第11話 ホブゴブリンの狩(スライム)
第三位階中位
14日目、朝。
朝の筋トレと称した特訓を、すっかり復調した若ゴブ達に課し、多少の運動をした後、狩に向かわせた。
今後はコレを日課にし、若ゴブ達を鍛えよう。
幸い連中は俺に逆らう素振りを見せていない。
最初と比べて少し頭も良くなっているし、体力もついて来ているので、今後はもっとマシになってくれるだろう。
サバイバルにはマンパワーが必要だ!
◇
鎧猪の獣道に行ってみると、流石に警戒されたか、罠は作動していたが猪は掛かっていなかった。
そう上手くはいかないか。と気落ちしたのも束の間。ガサリと草叢を掻き分ける音が鳴り、鎧猪が現れた。
大きさ的には100キロ無い、猪と言われて想像するくらいの、大した事ないサイズだ。
賢鬼ちゃんが矢を射掛け、怒った猪が賢鬼ちゃんに向かったのを大鬼君が斧を振るって転がし、俺が槍でトドメを刺した。
今日の獲物としては十分な量だ。
近くにあった大きな枝に、持ってきていた紐で猪を括り付け、大鬼君と一緒に持ち上げる。
多分ゴブリンだった時は3人掛かりでやっとだったろうが、今は持ち運ぶだけなら大鬼君だけでも行ける……かもしれない。
成長したもんだ。
◇
賢い奴が、調味料となる豆や草、実を集めて来た。
それと、どうにか同胞達が捕まえて来た兎やネズミ、それから猪の肉で美味い飯の作り方を教えてやり、昼食を終えた。
同胞達は待てが出来る様になったし、賢い奴には褒美の意味で肉を多めに切り分けてやった。
頭も回る様になったから、自分で良く考えて戦果を得てくれるだろうさ。
そんな昼食の後、長老ゴブから岩塩の場所を聞き出したので、石斧片手に同胞達を率いて向かって見る事にした。
◇
棍棒を振り下ろした。
ボッと鈍い音が鳴り、その異形は動きを止める。
異形生物の液体状の体には、中に小さな結晶の様な物が入っている。
それへ槍を突き込むと、液体生物はピクリと震え、ドバッと地面に広がった。
「食いでがねぇな」
ファンタジーの定番とも言えるスライム。それとの初対面はあっさり幕切れた。
一応何かに使えるかと、小さな結晶は回収し、ボロ布の袋に入れておく。
場所は、川を越えた先。
岩塩があるのは、崖沿いに少し進んだ所だ。
川の先には、スライムが生息していた。
奴等は、動きが遅く、しかし生物が接近するとどうやってかそれを感知し、近付いて来る様だ。
ゴブリンには近付いて来るが、ホブゴブリンである俺や大鬼君、賢鬼ちゃんからはのろのろと逃げ出す。
何を感知しているのかはまるで分からないが、強者からは逃げる様だ。
スライムは打撃に対して強いが、打撃を受けると停止する。
動きを止めた所で槍を突き込めば、簡単にシメる事が出来た。
奴等の攻撃手段は、割と粘性の高い体で取りつく事。
1匹なら問題にならないが、複数匹に足を取られて転んだりなんかすると更に寄ってきた複数匹に取り付かれ、全身が捕まればお陀仏と言う代物だ。
事実、ここら辺ではスライムがチョロチョロと見かけられ、1匹いれば近傍に4、5匹いる。
ゴブリンには少し危険度の高い場所だな。