プロローグ ゴブリン転生
第二位階上位
「うん、ゴブリンだ」
呟いた言葉が、暗闇の中へと消えて行く。
直ぐ隣に寝ていた俺と同じ形をした異形が、煩わしげに唸り声をあげて寝返りを打った。
騒がしくて済まんね。
改めて周囲を見回す。
場所は光の刺さない洞窟の中。
獣臭く適度な温度のそこそこに広い空間。
どう言う訳か、暗闇の中がよく見える。
ゴツゴツとした岩肌が剥き出しになっているが、地面には枝や葉が敷かれており、然程窮屈さは感じない。
そんな枝葉のベットには、おおよそ小学生低学年程度の身長のゴブリンと言うべき異形が、俺を含めて30匹程転がっている。
醜悪な顔付き。
緑色の肌。
やはり何処からどう見てもゴブリンだ。
そしてーー
名前:
種族:ゴブリン
位階:1
レベル:1
性別:♂
能力:『メニュー』『暗視』『雑食』『繁殖』
脳内に表示されたステータスらしき物も、俺がゴブリンである事を証明している。
「はぁ……」
何でこんな事になったのか……。
枝葉のベットに横になり、目を瞑った。
そう、昨日は確かーー
◇
ふと、騒音と異臭を感じた気がして、重たい瞼を持ち上げると、醜悪な顔付きの化け物が目に入った。
「ギャ、ギャギャ」
な、なんだ!? そう言った筈なのに、俺の口から零れた声はこれまた異音。
視界はぼやけていて目の前の化け物顔しか見えないし、音も臭いも煩わしい事以外良く分からない。
体はピクリとしか動かす事が出来ず、驚いていた筈なのにすごく眠い。
ーーなんだ、夢か。
そんな思考を最後に、俺は眠りの世界へと帰って行った。
◇
以上。回想終了っ!
……勿論、それ以前の記憶は朧気だがある。
俺は確か人間だった。
人間の知識があるのだから間違いない。
しかし、名前も性別も、友人や親の顔さえ思い出せない。
昨日まで体がピクリとしか動かなかったのに、今は打って変わって自由に動かす事が出来る。
兎にも角にも訳が分からない上に、眠い。
「……寝よう」
難しい事は明日考えよう。