別視点 『それで私は』
『よおおおしの、『ザザッ』しゅうううううっ『ガガッ』いいいいいぃいいいい!
俺は絶対! 小説家になってやる『ピガガ』おおおおおお、っおおおおお『ブツン』
今日も放送が始まった。なんて、何気ない風に思っていると、いきなり、凄まじい爆音が学校中に鳴り響いた。あまりにも声が大きくて、音割れが酷くて、思わず耳を塞いでしまうほどの雑音だった。
思わず、ポカンとしてしまう。
昨日、吉野くんは私に言った。
明日、俺がお前とは違うってことを証明してみせる、と。
だから、何か凄いものを見せられたり、秘蔵の小説を読ませてくれたりするのかと思っていた。それが何で、こんな行動に飛躍しているのか。さっぱり分からない。
でも、証明の仕方は、とても綺麗だと思った。
誰一人、仲のいい友人にさえ言い出せなかった自分と、学校中に夢を叫ぶ吉野くん。もう、ぜんっぜん違う。
…………凄いな。
それにしても、こんな行動、吉野くんらしくない。いやいや、らしさを語れるほど吉野くんのことを知ってるわけじゃないし、そもそもこんな行動が似合う人が存在するのかという疑問もあるけど。
でも、何か、ここまでやってやろうという理由があったんだと思う。自分のために。
……そしてちょっぴり、私のために。
「やっぱり、変な人だなぁ」
変わった人だとは思っていた。
クラスで初めて目にした時も。
今も思っている。
宮永さんと付き合っていると聞いた時は、正直、どうしてと思った。でも、理由はあるのかもしれない。
彼はちょっとだけ、面白い変わり方をしているのかもしれない。
気が付くと、手を硬く握り締めていた。もうしばらく、ペンなんて握っていない手だ。
もしかすると、私は悔しいのかもしれない。
雨が止んで、雲の隙間から伸びた光が、窓から差し込んできた。
それで、私は。
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