ナイトと話す
歩く度カチャカチャと隣から鎧の音が聞こえてくる。俺は今この真っ黒いナイトと一緒に街へクエスト完了の報告の為に帰っているところだ。
俺は召喚した時からの疑問を口にする。
「なぁ、お前は俺が倒したダークナイトなのか?」
「わかりませんね。私は主様を見たことも攻撃した覚えもありません」
こいつが俺に攻撃したダークナイトかも知れないと読んでいたが違うようだ。だが、同じ魔物のダークナイトならば遠距離攻撃の手段を知っているはずだ。
「お前は動かずにどのくらいの距離に攻撃することができるんだ?」
「黒魔法で、攻撃するならばどこの者でも攻撃できます。ですから私は遠・中・近距離全てにおいて有利でそこらでは最強クラスなのですよ」
ナイトは青い光の目を上機嫌に揺らがせながら得意気に言った。
やはり遠距離への攻撃手段があったか。
「その攻撃に使う魔法は何だ?」
「黒魔法の呪い、シャドウランスの二つです」
黒魔法ね。流石ランク3になるとここまでになるか魔法。
「どんな呪いなんだ?」
「相手を即死させる呪いでございます。複数にかけることが出来るとても便利な魔法です」
「へぇーすごいな。黒魔法か。かっこいいな」
ナイトはそれを聞くとうんうんと頷いている。
俺はこの世界の知識はメニューからしか調べることしかできない。だからこいつに頼れれば頼りたい。
「お前はこの世界に詳しいのか?」
ナイトはそれを聞くと、腕を組み青い目を泳がせ考える仕草を見せた。
「そうですねー。私は詳しいですよ。ただし、人間が築いた社会の仕組みなどは知りませんが。詳しいのは私より強い魔物についてですね」
お前より強い魔物ね。確かに知りたいな。
「お前より強い魔物はそう多くはいないのだろう?」
「いえ、それが数えきれない程いるのです。はっきり言って私はランク3の最底辺です。ランク3の最上位はステータスの平均が9000億に達しますね」
俺はそれを聞き、思わず転びそうになった。
「は!?そんな化け物がこの世界の何処にいるんだ?」
ナイトは驚く俺を見るのが楽しいのだろう、そう目が教えてくれる。
「ヒヒヒ、そうですね。例えばダンジョンなんかにいますね」
「具体的にどんな魔物なんだ?」
「ドラゴン、とかですかね。ドラゴンと言っても最弱のドラゴンがランク3のトップ辺りです。伝説や神話に出てくるようなドラゴンはみんな、ランク1です」
俺はドラゴンと聞いて心が踊りだした。
「おい!ドラゴンについて詳しく教えてくれ!」
「勿論でございます主様」
「ドラゴンは昔は人類に不干渉だったのです。あの時まで。どこかの国が魔王を倒すために異世界から勇者を召喚しました。その勇者は魔王を倒すために数えきれない程魔物を倒し、レベル上げに尽力しました。その努力が実りとても強くなれました。ですが、まだ魔王を倒すのに力がまだまだ足りません。もう勇者は並大抵の魔物を倒すだけではレベルが上がらなかったのです。これに勇者は悩み、早くレベル上げできる方法を毎日頭を抱えて考えていたのです。そんなある日、勇者は子供のドラゴンに森で会いました。子供と言ってもとても大きいのですが。勇者はドラゴンが人間にとって無害でドラゴンに不干渉でいるように、と召喚した国からは聞いていなかったので、敵と勘違いしたのでしょう。その子ドラゴンを殺してしまったのです。その現場を親ドラゴンが見て大激怒し、勇者を殺そうとしたのです。ですが勇者は逃げてしまったのです。
勇者は城に逃げ込みました。ドラゴンは城を攻撃し、国を混乱させました。この出来事から人間はドラゴンが人間の敵であると認識を改めたのです。ドラゴンは勇者を殺しましたが怒りは収まらず、召喚した国を破壊し尽くしました。このように人間の愚かな行動によりドラゴンは人間を憎み、嫌うようになり敵となったのです」
異世界人の転移は俺が初めてじゃないんだな。
「勇者か。馬鹿だなそいつ。どうせ調子乗ってドラゴンに手を出したんだろう」
俺が親なら子を目の前で殺されたら何をしてでも殺した奴を必ず殺す。ドラコンも同じ気持ちだったに違いない。
「これは歴史に書かれているのか?」
「書かれていないと思います。これは勇者が起こしたことなので今後の勇者召喚への反対を危惧し歴史からは消しているでしょう」
「世界は変わっても人間のクズさは同じか」
話が盛り上がって来たところで北門についた。
「やぁバリス、ただいま」
バリスは俺を見て顔から足を交互に見て驚いた顔をした。
「お前さっき行ったばかりだろ?新人の冒険者を見てきたがこんなに早く終わることなんて無かったぞ?もしかして依頼を辞退したのか?」
おれは首を振る。
「いやいや、ちゃんと完了したよ」
「そうか。じゃあ結構近くで楽だったんだな」
「まぁそうだね」
俺達の足なら距離が遠くても近いようなものだ。
「よかったな。ん?お前の隣の奴は従魔か」
バリスはナイトをじっと見つめると目を大きく開きとても驚いた。バリスはナイトを指差しながら言う。
「お前!何でこんな奴、従魔なんかにしてんだ!こいつを倒せる奴はランク3の冒険者位だぞ!」
俺は胸を張りとても鼻が高くなった。
「ふふふ、それは企業秘密だ」
このヘッドフォンを作ったのは俺の会社だからな。
バリスは溜め息をついた。
「確かに冒険者を詮索するのはご法度だな。だが、驚いたな。新米のお前がこんな強い魔物を従魔にするなんてな。噂じゃ残念イケメンと言われているのにな」
俺はその言葉を聞き
「何でもう広まってるんだよーー!」
バリスはニヤニヤしながら言った。
「それはあれだよ、あれ。エリカが言ってたって冒険者の内で噂になっているんだよ。冒険者に必ず会う俺には自然と耳に入るんだよ」
ああ、最悪だ。残念イケメンなんて呼ばれたくないぞ。
「バリス。俺を残念イケメンって絶対呼ぶなよ。呼んだらもう話してやらんからな」
「おいおい、流石に呼ばねぇよ。俺は門番で街に入る人を歓迎するんだ。その俺がそんなことは絶対言わねぇよ」
「そうか。よかった」
「はは、気にしすぎだ。噂になることは注目されてていいことだ。反対にすげぇことすれば注目されてない奴がするよりされてたほうが目立てるぞ」
「いや、あんまり目立ちたくないのだけれど」
「おっ、そうだったのか。それは災難だったな。お前がそのダークナイトを引き連れて歩けば一躍すぐに有名になっちまうだろうな」
マジかよ