チート有効にする
どうもチキンソルジャーです。テンプレ物にも手を出して見ました。評価、コメント、感想、レビュー待ってます!
心地よい緑の香りがする風が俺の頬を撫でる。ゆっくりと目を開けると、そこは春を感じさせる緑の葉を茂らせ、生き生きとした木々が森を飾り、風にさわさわと音をたてながら枝を揺らしている。鳥のさえずりと枝の揺れる音、微かに聞こえる水音だけが聞こえてくる。
ふと、我に帰り、ここに来た経緯を思い出す。
「確かゲームの実験を始めた直後に異常が発生したな。でも、何も異常は今のところ見当たらないが」
俺は異常を見つける為に五感の確認をすることにした。
「先ずは触覚はどうかな?」
目の前にある木に手で触れる。現実と何ら変わらない感触が手に伝わる。
「触覚は異常無し。さて、聴覚は聞こえているから問題は無しだな。視覚も問題なし。臭いも嗅げるし、後は味覚か。」
目の前にあったリンゴに似た木の実を木によじ登り採る。木の実をハンカチで拭いてからかじりつく。
「不味くは無いが、酸っぱいな」
この木の実の味が本当にこの味なのかわからないが味覚はあるのはわかった。
「五感はしっかりと機能しているし、異常は無さそうだな。異常がわからないからステータスを確認して、一応安全の為にゲームからログアウトしよう」
「ステータス」
俺の目の前に半透明な板が浮かび上がった。
「おお!これがステータスか。かっこいいじゃないか」
ステータス
名前 ソウイチ カンダ
種族 人間
性別 男
年齢 28
レベル 0 Next 5
攻撃力 10
防御力 3
魔力 2
生命力 50
体力 50
俊敏 9
筋力 5
スキル
ランク無しナノマシン治療
不老
ゲームメニュー
装備
ランク無し
高級スーツ ヘッドフォン
革靴
「あれ?スキルにナノマシン治療なんて何であるんだ?それに不老なんて現実世界と同じじゃないか」
「まさか異常って」
異常について察しがついてきたところでそいつは襲ってきた。
「ガウ!」
「痛っ!」
足に傷を負い血を流す。やはりこれは
「これはゲームじゃない!現実だ!」
俺はこの化け物をぶん殴り怯ませてから距離をおく。
足の痛みが直ぐに引く。ナノマシンの治療の効果のようだ。
「ナノマシンが無ければ動けずに死んでいたな」
ゲームメニューの設定にアドバイスモードが有ったはずだ。これはマップと情報を表示する便利なシステムだ。
見た目狼の化け物から目を離さず、メニューを開きアドバイスモードにチェックを入れる。それと同時に狼の周りにステータスが表示される。
ステータス
名前 無し
種族 フォーリンウルフ
性別 オス
年齢 1
レベル 7 Next 50
攻撃力 18
防御力 20
魔力 10
生命力 45
体力 40
俊敏 25
筋力 25
スキル
ランク8 噛み付き強化
ランク8 スラッシュ
ワンちゃん強くね?詰んでるじゃん。これは逃げるしか無いな。投げて怯ませてから逃げよう。
目の前に落ちている手頃な石を拾う。狼は此方を鋭い目付きで動きを見ている。俺は歯を食い縛り力一杯に投げ、後ろを振り返らずただひたすらに走った。俊敏は狼の方が圧倒的に速く追い付かれるのは時間の問題だ。森の中を右も左もわからず俺はひたすら走り続けた。しかし、体力の限界が来た。膝に手を付き立ち止まり荒く呼吸する。狼は執念深く俺を追いかけ回し遂に俺を追い詰めた。口からは涎を垂らして、餌を前にした犬のような顔つきをしている。
俺が疲れているのを見計らい飛び付いて来た。咄嗟に左へ回避したがそこは急な斜面になっていた。気付いた時は既に遅く、足を踏み外し滑り落ちていた。
「何でこんな目に遇わなければいけないんだ!」
地面に広がる緑の絨毯が滑る速度を加速させる。木々の隙間を冷や汗をかきながらすり抜け斜面を滑る。
滑っている最中にゴブリンらしき生物が斜面を登っていた。このコースは間違いなくぶつかる。
「うわぁーーーーーー!」
「グギャーーーーーー!」
ゴブリンを思わず手に抱えこみ運命共同体になってしまった。
「すまない。ゴブリンよ死ぬときは一緒だ」
「グギャギャギャギャギャー」
多分離せと叫んでいるのだろうが、俺は死にたくないのでクッションになってもらうゴブリン君を絶対に離すわけにはいかないと手に力を込める。ゴブリン君は足と手をばたつかせ、俺から逃げようと必死だ。だが、現実は厳しく目の前にはもう終点が見えている。
そして洞窟に俺達は猛スピードで突っ込んで行った。
「助かったー」
ゴブリン君の体をクッションにして、俺は助かった。だが、彼はグシャグシャに潰れてしまった。
「ありがとう。ゴブリン君のおかけで助かったよ」
ふと、ゴブリン君が持っていただろう棍棒に俺は気付く。
「もう、君には必要ない物だ。だから貰っておくぜ」
俺は彼から棍棒を取り上げ一応ぶん殴って楽にしてあげた。敵だが助けてもらったのだ。感謝を忘れてはいけない。俺は感謝の言葉をもう一度述べた。
「ありがとう。君に会えてよかった」
感謝を述べ、立ち去ろうと後ろを振り返ると巨大な熊が此方を見ていた。
「ギャーーーー!」
「グァーーーー!」
俺の悲鳴と熊の威嚇が洞窟に響き渡った。
もしかして、もしかしなくても熊の巣だったのか。ヤバイ。狼に負ける俺が熊に勝てるわけがない。でも、どうにかここから逃げたい。その為に俺の腕を一本、二本をくれてやっても良い。
俺はゆっくりと熊の目を見て、後ろに下がる。ゴブリン君の肉を熊に投げる。
熊は投げられた肉を器用に両手でキャッチして貪り喰らう。
「グァァ!」
肉を食べ、食欲が出たらしい。俺の後ろのゴブリン君に目をギラギラさせじっと見ている。
その前に俺がいるためゴブリン君は俺の獲物だと思っているのだろう、寄越せと言わんばかりに腕を上げ威嚇してくる。
これはゴブリン君の肉が尽きたときが最後、俺も殺られる! 俺はゴブリン君を出来るだけ遠くに投げて時間を稼ぎ、洞窟の奥にもうひとつの出口があることに賭けることにした。幸い、奥から風が吹いてくるので穴があるのは確定している。問題は通れるかだ。これは俺の運の良さに賭けるしかない。
血が着くがそんなのを気にせずにゴブリン君の腕を引きちぎり、本気で投げる。それを見た熊が息を荒くして、取りに走っていく。ゴブリン君の頭を棍棒で野球の様に思いっきりスイングして飛ばした。頭が地面に落ちることを確認すること無く洞窟の奥へ奥へ走っていく。
中は暗いが暫く走ると遠くの方にポツンと光が見えてきた。そう、出口だ。
「やった!出口だ!」
だが、幸運は続かなかった。奥にもう一頭の熊がいたのだ。
「えっ!嘘だろ、そんなのありかよ!」
俺に気付くと一目散に駆けてくる。そして、俺の目の前に来ると、鋭い爪を延ばした丸太の様な太い腕を俺に振るう。俺は避けられずに腹から首を浅く切り裂かれ吹き飛ぶ。俺は余りの苦痛に声が出せなかった。俺は倒れても地面を這いずり出口に手を伸ばす。その腕を熊は鋭い爪で切り飛ばし、貪り喰う。
「ぎぃぃぃ!」
今まで経験したことの無いような苦痛に襲われ地面でのたうち回る。
熊は腕を食べ終えると、俺の足を噛み千切る。
「あぁぁぁ!」
「痛い!痛い!痛い!痛い!誰か、誰か助けて!」
ああ、駄目だ。こんな所に人がいるわけが無い。
力が欲しい。こいつを圧倒できる力が欲しい。
「俺に力があれば!」
俺は最後の力を振り絞りこの理不尽の塊にヘッドフォンで殴り付けた。熊はそれにイラつき俺を殴り飛ばした。
俺とヘッドフォンが地面に叩き付けられる。するとその時ヘッドフォンから音楽ではなく何かが漏れ聞こえてきた。
『1125369888JE564』とこれが何度も繰り返されて流れている。それと同時に俺の視界に新しい表示が増えていた。そこには文字を入力するだろう欄があり、キーボードも展開されている。俺は苦痛に負け、手が動かせず、キーボードを操作できなかった。だが、声は出せる。このパスコードの様なものを声で入力するしか選択肢は残されていなかった。
「1125369888JE564!」
だが、何も起きなかった。
熊は俺が叫んだことに苛立ち、止めをさすことにしたらしい。俺の顔に向かって手を振りかざした。しかし、熊の手は俺に触れることは無かった。
不思議に思い、熊を見ると頭が無くなり、地面に横たわっていた。
「は?」
俺は助かったことに安堵とこの不思議な現象に首を傾げる。
その時、ゲームの様なレベルアップ音が鳴る。俺は慌ててステータスを確認する。
ステータス
名前 ソウイチ カンダ
種族 人間
性別 男
年齢 28
レベル 20 Next 1500
攻撃力 150
防御力 125
魔力 100
生命力 150
体力 250
俊敏 150
筋力 180
スキル
ランク無し ナノマシン治療
不老
ゲームメニュー
チート
ランク0 頭チル
装備
ランク無し 高級スーツ
ヘッドフォン
革靴
「これは!」
チートの枠が新しく増えている。熊の頭が無くなったのは『頭チル』が明らかに作用したのがわかる。
チート、これはゲームではご法度だ。だが、現実はどうだろう?現実ではチートの様な存在が五万といる。そして、俺がいるのは現実だ。全てが力で決まる世界で、俺は最強の力を手に入れた。これが意味するのは、俺がこの世界でも楽に生きていけるということだ。
「これで快適な社長ライフも続けられるぞ!」
もとの世界との違いは、頭ではなく力で成り上がるということだけだ。ナノマシン商業より何千倍も楽だな。
先ずはチートの能力と一番気になるのがこのヘッドフォンだ。
メニューで知りたいことを目で見れば自動で表示される。チートの『頭チル』を見ると、出たっ!
チート
頭チル…敵が所有者を攻撃しようとした場合、如何なる敵でも必殺される。オンオフ可能。このチートは壮一が打ち込んだコードにより取得された。
やはりコードが流れてきたヘッドフォンに秘密が有りそうだ。
ヘッドフォン…この世界に存在しない未知の物体。異世界では音楽が聞けたが、強い衝撃を受け聞けなくなっている。この世界と異世界に転移する際、原因不明の現象が起こり、チートを得るためのコードを聴ける様になった。欲しいチートを望めばチート取得を可能にするコードが音声でこのヘッドフォンを通して所有者に伝えられる。
「やっぱりヘッドフォンか。それに、この説明を見ると、異世界に転移したことが改めてわかるな」
メニューのアイテム欄が光っていることに俺は気付いた。タッチして確認して見ると、四つのアイテムが追加されていた。
ランク8魔熊の肉×1 ランク8魔石×1 スキルコードランク5×2 ランク8魔熊の爪×3
アイテムを確認し、熊の方を見ると跡形も無くなっていた。不思議な現象だ。
スキルコードのカードを見てみると、チートコードの様な数字と文字が並んでいた。だが、書かれているコードはたった五文字だった。これはチートが特別だから文字が多かったのだろうか?
ランクはどうやらレア度を表しているらしい。数字が小さいほどレアで、最低ランクが10で、最高ランクは1らしい。俺のチートはランク0か。さすがチートだ。
いつまでも洞窟にいても何もないし人里を目指すかな。
「ここにいても何も進まないな。せめて人がいるところに行こう!」
こうして俺は洞窟を出た。
テンプレは差別化が難しいですね。ネタが在りませぬ。