ランク外の魔物
こんにちは。チキンソルジャーです。
最近暑いですね、皆さんはどうお過ごしでしょうか?
私は暑くてグリルチキンになりそうです。
いい面なのはイケメンだからかな。
「そうだろう?いい面だろ」
オッサンはそれを聞くと笑い出した。
「ああ、そうだな。大きなことを為し遂げる、そう感じる顔だ」
うん、もう為し遂げた。前の世界だけど。
「ああ、してやるさ。期待していろよオッサン」
「威勢もいいなお前は。まぁ冒険者なら普通か。立ってないでまぁ、座れよ」
「ああ、喜んで」
俺はオッサンの前にあるソファーに腰かけると、ダリオンは紅茶を啜り、俺を見る。
「まずは自己紹介といこうか。俺はダリオン、種族は見た目通り人間でこの街の四つのギルドマスターをしている」
え?四つも?
「ギルマスは一つのギルドに一人じゃないのか?」
「そうだ。だが、この街のギルドは変わっていて四つで一つのギルドとされているんだ。だからギルマスはこの俺一人だ」
「そうか、そんな仕組みなんだな」
「ああ、俺の事は話した。次はお前の番だ」
そう言うとダリオンの目付きが変わりナイトに鋭い視線を向ける。
「ああ、いいぞ」
俺は自分の前に置いてあった紅茶を飲み喉を潤す。
「まずは、俺から。俺はランク10の冒険者でレベルは10でステータスの平均150でスキル無しの天才だ」
オッサンは黙って聞いていたが、俺がスキル無しの天才だと言った途端に笑い出した。
「ふははは、確かにスキル無しじゃ天災だな」
「おい、オッサン。天才が良い方じゃなくて悪い方だったらオッサンの目は節穴だな。俺が天災ならば何も大きな事を為し遂げないぞ?」
ダリオンは笑いを止め、俺に真剣な目で見てくる。
「俺の目は節穴じゃない。現にこの低レベルでダークナイトを従魔にしているんだ。お前が魔王か天才かただの超幸運な奴のこの三択だ」
「受付嬢に登録の時、魔王では無いと確認出来ているから魔王の線は消える。超幸運なら、スキル無しの訳がない。よってお前は天才だと俺は目を付けている」
「なるほどな。まぁ、どうなんだろうな」
俺がとぼけるとダリオンは鼻で笑う。
「へっ、扱いづらい奴だ」
「悪かったな、扱いづらくて」
「まぁいい。冒険者は己の手を隠すのが普通だからな。当たり前の反応だな。それでもこれだけは答えて貰うぞ。そのナイトについてだ」
俺は首を縦にふる。
「答えられる範囲でな」
「まず、お前はそのナイトに何処で会ったんだ?」
「ここら辺の地名はよくわからないから、大雑把になるけど、それでもいいか?」
「ああ、いいぞ」
「俺が街に向かっているとき突然上からこいつが降ってきて、地面に激突して目の前で死んで、ドロップアイテムがその場に散らばったんだ。その中にたまたま召喚コードがあったんだ。それを使ってこいつを呼び出したんだ」
ダリオンは眉間に皺をよせ熟考している。
「その森はどっちの方向だ?」
俺は適当にカップの持ち手の方向を指差しておいた。
「あっち」
それを聞いたダリオンは難しい顔になる。
「お前、よくその森から生きて帰ってこれたな?」
どうやら指した方向の森は俺が生還するのは不可能なのかもしれない。多分ダリオンはそう言いたいのだろう。
「ああ、受付嬢から聞いていると思うが俺はそこで目を覚まし、そこからの記憶しか無いんだ」
「それは聞いている。だから、何故そこに居たのかなんて無駄な質問はしないさ」
「それはありがたい」
「何もありがたくないがな。記憶喪失のお前にその森について教えてやる」
「ホントか!頼む!」
「あの森は魔境の森と呼ばれている。通称冒険者の処刑場とも呼ばれる。毎年ランク3に成り立ての奴が命を落としているんだ」
「マジかよ。俺が生きて帰って来たのが自分でも不思議になってきた」
「そうだな。これを聞けばそう思うのも当然だ。それにこれを聞けば耳を疑うだろうな」
「何だ?教えてくれ」
「魔境の森は名前からわかるように魔境にある森だ。その森を深く進むと魔境を越え魔界と呼ばれる世界に入る。そこはランク1以上の魔物がいるとわかっている」
「は?じゃあ何で人間は生きていられるんだ?」
ダリオンはその質問を待っていたかの様に調子よく口を動かす。
「ああ、それはな魔界と此方の世界の魔気の量に違いがあるから、奴等は此方に侵攻はしないのさ」
魔気?気体かな。
「魔気とは何だ?」
「これは一般常識だからよく覚えておけよ。魔気とは空中に漂っている魔力の事だ」
「へぇー。それが魔気なんだ。で、違いは?」
「此方の魔気は濃度、量共に少ないくて、奴等にとっては活動しづらいが、魔境の森からは濃く、多くて活動しやすくて、とても好まれている」
「魔気についてはわかったけど、何でランク1を越える魔物がいるんだ?」
ダリオンは紅茶を飲む。
「それはな、魔境の魔気が原因で魔物が強化されるからだな。俺達は強化された魔物をランク外って呼んでる。まぁ、ランクはしっかりと割り振っているがな」
へぇー。でも俺の敵じゃ無いな。どんな奴でも頭飛び散るからね。レベル上げには最適だな。
「倒せる奴はいるのか?」
ダリオンは誇らしげに笑う。
「ああ、いるぞ!伝説の勇者とか、転移者、転生者、ランク1以上の冒険者とかだな」
え?転移、転生、勇者いるのか。それってつまり俺みたいな奴が他にもいるのか。まぁ、今のところこの世界を楽しむつもりだし、会っても無関係でいいや。
「勇者って何やってんだ?」
「そりゃ決まっている。魔王を倒そうと旅をしているだろうな。倒せるかわからんが」
ダリオンは勇者を下に見ているようだな。
「あんまり期待はしてなさそうな言い草だな」
それを聞き鼻で笑うダリオン。
「ふっ、異世界では勉学をしていた小僧が強い力を手に入れて調子乗っているだけだからな。町では威張っているし、勇者共は、所詮は戦闘の素人、ステータスが低ければ瞬殺よ。そんな奴等に期待している召喚した者共の頭が可笑しいわ」
「それは、そうだな。期待しないのが普通だな。でも、そいつらでもランク外を倒せるってさっき言ってたろ?強いんじゃないのか?」
「ああ、そうだな。でも、15人以上のパーティーでって条件付きだ。他の転生、転移、冒険者は熟練度によっちゃ、ソロでも狩れるぜ」
「そうか。それで、ランク外の奴等はどんな魔物がいるんだ?」
「ドラゴン、各色のエリートナイト、魔王とか、まぁ全部の魔物だ」
「なるほど。魔境にいる魔物は此方の世界の魔物全種類いるってことか」
「その通りだ」
「ありがとうな色々教えてくれて」
ダリオンは特に顔を変えずに俺を見る。
「なぁに。ギルマスは面倒見が良くなくちゃやっていげねぇんだよ。だから何時でも頼ってくれていいんだからな」
「ああ、ありがたく沢山世話になるよ」
「ふ、程々にしてくれ」
ダリオンは立ち上がる。
「お前達に聞くことは終わったし、もう行っていいぞ」
「わかった。あ、俺のランク上げておいてくれよな!」
「ああ、わかっている。心配するな」
「サンキュー。じゃあな」
俺達は音の鳴るドアを開けギルマスの部屋を後にした。
宗一が去った後、ギルマスは葉巻を吸い煙を吹き出し上機嫌になった。
「あいつは必ずデカイ男になる。楽しみにしているぞソウイチ」
そう言って各ギルドへの通達書へ羽ペンを走らせた。
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