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ドルイユ・ロスチャイルド。

それが僕の父親の名前だ。母親はいない。


あ―…ちょっと誤解があるといけないけど、別に特殊事情で母がいなくなったとかじゃないよ。

僕の母親は、僕を生んで数日後に亡くなったそうだ。

もともとあまり身体の丈夫な人ではなかったらしく、兄を生んだ時にもう一人産むのは困難だと医者から言われていたらしい。

しかし、母は二人目…つまり僕を生むことを決意して…結果、他界したらしい。

流石に僕も自我を持ったのは、生まれて1か月くらいは経ってからだったから、母のことは覚えていない。

兄曰く、とても優しい人だったらしい。


おっと、父の話をしているんだった。

で、現当主にして僕の父、ドレイユ・ロスチャイルドは、見た目…ちょー怖い!

がっしりした身体つきに高身長、堀の深い顔。

ドイツ人のイケメンって感じ。


ロスチャイルド家は、あまり細かいことを気にしない家だけれど、夕食はみんなで取るのがルール。

貧乏貴族ではあるけれど、食材に困ったことはあまりない。

ちょっと固いけどパンもあるし、パスタみたいな面、おかゆのようなポリッジという主食もある。

野菜もスープなどに入っている。

ただ、この世界では食用肉というのは穀物や野菜と違って高級品。

一応、豚や鶏といった家畜もいるけれど、かなり有限だから一匹を加工しておいて何日もかけて食べるのが普通だ。

ちなみに、牛肉は一般的じゃない。放牧って投資が必要だから、超お金持ちな貴族だけしか食べられないのさ。


「レイ、今日は何をして過ごした?」


食事は一日二食が普通で、夜はやや軽い食事メニューになっている。

本来上流階級は肉体労働をしなくても良い立場なので、かなり軽い食事をするのがステータスらしいが、うちは農夫と一緒に作業をしたりするので、ちょっと重めらしい。

ちなみに本日の夜は野菜のスープと干し肉のソテー、ポリッジだ。

僕はスープの中にある野菜を、僕専用の少し小さなスプーンで懸命にすくっていたら、父が話しかけてきた。

どうやら兄さんの報告が終わったらしい。


「えっと…本を、よみました」


まだたどたどしい発音でそういうと、兄さんがこちらを向いた。


「へー、どんな本?」

「えっと、ファロイスものがたり?」

「ファーロス、だね。でもあれは、読めたものじゃなかったはずだけど?」


兄さんは苦笑した。

そう!読めたものじゃなかった!虫食いすぎる物語なんて、わけがわからないもんね。

僕がこくこくと頷くと、父はため息をついた。


「レイ。スプーンを置きなさい」

「あ…ごめんなしゃい」


どうやら頷いた拍子に手が動いて、スープをびちゃびちゃと周りに飛ばしてしまったらしい。

貴重な栄養分が~!

くすん…。


くすくすと笑いながら、兄さんは僕のテーブル周辺を拭いてくれる。

本来なら、メイドの仕事なのだけれど、食事の時は僕ら三人で食事をするので、メイドやデューグはいない。

彼らも食事をとる時間が必要だからね。


「しかし、レイは文字を覚えるのが早いな」

「本当に。僕なんてファーロス物語を読み始めたのは2年くらい前なのに」


兄のアダンは僕よりも5歳年上の7歳だ。

神童とか言われているらしく、5歳のころから執事のアガフォンが家庭教師をしている。

流石長男。色々と当主になるための準備は幼いころから始まっているんだね。

大変だなぁ。


「そのうち、レイも勉強見てもらうんですか?」

「…いや、アガフォンは執事の仕事とお前の勉強の両方で手いっぱいだからな」

「確かに忙しそうですからね…でも、ちょっともったいない気がします」


兄さん、僕はいいよ。

のんびり読書でもしながら文字と会話、歴史なんかは覚えるし。

計算とかは出来るし。

もう少し大きくなったら礼儀作法とかは少し教えてもらわなきゃいけないだろうけど、次男ですから、僕。


「………もう少し大きくなったら、シスターのところに通わせるか」


少し思案した父が、ぼそりと呟いた言葉に、僕はぴくんと反応した。

シスター…つまり、街!


「とうさま、僕。街に行けるの?」


目をキラキラさせて父を見つめると、父は苦笑して首を振った。


「今はまだ行けない。そうだな、アダンと同じ5歳になったら、考えよう」


つまり、3年後。うーん…遠いな。

僕はしょんぼりすると、スープを突いた。


「ねぇ、レイ。5歳になったら僕が街を案内してあげるよ」

「え、にいさまが?」


僕はきょとんとして、兄さんを見た。

すると、兄さんはにっこりと微笑みを浮かべた。

く…っ七歳のくせに、イケメンだから笑顔がまぶしい!


「うん、約束するよ。それまでに足腰をしっかり鍛えて、いっぱい街を見て回ろう」

「……うん!」


確かに、二歳児の僕はまだあまり激しい動きができない。

飛んだり跳ねたりできるけれど、走っても転ぶ。頭が重いせいで!

3年間の間にしっかり長距離歩けるようにならないと、せっかく街に出かけても、ついたころにはバテテしまいそうだ。

よし、三年間…読書だけじゃなく体力作りもしよう!


僕は鼻息荒く目標を定めると、父と兄さんは苦笑していた。

むむ…これは、だめだなぁとか思われているのかな!?

がんばりますよ、僕!


前世は運動とか苦手だったけど、一応ポップアップで苦手克服って書いてあったし。

出来るよね!

頑張ろう!







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