第13話 裏庭!お昼時に起こった出来事
俺は今、3人のメイドにつれられて人気のない裏庭に来ていた。
これは期待していいの!? でも俺まだ5歳だからそういうのは...
「ねぇあなた、調子にのらないでくれない?」
デスヨネー。うん知ってた。というか期待してた通りになったら逆におかしいよ。だから全然実は!?もしかしたら!?なんて思ってないよ。いや、ホントに。
でもこの壁ドンはご褒美だ。
「ねぇ、聞いてる?」
「あ、えっと...。ぼくがこうされる心当たりがないです?」
「何であなたが疑問形なの?」
いやだってこんなベタな展開初めてで、どう言えばいいか知らないし...。
「まぁいいわ。あなたのヨーベクマ家は悪い評判しか聞かないじゃない。しかもその年の貴族が使用人の仕事ってなめてんの? 平民以下のクズが平民の私たちへの当てつけ? 仕事さっさとやめてちょうだい」
「いやですよ。何であなたにやめさせられないといけないんですか。こっちだって理由があって仕事してるんです。邪魔しないでください」
「は? 私に口出すの? 平民以下のくせに?」
メイドは俺の髪を持って上にあげる。
それを他のメイドが「いっそのこと死ね」と笑って見ている。
「いっ!?」
「うざいのよ。なめないでこれでも[拳闘]スキルのレベルは5まであがってるのよ。あなたを動けなくするのは簡単なのよ。だからー」
「!? ........しろ」
「はぁ? 何?」
「後ろに...」
「後ろ?」
メイドは振り返る。そのメイドの目にはでっかい熊が写っていた。
よほどびっくりしたのかメイドはソルトの髪をさらに強く握る。
「いったた!? いたいいたいいたいいたい、やめてやめて! この年からハゲなんてやだ!!」
俺はひたすらいたいと言っているがメイドは聞いていないようだ。
「なに、なんでここにトゥアベアが....!? しかもこの毛の色、まさか亜種!?」
「そうだね! いいからこっちの毛を気にして! ハゲる!!マジハゲる!!」
メイドはまだ聞いていない。
するとトゥアベアが腕を降り下ろしてきた。
「きゃぁ!」
メイドはとっさによける紙一重でよけるものの胸元の服が破れてしまう。
それと同時に...
ブチブチッ!
「ぎゃー!! 俺の髪がぁぁぁぁ...!」
あまりの痛さと出来事の衝撃に言葉が地に戻る。
「あなた、その口調...」
「そんなことより、ハゲてない!? ねぇ、ハゲちゃってない!?」
「え、ええ。ハゲてはないけど...」
「そっかー。よかったよ~。怖かった~」
「怖かったって...はっ! トゥアベアは!?」
自分が仲間外れにされて相当キレてるらしい。
耳が痛くなるぐらい大きな咆哮をあげた。
「「「ヒッ!!」」」
「ラリア、あなた[拳闘]レベル5持ちでしょ!? なんとかして!!」
「そうよ、わたしまだ死にたくないわ!!」
「そんなこといったって...」
「いいから行って!!」
「きゃ!!」
ラリアと呼ばれたメイドは他のメイドに押されて前に出る。
「何すんの!? あぁもう!こうなればやけ! なんとかなるよね...! スキル[拳闘]!」
ラリアの拳に淡い光が纏う。
トゥアベアがラリアに向かって横殴りをしようとする。
それを意外にも素早くかがんでかわし、トゥアベアのふところに潜りこむ。
「[拳闘技・衝圧拳]!!」
周りにブワッと風がおこる。完全に入った。
「やった!」
「わぁー! さすがラリア! 信じてたよ!」
「押したくせに...」
この3人の間には亀裂が入りそうだな。
3人は1ヵ所に集まりお互いが生きていることを確認しあっている。だが...
グオオオォォォ!!
「!? う......そ...でしょ?」
トゥアベアは生きていた。
「あれはわたしの中で一番強い技よ!?」
そんなこと言ってもトゥアベアは死んでないのだからしょうがない。
トゥアベアはまた横殴りをしてくる。
ラリアは避けようとしたが、後ろの2人がラリアを壁にして押してるため思う用に動けない。
それでもなんとかトゥアベアの攻撃をよけるがまた紙一重で服が...セーフラインギリギリまで破れた。
その攻撃でラリア以外は失神してしまい、ラリアはその2人につまずき倒れた。
「ひゃ!? 何よあんたたち何もしてないくせに迷惑ばっかり...」
そんなこと言っているうちにトゥアベアは距離をさらに詰めてくる。
ラリアはズルズルと後ろにさがっていき、壁に追いつめられてしまった。
「いっ、いや! こないで! やだ! 誰か...!!」
トゥアベアが腕をふりおろす。
「ヒッッッ!」
ガキンッ
「.........あれ? 私死んでない...?」
「あぁ、まだ生きてるぞ」
フサァ
ラリアに布がかかる。
「これかけとけ」
「! ありがとう。 あなたは...ヨーベクマ家の!?」
だいぶ驚いてるな。まさか頭に毛がないからじゃないよな...。
「いいか、動くなよ」
「え、ええ」
よし、こっからは俺のターンだ!
「兄さん、やっぱり兄さんにもらった剣凄いよ。あの攻撃を受けて傷一つつかないなんて」
俺はもう一度トゥアベアが降りおろしてきた腕をはねのける。
そしてそのままふところに入り剣を横にふるがトゥアベアは切れない。
「チッ! 皮膚がかたいな。じゃあスキル[剣術] [剣術技・十二支剣技 子]」
「その技は、[剣術]スキルのレベル7じゃないとできないはずじゃ...」
ラリアが何かに気づいたみたいだな。後で釘をささないと。
それより今はトゥアベアだ。
この技はネズミのようにちょこまか動いて相手の急所を狙う技。
この技のいいとこは相手の狙うべき所が自然にわかることだ。
「場所は...膝裏か...」
次々に降りおろされるトゥアベアの腕を素早くかわして、トゥアベアの後ろに周りこむ。
そしてそのまま流れるようにトゥアベアの膝裏に剣を突き立てる。
グァァァァ!
「切れた!」
続けて反対側の膝裏も剣で切りつける。
すると、トゥアベアは崩れるように倒れた。
グゥゥゥ!
後は倒れて動けないトゥアベアにとどめをさすだけ。
「[火球]」
不死鳥の加護で4倍になった火の玉がトゥアベアを包みこむ。
グワァァァァ..ァ....!
上手に焼けました♪
トゥアベアの亜種の皮は燃えない。だが熱は通すため、燃やすことが一番楽に素材が取れる。
そろそろ[解体]スキルを修得したいな。これには今度練習台になってもらおう。とりあえず[亜空間収納箱無限]にしまっとこ。
「あの...!」
「ん?」
話しかけて来たのは、俺のあげた布を肩にかけてるラリアだった。
この布の下、服破れてるんだよな...。 ......ダメだダメだ、心頭滅却! 5歳児はこんなこと考えません!
「あ、ありがとう...あと、ごめんなさい」
「...別にいいよ。素材とれたし」
「ソルト様って強かったのね」
ソルト様!? しかも「それにカッコいい」と言う言葉が聞こえた。...忘れよう。
「私ソルト様にひどいこと言って...何かお詫びとお礼させて?」
そこは別にいいよなんて言わない。もらえるもんはもらう。
「そうだな、じゃあ土下座して?」
「...わかった」
「なんてね! そりゃやりたくないよ...え?」
ラリアは膝をついた。
「ちょ、ちょっとまて! 冗談だから冗談! やだよ!女性に土下座させる5歳児なんてレッテル貼られるの!」
「でも私にはそれくらいしか...」
「えー...。 そうだな......。 スキル... スキルだ! スキルを今度教えて! なんのスキル持ってる?」
「え、[拳闘][解剖][清掃][調理][洗濯][裁縫]を持ってるけど」
「レアスキルは?」
「ない」
「そっか。じゃあ[拳闘][解剖][裁縫]を教えてね」
「わかった!」
「あ、それと、今回はトゥアベアがいきなり襲って来て、ラリアが追っ払ったってことにして、俺のこの喋り方のこととかは全部秘密で。もちろん俺は何もできなかったってことにして」
「確かに、[剣術技・十二支剣技 子]はレベル7じゃないと使えないのよ。何で使えるの?」
「誰にも言わないなら今度教えるよ」
「ありがとう。ソルト様」
「...ねえ、そのソルト様ってやめて?」
「無理」
「............そうか」
でもまぁ、味方が増えたってことでいいかな...?
いつも読んでいただきありがとうございます。
*お知らせ*
今まで毎日投稿をしていましたが、明日8/20から諸事情により毎日投稿が難しくなります。毎日楽しみにしていただいている方には申し訳ないですが、これからは時々投稿にさせていただきます。
できるだけ多く投稿したいと思っていますが、週に1回ぐらいのペースになるかもしれないと思っておいてください。
遅くなっても作品はより良いものになるように頑張りますので、これからもこの作品をよろしくお願いします。




