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「傷ついた犬達と妖精と人間」

作者: 石橋千晶

人間の愚かさで傷ついた動物たちを、救っている妖精クリン。

クリンは「人間は弱くてそれ以上に弱い者をいじめたりするけど、心が強い人間は優しさも持っている」

と人間によって傷ついた犬達に教える。




「傷ついた犬達と妖精と人間」 石橋千晶


森の中を3匹の犬が仲良く遊んでいます。前足の自由がきかないテンちゃん。 耳が聞こえないウミ君。

目が見えないユウ君。最初は3匹とも飼い主が可愛がってくれていましたが、テンちゃんは車の事故で、ウミ君は病気で、ユウ君は飼い主のいたずらで、それぞれ足や耳や目が不自由になってしまいました。

しかも、飼い主はいたわって可愛がってくれるどころか、3匹をこの森に捨ててしまったのです。

最初、元気な子犬の時はあんなに可愛がってくれたのに…。

でも3匹は森の中で出会い協力して生きていこうと、テンちゃんをウミ君が手伝い、ユウ君には

テンちゃんとウミ君が言葉をかけて3匹は協力しながら生活をしていました。

「さあ、今日は何して遊ぼうか?」とテンちゃん。

するとウミ君が、「ねえねえ、テンちゃん、ユウ君。最近この辺りで、とってもいい肉の匂いがする

んだよ。匂いのする方をソッとのぞいたら、人間の女の子が置いていくんだ。」

すかさずユウ君が、「ダメダメ!人間を信用したら!何されるか分からないぞ!その肉だってきっと毒に

決まってるよ!」

特に飼い主のいたずらで目が見えなくなったユウ君は、人間を信用できなくなっていました。

でも、肉の匂いはあくる日も、そのあくる日も、そのまたあくる日も途切れることはありませんでした。

3匹は不思議に思い、匂いのする方に隠れてソッと見てみました。

そこにはみどり色のワンピースを着た可愛い女の子が一生懸命、骨付きの肉を焼いていました。 それは、それはとても美味しそうな匂い。 ウミ君は我慢できなくなって、テンちゃんとユウ君の反対も聞か

ず女の子のところまで来てしまいました。

女の子はニコッと笑って「あなた、ウミ君ね。やっと会えた!」

ウミ君は、「どうして僕の名前を知ってるの?」と首をかしげました。

「あなただけじゃないわ、そこに隠れているテンちゃんとユウ君のことも知ってるの。」

ウミ君はハッとしました!女の子は僕の言葉も分かってる!でも、どうして?

テンちゃんもユウ君も恐る恐る女の子に近づいてきました。

「私は、この森にすむ妖精クリン。ここには何かの理由で飼い主から離れた動物たちが集まってくるの。

あなたたちみたいに。私はこの森に来た動物たちの友達なの。」

ユウ君はクリンに聞きました。

「妖精なら何でも知ってるだろ?どうして僕の飼い主はいたずらをして、こんな目にしたの…?」

今にも泣きそうなユウ君をソッと抱きしめ、

「そうね、人間は弱いから自分より弱い人や動物をいじめることがあるの。人間達は可哀想な生き物

なの。ユウ君はたくさん傷ついてきたわね。でも大丈夫よ。私や仲間がこれからはいつでもそばにいる。

それに人間だってそんな弱い人間ばかりじゃないの。私の言うことを信用してくれる?」

「クリンと仲間たちのことは信用できる。でも僕を傷つけた飼い主は許せない!」

ユウ君は泣きながらクリンに言いました。

クリンは

「じゃ、これを聞かせてあげる。」

と、手を広げ何か呪文を言ったあと、「人間を聞かせて」と言いました。すると何か音が聞こえます。

それはどうやら大型犬と遊んだり抱きしめてキスをして喜んでいる女の子の声でした。

ユウ君は、とっても懐かしい気持ちになりました。僕にもこんな時があった!と。

テンちゃんもウミ君も、「私にもこんな時があったわ。」「うん、僕にもあった。」

クリンは、心が強い人間は弱い者いじめなんてしないことを3匹に教えてくれました。

そしてそれぞれ、この森に来たことには何か意味があるということも。

それからのテンちゃん、ユウ君、ウミ君は傷ついてこの森に来た動物たちを助けながら、クリンが教えて

くれたことを伝えていきました。


木漏れ日がまぶしく青空いっぱいの森で今日も色んな遊びをしている3匹です。


クリンは木のてっぺんで、動物たちを見守りながら、いつも笑顔で森の番をしていました。      


おわり

人間の醜さ、強さを動物と妖精を交えて訴えかけるストーリーです。

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