第1編第8部
第25章 3学期
時は流れ、いつの間にか、3学期の始業式となっていた。
「おはよ〜」
クラスにはいると、なんだか、元気がなかった。
「どうしたんだ?」
スタディンが、近くにいた、利恵子に聞いた。
「実はね、先生が今学期で退職なさるんだって。それで、みんな元気がないの」
「そうか、あの先生も長いらしいからな」
「何年ぐらいいるんだろうね」
「14年目だ」
先生が後ろに立っていた。
「それに俺自身、退職するんじゃない。休職するんだ。まあ、ざっと一年ぐらい」
「どうしたんですか?突然」
スタディンが、マスクをしている先生に聞いた。
「ああ、少したちの悪い風邪にかかってな」
スタディンは、その言葉に裏があるのがすぐに分かったが、しかし黙っていた。
「早く治してくださいね」
「ああ、そうだな」
そして、3学期が始まった。
始業式、学期最初の実力テスト、そしてテスト返し。それにさまざまな行事。気がつくと3学期も後少しになっていた。
「はやいな〜。もう2年生になるんだな」
「去年はいろいろあったからね。実際は早く感じても、時間なんて同じ速さで流れるのにね。不思議だね」
クラスの最後の席替えで、スタディンの横になったいーちゃんが、なぜか積極的に話しかけてくる。噂によるともうすぐ誕生日らしい。
「そう言えば噂で聞いたんだけど。いーちゃんってもうすぐ誕生日なんだってね」
「うん、そうだよ。あ、もしかしてここ最近、よく話すのが誕生日のプレゼント狙いだって思ってる?」
「少しね」
いーちゃんは、にやりと笑い、
「その通りだよ。何かちょうだいね」
と言った。
「あ、私の誕生日は、3月24日だからね」
とも、付け加えた。スタディンは思った。(3月24日は、ちょうど、終業式の前日だな…そうだ!みんなで…)その日から、スタディンは、あちこち走り回った。
そして、3月24日、全員が揃ったのは、特別に用意してもらった軍の会議場だった。中は、カラオケルームになっており、さらにいろいろなおもちゃも用意されていた。
「では、これより全員誕生日おめでとう会を始めたいと思います。まず今日誕生日を迎えた、手谷一郎さんから、なにか一言」
何が起こっているかどうか分かっていないような表情で、そのままステージ上に送られた。
「えっと、何を言っていいかわかりませんが、みなさんありがとうございます」
そこで大きな拍手が起き、そのままステージから感涙を流しながら降りた。
「では、みなさん。この一年間、何事も無く過ごす事が出来た事に…」
「かんぱーい!」
グラスを持ち上げ乾杯をした。中身は非アルコール飲料だった。そして、何人もカラオケをした。古い曲、新しい曲。さらにはアカペラをする人もいた。そして深夜を少し過ぎたころ、会は最高潮の雰囲気のまま解散となった。
そして、スタディンとクシャトルが、片付を終わらしたのが深夜3時ごろだった。
「やれやれ、これで片付いたな」
「そうだね。もう、夜も遅いし家に帰らないと…」
「そうだな、でも、夜で歩くのは危ないぞ。今はいいけど、寒くなるからな。それに人通りが減って不審者も出やすくなるからな」
その時、総司令官がやってきた。
「お前達、片付は終わったのか?」
「あ、はい。たった今終わってこれから帰るところです」
「ああ、ちょうど良かった。実はお前達に頼みたいことがあってな」
「なんでしょう」
「実はな、ここ最近、超常現象がおきている場所があるらしい。そこに行ってもらいたいんだ。ああ、大丈夫だ。学校が終わってからで構わない。それまでの間に部下をそこに送っておくから」
「了解しました」
「今日はもう遅いから、家に帰りなさい。車を一台貸そう。それに乗ればいい」
そして、帰り際、総司令官は付け加えた。
「そうそう、ここ最近、変な人が徘徊しているらしいから二人とも気を付けなさい。特にクシャトル。君はしっかりしてそうで、時々抜けているところがある。それに留意したまえ」
「分かりました。ありがとうございます」
そして、スタディン達は軍用車に乗り込み、第2師団をようやく後にした。
帰り道、車の中でもはっきりと悲鳴と聞こえる音が聞こえた。その直後、男の怒号があり、そして殴りあう音。
「近い!こっちの方向に車を回してくれ!」
スタディンが運転手に指示を出す。
「了解!」
細い路地を時速70km以上で駆け抜ける。一切、触れる事はなく、すぐに家々は通り過ぎて行く。そして、小さな広場に出たところでけんかは起こっていた。
スタディンとクシャトルは、銃を抜き出しながら、「やめろ!軍だ!」と言った。すでに、周りから飛びかかろうと、数人の男性がにじり寄っていた。その声を聞いて、けんかをやめた途端、周りから二人とも取り押さえられた。スタディンは懐中電灯を3人の顔に向けた。すると、
「何やってんだ?クォウス、瑛久郎。こんな夜遅くに」
「実は…」
「とにかくだ、二人とも警察行きだな。これから連絡を入れる」
スタディンは携帯電話を取り出し、警察に連絡を入れた。
警察はそれから、4分後に来た。
「ご苦労様です。イフニ・スタディン将補殿」
敬礼をして現れたのは、警察署署長だった。
「いえいえ、そちらこそご苦労様です。こんな、夜遅くに…」
「ところで、この3人ですか?こんな真夜中にけんかしていたのは」
「そうです。まあ、理由はまだ聞いていないし、後の事はよろしくお願いします」
「分かりました」
そして、再度敬礼をしてから、立ち去った。彼らは、パトカーに乗せられ、警察署に送られた。
そして、すぐにクォウスと瑛久郎は帰ってきた。しかし、その前にスタディンは、彼らの口から聞く前になぜけんかが起こったか理由を知っていた。それは、まずクォウスが午前3時ごろにシャーペンの替え芯がなくなったので、近くのコンビニエンスストアに買いに行こうとした。しかし、夜遅くに何かあればいけない上に、先生が不審者がいるから気を付けるように言っていたのを思い出し、その時偶然、深夜帯のアニメを見ていた瑛久郎に言ってついてきてもらっていたのだった。しかし買いに行く途中で因縁をつけられ、そして相手が暴力を振るってきたので、仕方がなく相手に対抗したところけんかになったと言う事だった。
「ま、良かったじゃないか。正当防衛が成り立ったんだろ?」
「それはそうだけどさ、スタディンも、あそこで連れて帰ってくれたら、こんな事にはならなかったんだ」
すこし、怒りながら言う、瑛久郎。
「確かに、それも事実だと思うけど、自分は軍人だ。軍人である以上、規律は守らなければならない」
「………」
瑛久郎は何か考えているようだったが、しかし何も言わなかった。
「皆さんは、これまでどんな生活を送ってきましたか?」
校長の声から始まった、修了式。とにかく、これで、1年も終わりである。スタディン達はこれまでのことを思い出しながら、校長の話を右から左へと聞き流していた。
「……………………ですので、皆さんも、気を付けましょう。では、これで、終わります」
そして、校長が降壇し校歌を歌った後、短い修了式は終わった。
「では、プリント配るから保護者に見せるように。それと軍関係者の人達は指示があるから、校長室まで終わり次第集合することと言う事だから。では、1年間、お疲れさまでした!」
先生がそう言って、長かった清正美高等学校1年生が終わった。学年の変わり目だからか、宿題はなかった。
第26章 春休みの指令
校長室に行った、スタディンは先に中に入ることにした。
「失礼します」
中に入ると、クシャトル、宇木金平海軍大佐、佐和泉水陸軍少佐しかいなかった。それに対面するように、川草大明第2師団総司令官、川崎享校長先生が座っていた。スタディンは空いていた椅子に座り、他の人が来るのをじっと待った。
それから、15分以内に全員が集合し説明を始めた。
「君達には合同調査を命ずる。今回の調査は第1宇宙空間/第3銀河系/34腕/第431惑星系/第4惑星より放出されている、特殊なエネルギーだ。しかも、これは周囲の時空間を異常に歪ませるほど強力だ。それとこのエネルギーは通常の装置では感知できない。なので、今回のみの特例として上級魔法協会より、何名か職員を派遣していただく事になった。君達の任務はこのエネルギー源と活用法の調査だ。すでに第2師団の隊員数名が現地入りして調査を開始している。それとこれは注意だ。このエネルギーに触れると強力な電磁波が発生する。それに気を付けたまえ。以上だ。出発は翌日0600時。では解散だ。スタディンとクシャトルは残っときたまえ。伝える事がある」
校長も部屋から出し、総司令官は、スタディンとクシャトルに言った。
「実は職員と言うのは5会長直々に来るそうだ。今回は全員の簡易下級魔法試験も兼ねている。本試験を受けるために必要な物になる試験だ。今回のエネルギーは恐らくは神の力だと考えられている。そのエネルギーを君達は回収して来てほしい」
「了解しました。試験の話は伏せときましょうか?」
「ああ、そのほうがいいだろう。それと君達には自分が先に送った先遣隊の総指揮と、君達が乗船する船の、いつものベルだがね、それらの指揮も行う。ただ、5会長の命の方が軍の命よりも優先される。それを忘れるな」
「分かりました」
そして、スタディン達は校長室を出て、家に戻った。
翌日、午前5時にスタディンとクシャトルは第2師団の格納庫に入っていた。
「少し暑いね」
「さすがにね。まあ、春休みって言ったって、実際は秋に向かっているんだけどね。プリントを間違えたからと言って、そのまま春休みで通しちゃったからね…」
スタディン達はベルに乗船した。すでに乗員は乗り込んでいた。
「あ、おはようございます。船長。今日のフライトはどこなんですか?」
指揮室に入ると、シアトスがストレッチをしていた。
「今回は魔法協会との合同調査だ。不可思議なエネルギーを感知したからそれを調査するという命令だ」
「そうですか。どこの惑星ですか?」
「第1宇宙空間/第3銀河系/34腕/第431惑星系/第4惑星だ。そこにあるらしいのだが…春休み、正確には秋休みか。そんな時なのに、自分達は船の中にいなければならないのか」
「スタディンとクシャトルだけじゃなくて、私達もね」
「その声は、伊口康平陸軍大佐と佐和泉水少佐だな」
「彼らだけでなく清正美高校の軍関係者全員に招集がかかったんだ。今回はスタディン宇宙軍将補の指揮下に入る事と言う令状付でね」
さまざまな人達がいたが、いろいろ話をしていたら出航の時間となった。
「では、出発だ」
船は静かに出発した。
船は順調に進み、すぐに目的地へ到着した。
「この惑星は、元々工業化をさせる目的だったらしいのですが、孤立している惑星系であるのと同時に、周りにいい条件の惑星がなかったために現在では誰も住んでいない無人惑星です」
説明をするのは、ベルが画面に出している文章を読んでいるクシャトルだった。
「そうか、ここを工場惑星にね」
スタディンがうなずく。ある一点を中心に荒地が広がり、その周りにはところどころに草むらがある程度の土地が広がっていた。その一点の近くに既に船が一隻止まっていた。
「あそこが目的地だ。ベル、これからあの船のすぐ近くに着陸。それと以下を船内放送。「スタディンより全乗組員へ。本船は着陸後、全員が既に到着している魔法協会関係者の指揮下に入る」以上だ」
「了解」
そして、着陸した。
「待っていたよ。スタディン宇宙軍将補」
「お久しぶりです。コンティンスタンス魔法最高評議会会長殿」
「なんだ。援軍ってスタディンの事か」
「自分の事を知っているのですか?」
彼女は答えた。
「ああ、無論だとも。前に一度会ったじゃないか。まあ、しょうがないか。あの時はしっかりと自己紹介とかもしていなかったからね。私はジャン・スクーム・イルード。コンティンスタンスと同じように、魔法最高評議会会長をやっている。ただ、仕事の範囲が違うだけだけどね。それと、こいつがピチタスオ。その横にいるのが、ショパエ・シヒェだ。今、この場にいないが、もう一人。近藤尚美と言う人もいる」
「そうですか」
続々と船から下りてきていた。
「スタディン、この人達は?」
質問をしたの、金津夏木空軍中佐だった。
「彼らは、魔法最高評議会の5会長だ。彼らの役割は…知っているよな」
「いや、知らないよ。だって、私。これまで魔法とか考えた事がないもの」
明らかに、落胆の声が聞こえてきた。その時、ジャン・スクーム・イルードが説明を始めた。
「じゃあ、私が説明しよう。私達、魔法最高評議会は上級・中級・下級全ての魔法協会の上に存在する組織で、事実上の魔法協会実権支配者なんだ。さらに魔法関連の裁判、条約、法律など、全てのことに対しては、私達の承認が必要になる。この役職に就くためには複数の条件があり、それらを全てクリアしないといけない。私達が魔法関連で決めた事に対して異議申し立てを行うことは、事実上不可能。しかしながら、魔法関連の事故や事件が起こると真っ先に派遣されるのも、私達最高評議会のメンバーなんだ。特に、今回のような謎のエネルギーを観測した場合は、名実ともに最高実力者である、私達、魔法最高評議会会長の5名が派遣される事になっている」
「すごいですね〜。それ、全部憶えているのですか?」
「全部憶えてないとこの場で言えないでしょう」
クシャトルが突っ込む。ジャン・スクーム・イルードが、手を叩いて注目を集めてからその場にいた全員に伝えた。
「とにかく。さっさと調査を終わらしましょう。それと、今回の合同調査については全員が私達の指揮下に入る事になっています。既に知っていると思うけど、念のために」
「分かりました。それを確認しないとこちらも支障が出かねないからね。じゃあ、早速だけど…」
こうして、初日は終わった。
二日目。
この日から本格的な調査が行われ、このエネルギーについて少しずつだが分かり始めた。それによれば、まず、このエネルギーは神のエネルギーであること。どの神かはわからないがおそらく第1宇宙空間である事から、イフニ神と想定される。次にこのエネルギー密度は10^67GeV/m^3であり強力な電磁場が発生している事。最後にこのエネルギーから放出されているエネルギー量は常に変動しているが徐々に増えている、ということだった。
「さて、この事を報告書に書いといてくれ。電磁場とエネルギー量については強い相関性が存在している」
「分かりました。記しておきます」
スタディンは、コンティンスタンスに言われたことをメモした。二日目はこうして終わり三日目には、内部侵入を試みる事にした。
三日目。
魔法最高評議会会長全員が力を出し、突破口を開こうとした。しかし、開いたと思った途端にエネルギーが局所的に増大し、一瞬で閉じてしまうのだった。そして、それを何回も繰り返した後、ようやく、全員が突破することにあきらめた。
「そうか、この中に私達全員が入ることは不可能なんだな。だとすると…」
緊急魔法最高評議会が開かれて、それ以外の人は議場外に放り出された。
四日目。
最高評議会が下した決断が伝えられた。それはこの神のエネルギーの種類を類推する事だった。
「なので、まず、それぞれの神の力、つまり魔法の種類について知る必要がある。簡単な事だがそれぞれ、順番に中に入ってくれ。まずはスタディンからだ」
スタディンの名前が呼ばれ、中に入るとそこには魔法陣がかかれており、その中心に椅子が置かれていた。
「さあ、座りなさい」
見た事がない女性に言われた。座りながらたずねた。
「貴方は誰ですか?」
「私?私は、彼らと同じ、魔法最高評議会5会長の一人、近藤尚美よ」
「それよりも始めないと。時間があまりない」
「ええ、そうね。じゃあリラックスしてね」
「はい」
スタディンは、全身の力を抜いた。
「そうそう、じゃあいいというまで目を閉じてね」
「はい」
スタディンは目を閉じた。そして、何かが自分の体の周りを飛び交っている感覚を受けた。
「もう目を開けてもいいわよ」
近藤さんの声に反応して、スタディンは目を開けた。
「あなたは、予想通りイフニ神の力ね。じゃあ、行きましょう」
スタディンは立とうとしたが転びそうになった。椅子の背の部分を持って、ようやく立てた。そして、慎重に歩を進め外に出た。
外はとても眩しく思えた。
「じゃあ、次は、クシャトル。中に入って」
「分かりました」
クシャトルが中に入り、スタディンは入れ替わりに出た。
こうして、全員の足腰がうまく行かなくなった時、誰が、どの神の力を持っているかがわかった。
「さて、じゃあ言うわね。ここにいる人達は、テントの中でどの神の力かを本人のみに言ったわ。それを言うのも言わないのも自由。ところで、この中でイフニ神の力を持つ人は、後でみんなまとめて中に入って」
そして、スタディン、クシャトル、佐和泉水が中に入った。
「3人か、まあまあね。さて、君達はあの魔法の結界を通る事が出来るはずなの。あの魔法で発生した磁場はイフニ神のものよ」
「自分達は何をすればいいのですか?」
「あの中に入って欲しいの。私達はどうにか隙間を作ってそれを維持する事しか出来ない。そもそも私達の魔法の力は誰一人としてイフニ神のものではないの。だから隙間を開ける事しか出来ないの。出来るわよね」
「分かりました。いつ、始めますか?」
「これから君達の準備が出来たら」
それから1時間もしないうちに、3人の準備は終わり、そして電磁場の前に集まった。他の人達は適地配置された。そして全ての準備は整った。
「行くわね」
「お願いします」
スタディンが声をかけて、魔力が一点に集中した。そして、開いた。
「さあ、行きなさい!今日中に帰ってこないようだったら、あなた達は死んだと思うからね」
そして、3人はそのまま結界内へ入った。今日が終わるまで、あと16時間。
第27章 禁じられた領域
一歩結界の中に入ると、外の風景が一気に歪み見えなくなった。
「ここは、通常空間から切り離されているみたいだ。その影響で、周りから中がよく見えなかったし、中から外も見れない」
「スタディン、それよりも早く中に進もう。この中、あちこちに電磁流が発生していて、とても危ないから」
「そうだな、じゃあ、自分が先導するから」
「分かった。よろしくね」
そして、スタディンが先頭となり、佐和が真ん中、クシャトルが最後となった。3人はそろりそろり歩いた。
少し歩くと、扉があった。
「なんで、こんなところに扉?」
「それよりも、先に進もう」
佐和に促され、扉に手をかける。すると、扉がしゃべった。
「我が門を通りたくば、我が質問の解を見出せ」
「なんだ?突然」
「問!人間とは、何か」
「いきなり抽象的ね。人間とは、何かと聞かれても…」
スタディンが一歩先に出て、言った。
「人間とは、知的な行動能力を持ち、いかなる場合においても、それが最善と考えられる方向に進み、そして、自滅する種族だ」
「それが人間か!」
スタディンは肩をすくめて言った。
「自分はそう考える。そもそも、そのような抽象的な問題に対して、明快な解などは存在しない。それが、自分の答えだ」
そして、扉がゆっくり開いた。
「ならば通れ!それが解と考えるならば!」
そして、3人は通って行った。
その後ろ、扉の外側に7つの影がいた。
"行ったか"
/ああ、行ったようだ/
'我々の城に、どれだけ近づけるか。見物ですな'
[さて、我々も行きますか]
/そうだな。行かなくては…/
そして、彼らは開け放たれている扉を通って、中に入って行った。
スタディン達がさらに奥に進んでいくと、壁が出てきた。
「なぜに、ここに壁が?」
「スタディン。そんな事考えている暇はないよ」
周りからは、電磁流が迫っていた。
「しょうがないな。あまり使いたくないんだけど…!」
スタディンとクシャトルは手を重ね、光輝剣を出した。そして、壁を切りつけた。金属的な音がなり、壁は壊れなかった。スタディンは舌打ちをして言った。
「音だけかよ」
「早く!どうにか抑えてるけど…」
その時、遠くから声が聞こえてきた。
「誰だ?こんな時に…」
それは、上から聞こえてきて壁の向こう側から縄梯子が飛んできた。
「それを使って、こっちに来い!」
何者かの声が聞こえた。
「ありがとうございます」
スタディンは礼を言って、すぐさまはしごの鉤の部分を壁の頂上に付けた。そして、3人は速やかに向こう側に入った。
その人は、彼らを待っていたようだった。
「助かったみたいだな」
「はい。あなたは、誰なんでしょうか?」
「俺か?俺は、北区司法下級監督官の、ギャラメ・シャブルだ」
「自分は、イフニ・スタディンです。こちらが、佐和泉水で、その向こう側が、自分の妹のクシャトルです」
「そうか、スタディンにクシャトルか……ちょっと待っとけ」
そして、彼はどこかに連絡を入れているようだった。胸の所に付けているひも状の物を上に向けて立てそのままの格好で話をしていた。
壁の外側では、先ほどの影が中を見ていた。彼らの周りには、電磁流は襲ってこなかった。
/さて、どうなっているかな?/
[中央連絡所に連絡を入れているようじゃな。さて、正史委員会の方に話が通って未来の神と知るだろう。それからどう行動する?]
彼らは、楽しそうに見ていた。
「分かりました。ではそちらに連れていきます」
そして、ギャラメは胸のひものような物を縮めて元の場所に戻した。
「来い。お前達を連れていく」
「どこにですか?」
「中央連絡所だ。そこにある、全世界正史委員会中央評議会でお前達の正体を言い渡す」
「どういう事?私達の正体を言い渡すって」
佐和が言った。
「とりあえずは、彼について行くしかなさそうだな」
スタディンが言った。
「ほら、さっさとこっちに来い!」
ギャラメは言った。そして、彼らはとある建物の中に入った。
塀の外から中に入った7つの影は、その光景を見ていた。
/やれやれ、ようやく入っていったか/
{彼らは少し時間がかかっている。もう中に入ってから1時間になる。彼らは何時間で出られるかね}
/今までの最高は?/
[3時間38分だ。ま、この調子だとその5倍はかかりそうだがな]
'選択を間違えたか。それとも彼らが遅いだけなのか'
"とりあえず、彼らを見守ろう。それが我らに出来る唯一の事"
そして影もまた、スタディン達と同じ場所を通っていった。
全世界正史委員会中央評議会というのは、全ての世界においての正しい歴史を見守るための機関であり、神々の下部組織でもある。その機関が存在する空間はそれぞれの宇宙を作った神の庇護下にあり、いかなる干渉も受けないようになっていた。この空間にいる限り時を超越した存在となれるのであった。
「ここで待て」
ギャロメが言った。スタディン達は、その場に立ちすくんだ。目の前にはスタディンの身長を優に越す大きな扉があった。その横には通話管があり、中と話が出来るようになっていた。
「ギャロメ・シャブル。北区司法下級監督官、登録コード803716。イフニ・スタディン、イフニ・クシャトル、佐和泉水を連れてきました」
「彼らだけ通せ。お前は持ち場に戻れ」
中から声が聞こえた。変声機を通した声だった。その声がしてから扉の片方だけが開いた。ギャロメはその場に立っていた。スタディン達が中に入ると扉はひとりでに閉まり、部屋に明かりがともった。
扉の外では、ずっとついてきている影がギャロメと会っていた。
「はい、確かにこの中に入れましたが、いけませんでしたか?」
[いや、別になんでもない。お前はそのまま持ち場に戻ればいい]
「分かりました。では、失礼します」
ギャロメは、彼らに一礼してからその場を去った。
"さて、我々も中に入らなければいけまい"
{その通りだ}
そして、通話間の近くで中にいる人と話をした。そして、そのまま中に入る事が出来た。
部屋に電気がついた時、スタディン達は一瞬何も見えなかった。そして、目が慣れてくると、半円状の机があり、向こう側に人が座っていた。その机のこちら側には、イスが3脚置かれておりそこに座るように指示があった。そしてスタディン達が椅子に座ると再び扉が開かれた。
「ああ、やはり来ましたね。イフニ神、カオス神、サイン神、アントイン神、エクセウン神、ガイエン神、カオイン神。こちらが、今回の招待人で?」
"そうだ。今回はまだ外にもいるが、彼らには別の機会にさせよう、と言う事でな"
そして神々は、向こう側に座った。
"さて、今回君達をこの禁断の領域に呼んだのにはわけがある。ただ、佐和泉水にはそれになるためだけの能力がない"
「どういう事ですか?」
ずっと話を聞いていた佐和が聞いた。
"スタディンとクシャトルは神になる。ただ彼らが死んだ後だがな。そのために我々はイフニ神の力を持つお前達を呼んだのだ"
「しかし、なぜ自分と妹なのです?他にも神にふさわしい存在の人はいると言うのに」
"彼らはさまざまな利権社会に巻き込まれている。無論、イフニ兄妹もその例外ではない。しかし、魔法協会会長の5人は、すでに神になる意思を放棄している。そもそも、彼らは神になるために必要なある事が欠けているのだ"
「それは、修行とか次第で補えるものですか?」
"不可能だろう。その欠けているものの名前は「天分の性」と言うのだ。これは我々神でさえも予測できないようなわずかなさが産み出す特別な能力でな。これがあるとないとで、大きく変わってくる。魔法が使えるもの達は魔法の天分の性を持っている。神になるものは神の天分の性を持っている。全てを治めるものは、全てを治めるために必要な天分の性を持っている"
「じゃあ、私にはそれがなく、スタディン達にはそれがあるとそう言う事ですね」
"まさしく。しかし、持っていない者が神になれないかと言うとそうでもない。事実、我々は天分の性を持っていない。スタディンとクシャトルの兄妹はそれを持って産まれ出た特別な子なのだ。古来から、初期の神々を除いて天分の性を持って生まれたものは、スタディンとクシャトルだけだ"
「自分達が持ってうまれた天分の性…それは、一体どのようなものなんですか?」
"分からない…しかし、真実なる神になるには必要なのかもしれない"
「そうですか、それとここは、どこなんですか?どうして、自分達だけがここに入れたんですか?」
"単純な事だ。ここは特殊な空間となっている。この空間は、全ての時間と接続しており全ての時間を監視している、いわば監視所のようなものだ。全ての時は、ここの前を通り過ぎる。無論、スタディンが過去にさかのぼった事も初代大統領も知っている。さらに、昔あった「日本」と言う国での核放棄に関する発言も知っている。しかしそのような事は今は問題ではないのだ。完全に外界とは断絶しており、唯一の手段であるのはこちらから招く事だけだ。スタディン達、お前達を招いたのは、この委員会の全体会合の時だった。ここはここ独自の時間が流れている。それは、元始の時から変わってはおらぬ。時の神と闇の神が定めた間隔により、時は動いておる。だがそれは、ここだけではなく、全ての空間において等しいと言うことしかできないがな"
「じゃあ、ここは周りから完全に隔離された空間なんですね」
/その通りだ/
今まで、黙っていたイフニ神が話し始めた。
/お前達を呼んだのは、全世界正史委員会中央評議会が全会一致で採決をしたに過ぎない。お前達は、新たなる神となる事が運命付けられた存在だ。さて、どうする?/
「その前に、その全世界正史委員会中央評議会ってなんですか?さっきの説明だと、時間監視センターみたいなところみたいですが…」
{この組織を統治しているのはその時々の神々全員で、結果として当初からの神ではなくなった}
「そんな重要な事を私達に託してもいいんですか?それに、私達の大事な人達もここには入れるんですか?」
{最初の質問に対しては、ああ、お前達しか今の時代に適任者はおらん。2番目の質問に対しては、もし、そのものが必要ならばここに入る事も可能だ}
「そうですか…」
「ねえクシャトル。もしかして私のことを…?」
「うん、だって、私達だけいいとこ取りって、なんか、気が引けちゃうって言うか、いやな気分になるからね」
「ありがとう、ほんとに」
佐和はクシャトルに抱きついた。泣いているようだった。それを見たスタディンは、「話がそれだけだったら、帰りたいのですが」と言ったところ、神から、「では、帰るがいい。いずれ、ここの座を引き継ぐものよ」と言われた。スタディン達は、そのまま、ここに来る時通った道と同じ所を通ろうとした。しかし、壁でさえぎられている事を思い出し、言った。
「すいませんが、ここからの帰り道を教えてもらえますか?」
そして、立っているクシャトル達を連れて、神から教わった道を通って帰った。