
「何やってんのラリア! え?ソルト様!? なんで仲良さそうにしているの!?」
「なんでって...ソルト様とは仲が良いからよ。さ、いこう! ソルト様、裏庭でいい? 私(教えるの)初めてだからちゃんとできるか心配だなぁ」
「うん。...うん?」
後ろを見ると知らないメイドは口を開けて呆けてた。まさか、今の言葉と手を繋いでるからって恋人とかと勘違いしてないだろうな...。
いや待てよ...この状況で裏庭は誤解を受けるかも...。......それはないか。俺5歳児だし。
次の日、5歳児なのにメイドとそういうことをしたという噂がたち、その誤解をとくためにいろいろあったのはまた別の話...。
*
俺とラリアは裏庭についた。
俺はラリアを真剣な眼差しで見つめる。
「大事な話がある」
「だ、大事な話!?」
ラリアの顔はリンゴみたいに真っ赤になった。




