クエスト完了
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朝、街の住人達が元気よく話す声に俺は目を覚ました。今は午前6時25分だ。俺にとっては大事な会議がある日以外は決して起きない時間帯だ。時計でA.m. の横の6を見ると、不思議に思うくらいだ。
俺は一週間寝ていたいから宿の更新に下に降りると、ニーナと、ミルクが忙しく動きまわっていた。
「ニーナ、ミルクおはよう」
「おはようソウイチ」
「お、おはようございますソウイチさん」
「忙しそうだね」
「そうなのよ。冒険者は皆朝早いのよ。ソウイチは随分と遅いのね?」
「俺?俺はゆーっくりこの宿で一週間過ごすつもりさ」
「あら、余裕なのね?いい稼ぎでもあったの?」
「まぁね。モンスター沢山倒したからな」
「へぇーソウイチは強いんだ。私達の事を守ってくれないかしらナイト様?」
「そうだな。まずは腹一杯に飯食わなきゃ守れないな」
「ふふ、そうね。ミルク持ってきて」
「はい、姉さん」
ミルクがお盆に良い香のする焼き立てのパンとシチューを持ってきて俺の前に置いてくれた。
「ありがとうな。ミルク」
「どういたしまして!」
「なぁ?休憩はいつなんだ?」
「そうね、あと五分で冒険者は皆依頼にいっちゃうから、もうすぐよ。それがどうしたの?」
「なぁに何でもないさ」
それから五分経つと、誰一人もいなくなった。
俺は二人の手を掴み、俺のテーブルの前に座らせた。
「ちょっとソウイチ。何よ?」
「ソウイチさん。何ですか?」
「なぁ、一緒に飯を食べようぜ」
「あら、誘ってくれるの?是非そうさせてもらうわ」
「ミ、ミルクも嬉しいです!」
俺達はお喋りしながら食事を楽しんだ。
「なぁ、ミルクの下に妹がいるんだろ?一度も見たことが無いんだが?」
「ユメは厨房でご飯を作っていますよ」
俺は驚いた。
「一番下の妹がこんなに立派な料理を作れるのか。君達姉妹は才能豊かだね」
「ふふっ、でしょ?私達は美人で才能もあるのよ?どう?欲しくなったでしょ?」
「そうだな。可愛いし、こんな嫁さんがいたら家から出たくなくなるな」
「ふふ、しっかり働いてくれなきゃ困っちゃうわよ」
「そうです。ミルクに美味しいご飯を食べさせるのです」
「全くミルクったらそればっかり」
「ははは、ミルクは食いしん坊なんだな」
「違います!ミルクは美味しいものがお腹一杯食べたいだけです」
「それを食いしん坊っていうんだぞ」
「うるさいです!ソウイチのわからず屋!」
「おうおう、そんな口きいてると襲っちゃうぞ」
「きゃーーー!」
ミルクは厨房に走って逃げていった。
「ふふふ、可愛いわよね。ソウイチのこととても気に入っているわね」
「だろうな。俺に惚れない女はいないぜ。既婚は別だが」
「そうね。既婚者は惚れさせちゃうとまずいわね。ソウイチは今日は出かける?」
「いや、一歩も宿から出ない。俺は寝る」
「 ちょっとしっかりしてよね?じゃあまたね」
「おう、あ、ちょっと待って。宿の更新頼む」
「わかったわ。何泊かしら?」
「とりあえず1ヶ月」
「えっ?そんなに?大丈夫?」
「大丈夫。ここが気に入ったからな」
「そう、ありがとう。えーと全部で15000Gよ」
「わかった」
俺はギルドカードをかざすとお金の残高が減った。
「終わったぞ。じゃあおやすみ」
「朝からお休みなんていったことないんだけどね。おやすみなさい」
俺は直ぐにベッドに飛び込み寝た。
七日間俺は自室から出ずに寝て過ごした。寝ている内にベッドに潜り込んできたニーナとミルクを襲ってやった。
こうして俺のゆったりな生活が終わった。
「あー久しぶりの広間だな」
「そうね。貴方が降りてこないからわざわざ食事を持っていってあげたんだからね」
「美味しかったよ。ニーナもミルクも」
「ちょっ!止めてって恥ずかしいじゃない。でも楽しかったけど」
「はは、良かったよ。じゃあ冒険者ギルドにいってくるよ」
「ええ、いってらっしゃい」
俺は一週間ぶりに外に出た。一週間前と一切変わらず、街は活気に溢れている。
街を散策してみたいが街が広すぎて萎える。気が向いたらしようと思う。
街を眺めているとギルドに着いたようだ。
中に入ると10人しか冒険者がいなかった。冒険者は皆働き者なんだな。それに比べて受付嬢は皆寝てるし。何やってんだよ。
俺はエリカの顎を手で押し上げ俺の顔を近づける。
「きゃっ!誰このイケメン!」
「誰ってひどいな。マサトキだよ。依頼を受けに来たんだよ。さぁこれを頼む」
「ふぁー、はい」
「ギルドカードを渡してください」
「ほら」
うとうとしながらギルドカードを装置にかざし俺に返した。
「はい、これで受注完了でぇすぅ」
俺の受注が済むと糸が切れたように机に突っ伏して寝た。昼間から寝れていいご身分だな。まぁあいつが寝ぼけててギルマスに会わなくて済んだが。
北門へ来ると、バリスにあった。
「よぉ、ソウイチ。久し振りじゃねぇか」
「そうだな。一週間ぶりだな。あっ、そう言えば仮身分証のお金払うよ」
「お、そうだったな。門の前にある装置にかざしてくれればいいぞ」
「わかった。サンキュ。そう言えばあの三頭の魔熊はどうなったんだ?」
「ああ、ギルドの緊急依頼で片付けてもらったぞ」
「緊急依頼って何だ?」
「ん、なんだよ説明受けてねぇのか。しょうがねぇな。依頼には七種類ある。討伐、捕獲、採取、護衛、に常時、緊急、指名の七種類だ。
四つはわかるだろう。常時はカウンターで受注する必要がない。特定のモンスターを倒すだけで報酬がもらえる。緊急はランク5以上の冒険者に参加義務がある。断ることはできない。指名は依頼者に指名される依頼だ。断ることはできる。権力のある依頼者の指名は金払いはいいが、断ると厄介だから受けておいた方がいい。ざっとこんなもんだな」
「わかった。ありがとう。バリス」
「おう。いつでも頼りにしていいぞ」
「おっ、さすがバリスさん。器が大きいねぇ」
「嬉しいけど恥ずかしいな。ほら、後ろが詰まってる。早いとこ行ってこい」
「おう、じゃあまた」
「気を付けろよ」
俺は北門を後にした。
今回受けたのはランク9のジャイアントスパイダー10匹の討伐だ。討伐数は倒すとギルドカードにカウントされる。便利過ぎる。この世界の人々は楽でいいよな。アイテムはアイテム欄に入るし、お金はカード決済みたいなものだし。
でも、やっぱり俺が一番楽だよね。メニューのアイテム欄には500種類の物が100個ずつ入るからね。他の人達は5種類の物が10個ずつしか入らないらしい。勿論マップなんて便利な物もないし、詳細確認も不可能だ。
ジャイアントスパイダーは体長80㎝でタランチュラがそのまま大きくなったような奴だな。毒はないが、素早い動きと鋭い口の鎌が厄介だ。ランク9のモンスターは本来、ギルドランク10の俺が討伐依頼を受けることはできない。何故俺が受けちゃっているのかというと、エリカが寝ぼけている内に依頼を受けたからだ。これは従業員のミスで俺は全く悪くない。ギルドは俺が依頼を達成すれば直ぐにでもランクは上げるしかないし、報酬も払われる一石二鳥だ。
目的の森に着いたようだ。
この森は始まりの森と呼ばれる新人冒険者の訓練にピッタリな森なんだ。
出てくる魔物は弱くて最高でもランク8だ。新人冒険者が運悪く魔熊に鉢合わせし、殺されるなんてよく聞く。魔熊はあんな強いのにランク8とかおかしいと思う。ランク7に上がるには魔熊を倒すのが条件だそうだ。魔熊を何匹も倒した熊キラーの俺をランク7に上げて欲しいものだな。多分エリカに言っても信じないと思うけどな。だって残念イケメンだもの。
俺はダークナイトの召喚を試したくなったのでコードを打つことにした。
打ち終わると目の前に黒と金に輝く魔方陣が浮かび上がり、俯いた状態のダークナイトが現れる。
メニューに『ランク3 ダークナイトを従魔にしますか? Yes or No 』と表示された。ここでNoを選ぶとそこらにいる魔物と同じになり、襲ってくる。これを利用したのが北門での魔熊だ。
俺は間違えないように慎重にYesを選択した。
するとダークナイトの赤く灯っていた目が青色に変わり、鎧の部分に大きく魔方陣が書き込まれた。この魔方陣は従魔である証明になるらしい。
ダークナイトの外見は黒い全身鎧で、隙間から中を見てもただ闇があるだけで肉体はない。目の部分だけ青い光が灯っている。体から不思議な黒いもやが上がっていて、不気味さとかっこよさがある。
右手にはダークナイトの直剣が握られていて、リーチはとても長い。左手には上半身を隠せる位の大きな盾を持っている。
ステータスはどうなんだろう。
ステータス
名前 ダークナイト
種族 人型魔物
性別 -
年齢 -
レベル 3600 next 5000000
攻撃力 1億3000万
防御力 1億3000万
魔力 1億3000万
生命力 即死以外無効
体力 1億5800万
俊敏 1億4500万
筋力 1億4500万
スキル
ランク3
武器形態変化
魔力切断強化
魔力ドレイン
絶対防御
ランク1
黒魔法
ランク無し
ダークオーラ
影移動
装備
ランク3
ダークナイトの直剣
ダークナイトの盾
ダークナイトの全身鎧
強すぎたろ!何で俺がこんなやつ倒してんだ!絶対序盤に出てこないラスボス級じゃん。即死以外無効とかえげつないな。
ダークオーラはステータス値を全て5倍にするぶっ壊れスキルで、影移動はダークナイトの体が黒いもやになり、高速移動が可能になる。俊敏が馬鹿みたいに高いんだからこれを使う必要性を全く感じないのだが。
俺が働かなくてもこいつに依頼やらせれば遊んで暮らせるじゃん。
まぁ、それじゃつまんないから働くけど。
「主よ、我は主にどこまでもついて行く。どんな敵でも我がこの剣で切り殺してくれよう」
あ、話せたんだ。何気に物騒な事いってて怖いんですけど。
「ああ、よろしく頼んだ。貴様にはしっかりと働いてもらう」
「御意」
「じゃあ早速ジャイアントスパイダーを10匹討伐してくれ 」
「御意」
ダークナイトが返事した瞬間にもやになってその場にはもういなくなっていた。僅か30秒で直剣に串刺しにした10匹のジャイアントスパイダーと共にダークナイトが目の前にいた。
ダークナイトがジャイアントスパイダーを空中に放り剣を振った瞬間に細切れになる。
それと同時に討伐数が10になりクエスト完了となった。
「ご、ご苦労」
「ありがたき幸せ」
こいつマジで強いな。