第12話 初日!初めてのお仕事
◇1日目ー朝
次の日...
「はい皆さんおはようございます。本日から旦那様が1週間街へ出向くためいません。そこに執事長もついていったため、今日から1週間メイド長の私が使用人全体を仕切るのでそこらへんお願いしますね。で、本日の予定ですがその前に、今日から1週間だけ下働きについてもらうのが5人ほどいますのでその紹介をします」
俺は前にでた。
昨日結局来た下働きの人は4人で、1人は黒髪の少し貧乏に見える同い年ぐらいの女の子だった。(それ以外は少し体格のいい男、ヒョロっとして背が高い男、少し偉そうな男だったが、男に興味はないので気にしない)
それにしても、前に出るとわかるけど、メイドの方が圧倒的に多い。後は多い順にコックさんと執事。
あ、あの子いる。やっぱり飛び抜けてかわいいなぁ。
そして俺の紹介になった。
「この小綺麗なのが、ソルト=ヨーベクマ君です。お察しの通りあの超貧乏貴族のお坊っちゃまです。お坊っちゃま、つらいお仕事になるけどできまちゅかぁ?」
周りがクスクス笑っている。
.........さすがに40代のおばさんの[でちゅか]は生理的に無理だわ。
「でもまあここでは一番下の下働きですから対等に、対等に扱ってあげてください」
「お願いします」
俺はお辞儀をして、戻っていった。
「あら、すねちゃいました?お坊っちゃま大丈夫ですかぁ?お仕事大変ですねー。 さて、次は...」
周りがクスクス笑う。
このメイド長、明らかに敵対視してるな。給料減らされなきゃいいけど...。
「この子はクイキです。執事長のよくわからない正義感で雇った子だからよろしく」
そうか、黒髪の子はクイキっていうのか。この子絶対化けるぞ、仲良くなっとこ。
「以上が新入りたちです。じゃあ今日の予定をいいますよ」
俺ら新入りの仕事は掃除、洗濯などの雑用だった。
「それとそこのソルトお坊っちゃまとクイキは2人で1人として見ますからね」
「あの...」
「何ですかお坊っちゃま。まさか平民と一緒がやだとかいうんじゃないでしょうね? あなた自身が平民みたいな貧乏なのに」
「いえ、ぼくはもうここではしたっぱなので敬語とお坊っちゃまはやめてください」
し.......ん。
さっきまで聞こえていたクスクスという笑い声はなくなり、驚きの静寂が流れた。
いや、1人だけ小さな声で可憐に笑っていた。バカにした笑いではなく、本当におもしろがっている笑い。この前案内してくれたヒラムだ。
「...そ、そうね。それとソルトとクイキは下働きが初めてらしいから教育係をつけます。ヒラムとウキリ、お願いしますよ」
「「はい」」
おお!知り合い2人だ。 あの子はウキリさんか...仲良くなれるか少し心配。
なんか周り(メイド以外)が「うちの2大美女が!?」「ずりーぞ!!」とかいっている。
やっぱりこの2人トップレベルだったか。
メイド長を見るとニヤニヤしてる。なるほど、美女と組ませて恨みを買わせる作戦か。でも俺5歳なんだけど...?
「あの坊っちゃん死ね」そんな声まで聞こえる。なるほど、小さくても関係ないと...。すでに対等に扱ってくれてますね! うれしかないけど。
「静かに。それでは皆さんそれぞれ仕事にいってください」
みんなパラパラと散らばって行く。
同じ下働きの偉そうなやつがすれ違いざまにすごい熱視線おくって来たけど、興味ないので無視。
「よろしくね! ソルト、クイキ。私がヒラムで...こっちがウキリ」
「...う、ウキリです。この前は...ごめんなさい」
「いやこちらこそ」
「何? 2人とも知り合いだったの?」
「はい...昨日少しありまして」
昨日のことを思い出したのかウキリの顔が かぁ! と赤くなる。
「ふーん。ま、いいわ! 2人とも改めてよろしくね!」
「よろしくお願いします」
「...お願いします」
クイキ、人見知り? それとも少し暗い性格?
「私たち教育係って言っても、主に子守りのことだけど......それもいらないかもね」
「...何で?」
「だってソルトあなた...年に似合わずだいぶ大人びいてるじゃない。でも新人潰しとかもあるから大人の私がいないとダメなのは変わらないけどね」
「そんなものがあるんですね~」
「他人事じゃないのだけど...。まぁいいわ。私がこれない時はウキリが、ウキリがこれない時は私がくるから。とりあえず今日はまず...?」
「お風呂の掃除です」
「そう、それじゃお風呂にいきましょ。今は私がつくわ。ウキリは仕事に...」
「はい...それではまた...」
ウキリさんは悪い人じゃなさそうだけど、仲良くなるには少し時間がかかりそうだ。
◇1日目ー午前の仕事
カッポーン
お風呂についた。
「大きいな」
「そうね、普通の貴族の家より広いわよ」
「こっちは旦那様方用? じゃあ使用人用は?」
「ないわよそんなの。使用人は井戸で流すだけ。もしかしてあなたの家はあったの?」
「ええまあ」
「私が言うのもなんだけど、そんな使用人になんてお金使ってるから貧乏から抜け出せないのよ」
余計なお世話だ! 第一君らの旦那様のせいだぞ。
そんなことヒラムが知るわけもなく、掃除方法を詳しく話し始める。
「私ももちろん手伝うわ。はいこれ道具」
「? スキルを渡すんじゃないんですか?」
「貴族様がそんなことにお金を使うわけないでしょう。ほら」
「あ、僕持ってます[清掃]スキル持ってます」
「え!? 貧乏貴族は小さい子にも掃除させるの?」
「違いますよ。使用人たちから誕生日にもらったんですよ」
「そう...。使用人に慕われていたのね...」
? まぁ、家族みたいなものだったかな。
というかさっきからクイキが影になってるんだけど...。
「頑張ろうねクイキ」
「......うん」
やっぱりまだ心を許してくれてないな。いやまだまだこれからだ。
「スキル[清掃] [清掃技・清掃道具召喚]」
俺らは3人で1時間ぐらいかけて風呂の掃除を終わらせた。
*
「フゥ! やっと終わったわね」
「本当に広かったね」
「...疲れた」
ヒラムともクイキとも少し仲良くなれた...かな?
「さて次は?」
「客室の掃除です」
「そこもさっさと終わらせましょう」
そこから6時間いろんなところを掃除した。
「んー疲れた。次はお昼にしましょう」
「お腹空いた~」
「...ペコペコ」
クイキは心をまだ完全ではないけど許して来てくれている。どうやらクイキはもともと無口な方らしい。
ヒラムも結構仲良くなれた。いや、美女と掃除できるってホントラッキーだったな。メイド長にはひそかに感謝しておこう。
◇1日目ー昼
使用人用食堂についた。
「使用人のご飯は昨日の旦那様方のご飯のあまりを食べるの。だからたまに病気になっちゃう人がいるけど基本的には大丈夫よ。ちなみに黒パン1こ は必ずあるから何もないって日はないから安心して」
「...ご飯必ずある!! 嬉しい」
「黒パンか~。スープがないとつらいかも」
3人は料理を受け取り、壁際にあるテーブルに腰掛けた。
たあいもない話しをしていると、
「ねぇ、少しいいかしら」
メイド3人組が話しかけて来た。
「......え?ぼくですか?」
こういうのって女子が女子にやるもんじゃないの?
「こら、ダメよそういうのは」
「そういうのってなんですか?ただお話がしたいなぁって思っただけですよ~。来てくれるよね?」
「まぁ、いいですけど...」
「え...ち、ちょっと!? やめときなさいよソルト。それはー」
「大丈夫ですよ。心配しすぎです。ただの用かも知れないのに」
心配はありがたいが、この後何回も声をかけられるのは面倒だ。今のうちに片付けておこう。
「そうそう、ただの用だから」と言って俺を裏庭の方へ連れていこうとする。
ヒラムは心配そうな顔で俺を見送った。...あれ?クイキは心配してくれないの?
仲良くなれたと思ったのは気のせいだったのかな...? ちょっと悲しい。




