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Variety of Lives Online ~猟師プレイのすすめ~  作者: 木下 龍貴
6章 プレイヤーイベントと中級猟師
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料理修行とキャンプの一夜

気付けば総合PVが200万を突破していました。これも皆様に読んでいただければこそです。

今後は時間を見付けてなるべくあげていきたいと思いますので、これからも拙作をよろしくお願いします。


≪料理スキルがLv6になりました。≫


 恐ろしいまでのパワーレベリング。銃弾分がひたすら赤字になっていくけどその分レベルがぐんぐんと上がっているな。

 このキャンプのうちに最低でも何か猟師飯風の汁物くらいは用意できるようになりたい。その一心で鍛えた結果だ。料理スキルのLvが6でようやく、野菜を混ぜた炒め物に成功したところだ。しかし、成功率は3割程度とまだまだあまりにも低い。

 せっかく以前に買ったタイア味噌、それに黒べえの依頼でいったウォーロンカで買った干しシェルジュ柱と干しビックシュリンプ片はいつになったら使える事やらという感じだが、それも追々だ。いや、明日こそはとは思うけども。

 とはいえ今日は昼過ぎからひたすら料理を続けていたのもあり、さすがに疲れも感じている。そこで、今日のレベリングはこの辺にしておこうと決め、調理器具の整備と周辺の片づけを早々に済ませてしまう事にした。

 片付けが終わり、改めてテントの周囲を見渡す。このあたりだとわざわざ泊まる必要性がないからだろう。周囲には数か所にテントが張ってあるだけだった。


「さて、あとはもう一つのイベントを始めるとするか」


 時刻は9時を越え、すでに森の中は静寂に包まれている。虫の鳴く声とたき火の爆ぜる音の他に、たまに聞こえるのはまだ狩りをしているプレイヤーの戦闘音くらいだ。

 マナウスを出る前にアイラから譲ってもらった水筒を取り出す。今更おかしな物を渡されるとも思えず特に中身を確認することもなく、一口飲んでみる。それは日本茶と紅茶の中間のような味わいの飲み物だった。アウトドアキャンプとあってどことなく高揚した気持ちを落ち着けてくれるような感覚がある。美味いな。

 香りも楽しみながらたき火の前に座り、星を眺めてみた。星々は瞬きながら輝き、時折流れてきた雲に隠れている。等級なども分かれているのだろう、大小色彩の様々な星が輝く夜空の景色はいつまでも眺めていられるような気がしてくる。

 図書館で調べれば、この世界における星座もわかるのだろう。リアルの星座すらそこまで詳しくないこともあって、こっちでも調べてはいない。しかしここでならアウトドアは簡単に出来る。これならいくつか調べてみるのも面白いかもしれない。

 ぼんやりと夜空を眺め、時間がたって初めて星が動いていることに気付いた。これまでの金策と討伐にむけた慌ただしい日々を思い返しながら、時間が静かに過ぎていく、こんな楽しみ方もありだなと感じる。


「あの、少しよろしいでしょうか?」


 ちょうど料理を終えそうな頃に戻ってきて、近くにテントを設置していたプレイヤーに声を掛けられた。

 全身を布と革装備で整えた男のプレイヤーだ。先程は弓を背負っていたはずなので恐らくアーチャーだったはずだ。その奥には、大柄の戦士風の男と小柄の少女、神官のような出で立ちの女性がいる。装備を見ると初心者のプレイヤーのように見えるな。


「ああ、構わないがどうかしたのか?」

「それが、今回初めてフレンドと泊りがけで狩りに来たんですけど食事の用意を忘れてしまって。さっき料理していたのを少し見てまして、良ければすこし買わせてもらえないかと…」


 どうやら泊りがけで来て料理の持ち込みを忘れてしまったプレイヤーだったようだ。確かインベントリに周囲に配った余りがあったはず。

 アイテムウインドウを出して確認をしていく。アイテムが全員が食べられそうなだけあることを確認してからアーチャーらしき男に向き直った。


「構わないよ。みたところ始めたばかりのプレイヤーかな。俺も料理のレベリングに来てたところだし、このくらいの料理でリールは受け取れないよ。足りるかはわからないけど、好きなだけ食べてくれればいいさ」


 そう言って、インベントリに入れてあった焼肉や炒め物を出していく。ついでに、掛ければ味にバリエーションの出る市販のソースもつけることにした。さすがに塩味だけだと味気なさすぎる。


「あ、ありがとうございます!よかった、これで明日も活動できます!あの、本当にリールはいらないんですか?」

「気にすることはない。俺も色んなプレイヤーに助けられながら遊んでいるんだし、何かを返そうと思うのなら、いつか出会う困っているプレイヤーを同じように助けてあげてくれればいい」

「わかりました!その時は必ず助けて、今みたいに次の誰かを助けていくように伝えてみます!」


 深々と礼をして、4人は料理を持って自分達のテントに戻って行った。

 たき火をぼんやりと眺めながら、ふと気になってちらりと視線をやると、たき火の前で楽しそうに料理を食べる4人が見えた。

 それを見てどうしてアイラが料理人プレイをしているのかが分かったような気がした。まだレベリング中の粗末な料理でも、ああして楽しんで食べてくれるのをみるとこちらまで嬉しくなってしまう。

 なんとなくだけど、あのパーティーはあっという間に俺より強くなるのだろうと思えた。実際に攻略組と呼ばれるプレイヤーになるには、長期にわたって確保する時間と効率的なプレイが必要になってくる。彼らがそこまでを目指しているのかもわからない。ただ、そんな想像を少しだけしてみるのも悪くはないだろう。


 アイラから貰ったお茶を飲みながらたき火が消えるまでぼんやりと過ごし、周囲のプレイヤーが火を消して世界が暗闇に包まれるとテントの中に入った。

 着替えを済ませて寝袋に入る。毛布も用意していたがこの気温なら必要なさそうだし、風邪をひく事もないだろう。


「本当にキャンプしてるみたいなんだな…」


 リアルを含めて、こうやって静かな時間を開発された都市部ではなく、自然に囲まれた環境で過ごしたのはいつぶりだろうか。そんな感慨を抱きながらも一応一度トイレに行くためにログアウトし、その日はポータルエリアで眠りについた。

 目覚めるとログアウトしていたなんてことはなく、しっかりとテントの中で目覚めた。寝袋での睡眠にも特に不具合はなく、すっきりと目覚めることが出来ている。これならVLO内で睡眠をとってそのまま出勤とかも出来そうだな。


「今日の予定はどうしようかな」


 テントの外に出るとそこには誰もおらず、まだ全員が眠っているようだ。朝の森特有の、この澄んでいて少し湿っている空気をしっかりと吸い込み、深呼吸をする。朝の森の空気を堪能しながらも欠伸が出る。時間を確認するとまだ日が昇って少し、5時50分だった。

 寝ぼけた頭を覚ますために濡らしたタオルで顔を拭き、多少すっきりしたところで予定を定めていく。重要なのは料理スキルのレベリング、新しい銃に慣れる事だろうか。初心者講習までにはもう少し慣れておきたいところだ。あとは…アランの背負箱の重さにももう少し慣れておきたい。要するに昨日と同じことをすればいいわけだ。


「とりあえず、リアルでの朝飯を先に済ませるか」


 こうしてキャンプ2日目はあっさりと始まった。やったことは初日と同じだ。ログアウトしての食事や休憩を挟みながら、VLOでは料理し、背負って移動し、撃って狩る。料理は昨日よりも色々と作れるようになったこともあってポータルエリアを訪れる初心者プレイヤーからは割と好評だった。

 そんな活動を夕方まで続け、スキルレベルはこうなっていた。


≪料理スキルがLv9になりました。≫


 これは目覚ましい進歩だ。二日続けて料理をしていればこうまでレベルが上がるとは。そして何より重要なのが、試行錯誤の末に作り上げたこの一品だった。


≪ジェイルとメリバのボア汁 レア度1 重量3≫

満腹度回復:小

 マナウス周辺の食材を用いて作られたスープ。ボアの肢肉を使ったことで野生的な味わいに仕上がっている。タイア味噌の使用により味わい深くなった一品。

製作者:カイ


 そう。ついに俺はボア肉のスープを完成させた。メリバはおやっさんの店で買った玉ねぎのような野菜である。メリバ以外を入れると失敗するから、本格的な豚汁に仕上げるのはもっとレベルが上がってからだな。味は改良の余地ありではあるが、それでも十分に美味いと思える味に仕上がっていた。

 一応何人かの初心者プレイヤーに試食してもらい、美味いとの評価を貰うことができた。当然その中には昨夜に出会った4人組も含まれている。彼らも良い狩りができたそうでなによりだ。

 こうして俺の2日間に渡るキャンプ兼料理修行は終えることとなった。

 片づけを済ませてマナウスに戻ったのは午後7時頃、その後は訓練場でセルグ・レオンの射撃訓練をすこしだけ。初心者講習は来週末、その時に初心者から見て残念な猟師とならないように努力しなくては。


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