ギルマスに会う
俺達はバリスに別れを告げ冒険者ギルドにやって来た。俺がギルドに入ると冒険者達が俺を見る。酒を飲んでいた手を止めて仲間達と俺に指を指して話していた。冒険者達は声が大きく声も聞こえてきた。
「おい、今入ってきた奴ってよ。エリカちゃんが言ってた残念イケメンって奴じゃねぇか?」
と一人の冒険者が言うと仲間の一人が
「確かにイケメンだが違うかも知れないな。あいつは冒険者登録の時エリカちゃんにギルドマスターの所に連れていかれそうになりギルドカードと新人冒険者の為の本を盗って逃げたらしくそれから一週間と見てないと聞くぞ」
するとまた別の一人が話す
「何でギルマスと会わされることになるんだよ?」
さっきの冒険者が答える
「ランク3の冒険者の話によれば例の奴がエリカちゃんに残念イケメンと言われて、むきになって取り出したアイテムがダークナイトの鎧だったんだと。でも奴はスキルが一つもなくレベルにしてはステータスが若干高いだけで到底ダークナイトなんて倒せない。そんな奴がダークナイトのアイテムを何故持っているのか、それについて聞くためにギルマスに会わせようとしたらしい」
仲間は相槌を打って聞いていた。
仲間の一人が聞く
「冒険者ランク3の奴等が謎の残念イケメンと呼んでいるのはこれが由来なのか」
「ああ、そうだ。奴は謎が多すぎる。ギルマスも会いたくて奴を見かけたら報告して欲しいと言っていたな」
へぇー俺は実力者の間に謎がついて謎の残念イケメンと呼ばれてるのかー。残念いらないよな。謎のイケメンで良いじゃん。
俺の後に続いて入ってくるダークナイト。鎧の音をさせながら歩く。漆黒の立派な鎧が何よりも目立つ。
先程俺を見ていた冒険者達がダークナイトを見て叫ぶ。
「あいつ!ダークナイトを従魔にしてるぞ!」
「す、すげぇダークナイトだ。初めて見た」
「おい!あいつ残念イケメンじゃないのかよ?」
俺は冒険者達を無視してエリカより一番遠い受付嬢へと足を向ける。別にエリカだけが可愛いわけじゃない。どの子だって最高レベルに可愛いのだ。
面倒を起こしそうなエリカを避けて行くのが一番の理由だが。
エリカは今他の冒険者達の相手をしていて全く俺に気付いていない。この隙に報告を終わらせて出ていくのが理想だ。
「依頼完了の報告に来たぞ。早く処理してくれ」
俺の言葉に受付嬢が答える。
「何よその言い方!貴方の処分ならしてあげるわよ」
俺はその子の顎を手でつかみ上げ顔を近づける。
「早く処理してお姉さん。してくれなきゃ嫌いになっちゃうかも」
可愛い顔が真っ赤に染まる。
「わ、わかったわよ。やればいいんでしょ!」
お姉さんは俺のギルドカードと依頼書を受け取り此方をチラチラ見ながら処理してくれた。だが、突然手が止まる。
「ねぇ!貴方!何でランク10なのにランク9の依頼受けているのかしら?」
俺は冷や汗を流す。
「エリカから依頼を受けたんだけど何か問題あったかな?」
お姉さんはそれを聞くと、溜め息をついた。
「また、エリカ。全く何でこんなミスをするのかしら。これで何回目よ」
お姉さんは頬を膨らませながらエリカを呼んでしまった。
「エリカ!ちょっとこっちに来なさい!」
エリカは背筋をピンとさせ、重い尻を上げこちらに来る。
「この人に受けさせちゃいけない依頼を受けさせたでしょ?」
エリカは頭を傾げながら依頼書と俺のギルドカードを見ると、
「あぁぁぁ!残念イケメンさんじゃないですか!」
「うるさい!今は怒っているの!」
「すいません!」
エリカはお姉さんに頭を下げる。
「もし、これで世界のイケメン人口が減ったらどうしてくれるの?」
あれ、何かおかしなこと言い始めたぞ。
「はい、ごめんなさい」
「反省しなさい」
「はい、今後無いように気を付けます」
「うん、よろしい席に戻っていいわよ」
エリカは俺を凄く見てくる。そして何かを思い出したような顔をした。
「そうだ!ソウイチさん!このあとギルマスのところまでご同行お願いします! 」
と言ってカウンター越しに俺の左腕に抱きついてきた。
「今日は逃げられませんよ!」
あーあ捕まった。
「離せぇぇ!胸を揉むぞぉぉ!」
俺はエリカの胸に右手で揉むように手を動かすと
「揉まれても絶対に離しません!エリカは負けません!」
あーもうダメだな。ギルマスルート確定だ。
そこにダークナイトが突然剣を抜く。
「小娘が主様を困らせているようですね。殺しましょうか?」
それを聞き、冒険者全員が立ち上がり各々の武器を取り出し構える。
エリカちゃんも怖くなり俺の胸に抱きついてきた。
「キャー!ソウイチさん助けて!」
「いやいや、いいから、殺さなくていいから」
「承知致しました」
ダークナイトは剣を納めると冒険者達は皆その場に腰を下ろし肩で息をしていた。彼らにとってはダークナイトはこれだけ強大な存在だとわかる。
ナイトが剣を抜いてから俺のズボンが生温かい。
「あの、ソウイチさん?これ内緒に」
俺は笑顔で答えた。
「冒険者たるもの、使えるものは使うぞ」
「ソウイチさんの馬鹿!馬鹿!これだから残念イケメンなんです!」
「まぁ、今は黙っておくよ」
「た、頼みますよ」
俺はエリカちゃんと一緒にギルマスの部屋の前に来た。
エリカが二回ノックし許可を得て扉を開ける。入るエリカに続いて俺とダークナイトが入るとそこには顔に傷のある、おっさんがいた。
「よぉ、お前が謎の残念イケメンか。なかなかいい面してんな」
おっさんは此方を探るように見てから言った。