第9話 ホブゴブリンの日常
第三位階中位
12日目、夜。
今の時期が春か夏かはわからないが、比較的温暖な気候のこの森は、夜でも寒くなりすぎず、すごしやすい。
とは言え、夜には危険な魔物が活発に行動するらしいので、拠点から出る事はない。
若ゴブ達と老ゴブ達はどうせ明日の朝まで目覚めないだろうし、それぞれの部屋に運んで寝かせておいた。
さて、昼から夜にかけての成果を確認しよう。
先ずは昼。
◇
「ダイキ君、頼んだ」
「オう、任せロ」
ダイキ君は紐で纏めた木の束を、少し重たそうに担いだ。
ホブゴブリンになって色々と強くなったが、単純な筋力ではダイキ君の方が強いので、荷物持ちはもっぱらダイキ君の仕事だ。
勿論俺も木の束を担ぐ、量は少ないがな。
ケンキちゃんは周囲の警戒役だ。
分かっていると思うが、ダイキ君には念の為、敵が来た時は木を捨て、直ぐに武器を構える様に言ってある。
これで、近場にある繊維質の木は取り尽くした事になる。
これらの木は基本的に早く育つので、紐が足りなくなる頃にはまた元気に育ってくれている事だろう。
数回の往復の間、遭遇した兎や蛇、鼠、小さな鳥なんかの小動物は、全てケンキちゃんがクロスボウで仕留め、回収しておいた。
クロスボウはしっかりと使えている様で安心した。
弦を止めておく部分の磨耗が激しいので、幾つか予備を作っておかなければ。
獲物はそこそこの量があるし、猪の肉も多いので、しばらくは肉に困らずに済みそうだ。
紐の材料を集めた後は、木材と石の回収だ。
武器作りには必須の素材なので、手早く集めよう。
◇
日が暮れるまで素材集めをしたので、洞窟の広場の半分が、山と積まれた木や石で埋まっている。
最初は、ひたすらに紐を編む作業。
道具加工スキルのお陰で、自分でも驚く程に作業スピードが早かった。
そのまま全てやってしまおうかとも思ったが、紐を編む作業は他の同胞達も出来るので、別の仕事にシフト。
ダイキ君とケンキちゃんに木の繊維を剥ぐ仕事を任せ、俺がやるのは石を研ぐ作業。
手斧の石や槍の穂先なんかを作り、しばらくやった所で、やめた。
夜も大分深まって来たし、取り急ぎやるべき事は何も無い。
わざわざ徹夜してまでやる様な事でも無いので、二人の作業もやめさせて、今日はもう寝るとしよう。
「ダイキ君、ケンキちゃん、今日はもう寝るよ」
「分っタ!」
「モう良イノ?」
「また明日やるから」
「うン!」
明日は作業の日だな。