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Variety of Lives Online ~猟師プレイのすすめ~  作者: 木下 龍貴
3章 イベントは生産職とともに
37/102

報酬と打ち上げ

8月11日、午前8時頃までに読んでくださった方、申し訳ありません。

一話分抜けて投稿していました。

抜けていた分を投稿しましたので、そちらから再度読んでいただければと思います。

 ふむ、やっぱこのうさぎ肉のミニハンバーグは素晴らしいな。いや、このバイソン肉のから揚げもいける。そうなるとこっちの煮っ転がしも捨てがたい。俺は話もそこそこにひたすら料理の数々を平らげていった。俺が作り方を伝えた串あげも好評のようで何よりだ。合わせて10人のパーティーだ、なんというかアットホームってのが一番しっくりくるな。初対面がほとんどいなかったというのもあって溶け込むのも早かったようだ。

 その中でセントエルモの最後の1人、ヒーラーのミリエルとも言葉を交わした。金髪の髪を結いあげた大人しそうな彼女はとても口下手らしく、こちらからの質問にも言葉少なに返すだけだった。なんというか人見知りのあった東雲とは違って本当に苦手なんだろう。まあその辺は今後も付き合いがあるだろうしいずれは打ち解けるときも来るってことでそっとしとくことにした。

 宴も進み、周りを見てみると富士や東雲、ヨーシャンクに錦が今回のモンスターについて話していた。楓とアイラ、ミリエルは料理について話しているようだ。アキラと鉄心は何やら装備について相談している。

 それを尻目に俺はひとしきり料理を堪能し、満腹感と満足感を得て富士の所に合流した。どうやら富士達が倒した大物の話をしていたようだ。


「つまり、ビッグレオの武器は爪と牙のみではなかったということか?」

「何て言えばいいんだろうな。確かにそれもヤバかったんだけどさ、それよりも無駄に長い尻尾を鞭の代わりに使われたときの方が被害がでかかったな。全滅しかけたし」

「一応補足しておくが、爪と牙に関しては慣れれば予備動作を見て対応ができていたのだ。それに比べて攻撃力は劣るが不規則かつ予備動作なし、さらにはそれを高速で繰りかえす尾の方が対応ができなったというわけだな」

「もう少し戦い続ければ捌けそうでしたけどね」

「それは東雲おまえだけだろ」


 簡単にしか聞いてないが、なんて恐ろしい敵だ。さすがに今回の大物の一匹ってだけはあるな。その後、俺の方の大物についても話して互いに大概にしろと罵り合い、鉄心達のギルド設立の話も終わった頃にロビーの中央に置いてあった水晶が輝いた。


「ついにきたか。さあ、みんな静かにしてくれ。始まるぞ」


 それはイベント後にプレイヤーに配布されたアイテムで、要は離れていてもイベントの結果からパーティーの功績、果ては全体の順位まで、あらゆることがわかるってアイテムらしい。イベント限定のスピーカー兼成績表ってところか。

 別に離れていても聞こえるんだけど、気になるのか全員がロビーの中央に集まってきた。さあ、俺の秘蔵アイテムを放出する準備はできている。始めたまえ。


「冒険者諸君、かなりの時間を待たせてしまって済まないな。我が名は騎士マルクト・ヴェルネイである。我は領主の言葉を代弁する者なり。これより、今回の探索の概要と功績について述べさせてもらう。しかし、まずは今回の探索では多くの冒険者が有志として参加してくれたことで見事成功を収めることが出来た事について礼を述べさせてもらいたい」


 その後も自身の言葉としてや領主からの言葉が述べられたが、周りはそれよりも自分達の功績と報酬が気になるみたいだ。俺としてはこういうのも興味あるんだけどな。この騎士にしてもこうして冒険者向けに話しているってことはかなりの地位にあるんだろうし、その話し方でこっちへの信頼度とか好感度が透けて見えるかもしれない。それにもしかしたら冒険者対応の専門の騎士として今後も付き合いがあるかもしれないし。領主の言葉についても同じだな、文面は作られた物って言ってしまえばそれまでだし、このスピーチだって原稿を読んでるだけって言う人も多そうだ。それでもこういうのから人柄がにじみ出るって俺は考えてる。


「さて、謝意を示すのはこのあたりとして本題に入ろうか。今回の探索は大きく分けて3つのエリアに分かれていた。北の森、貿易都市マナウス内、南の平原だ。北は盗賊団のサンブレード、マナウスと南はゴブリンが関わっていた。流れとしては3か所ともに変わらず、拠点を探して敵を撃退するという流れとなった。詳細については諸君らの水晶で確認が出来るようにしてあるのでそちらで確認をしてほしい」


 それを聞いて富士が水晶に手をかざすと大きなウインドウがその上に現れた。それにはエリア別に全プレイヤーが受けたクエストの種類や達成回数が載っていた。中には達成人数1人のクエストもちらほらと見つけることが出来る。


「お、ビッグレオ討伐は19組いたのか。これって結構少ないよな」

「総司令部補佐は3組か。錦は随分と貴重な体験をしたのだな」

「糧食製作って結構いたと思うんだけどなぁ、198組って少なくない?」

「あ、イベント装備製作ってクエスト扱いなんだ。カイの作っといて良かったよ」


 それぞれが自分の関わったクエストについて話し合っている。こうなることがわかっていたのだろう。騎士は沈黙を続けていた。たっぷりと5分は経っただろうか。再び口を開くと全員が耳を傾けた。


「さて、あらましは確認ができただろうか。細かくは後ほど確認してほしい。それでは今回の探索の総評であるが、結論としては我等マナウス騎士団は南北の勢力が協力関係にあったと考えている。互いが独立しており時期が重なったのは偶然という見方もできるが、南北の戦力投入のタイミングやその戦力内容を考えると協力体制にあるのは明白だ。更には今回の戦闘で敵の勢力を削ぐことはできたが、滅するには遠いとも考えている。よって騎士団は今後もゲートの探索と今回のモンスターの生息地を調べていくこととなる。しばらくの間はその結果を待ってもらう他ないが、冒険者諸君は来るべき時の為により一層の鍛錬と広域の探索を希望する。以上だ」


 あれ、なんかいい感じで閉まってしまったかもしれない。周りも同じ気持ちなのか腑に落ちない顔や不満そうな顔をしている。そりゃそうだよな。いつでも確認できるからって功績や報酬も水晶経由ってのは味気なさすぎる。


「ふふ、今頃冒険者諸君は不満でやるせない表情をしているのだろうが、案ずるな。それはこれからだ。本当は総評の前に伝えるはずだったのだが私も悪戯をしてみたくなってな、許してほしい」


 隣りから盛大なつっこみが聞こえてるけど、多分今頃全プレイヤー総つっこみっていうおかしなことになってるんだろうな。しかしこのおっさんお茶目すぎだろ。掲示板とか面白いことになってそうだから後で確認してみよう。


「では、水晶のクエスト詳細を見てほしい。その中にパーティーでこなしたクエストがあるはずだ。そこのクエスト名の最初に数字が記載されているが、それがクエスト達成における功績度を示している。それらの合計が一番下に合計功績度として載っている。それが今回の諸君の功績という訳だ。次のページには功績に応じた報酬内容が載っているので、それも合わせて確認してほしい。報酬の受け渡しはマナウスの広場にて行うので早めに取りに来てほしい」


 自然とパーティー同士で集まって功績を眺めることになった。こうしてみると、戦闘系は大物を討伐すれば見返りがでかくて、生産系はコツコツと積み上げていくって感じがするな。探索系についてはその中間ってところか。まあ南のゲート発見はかなりのポイントになってるけど。


「こうしてみるとカイのポイントが大きいかな」

「そうだね、本当に誘ってくれて感謝だよ」

「いや、戦闘も探索もパーティーのサポートがなければ達成できてないんだ。組んでなきゃこんなの無理だよ」

「そうはいってもさ、私達からしたら参加できたのはやっぱり楽しかったよね」


 話しながら功績について見ていくと気になるものがあった。鉄心達も気になってみたいなんだけど、まずはクエスト達成の詳細からだな。こんな感じになっている


【戦闘系クエスト】

200p  輸送員の護衛

8p    クエスト外討伐・ハイランドラット 2匹

7p    クエスト外討伐・ゴブリン 1体

30p   クエスト外討伐・ステップウルフ 6頭

600p  緊急討伐依頼・牙狼 3頭

2700p 突発遭遇討伐・キャプテングリズリー


【探索系クエスト】

300p  マナウスの森の調査 2回

1000p 最前線のモンスター発生源の調査


【生産系クエスト】

●料理

150p  兵糧補給計画・おにぎり

200p  兵糧補給計画・豚汁

450p  第1拠点:兵糧補給計画・シチュー

1200p 第3拠点:マナウス騎士団のメニューを再現せよ 2回

650p  第3拠点:最前線の胃の腑を支える者

●細工

300p  予備防具製作・皮革 2回

480p  第1拠点:武具耐久回復アイテムの納品・皮革

650p  第3拠点:特殊兵器の部品納品・皮革

●調合

330p  第1拠点:ポーション納品

●鍛冶

300p  武器鍛錬・補修 2回

550p  イベント武器製作・銃

430p  第1拠点:武具耐久回復アイテムの納品・金属

650p  第3拠点:特殊兵器の製造納品・金属

1100p 第3拠点:最前線の鋼を鍛える者 2回

●配達

213p  前線への物資補給・重量C

188p  前線への物資補給・重量E

168p  前線への物資補給・重量F


【シークレットクエスト】

450p  サンブレード砦の発見

300p  サンブレード砦の規模調査

550p  食料盗難事件の解決

1100p 作戦本部への助力


【累計功績度】

15254p


 気になるのは戦闘系の一番下だ。キャプテングリズリー討伐が入ってる。それも結構なポイントだ。これは嬉しい誤算だな。他のパーティーのポイントが分からないけどこれは結構な物なんじゃないだろうか。期待感をもってページをめくると、様々な報酬が載っていた。


【獲得基本報酬】

15万リール、黒鋼の裁断バサミ、黒鋼の大鍋、白洋砥石×5、上質耐熱煉瓦×100、青い炎×10、狼魔鋼の鉄インゴット×4、上質鉄のインゴット×8、巨大獅子の皮×5、森熊頭の皮×5、森熊頭の上質肉×5、巨大獅子の三枚肉×2、チジットの実×20、タルム油×20、通常弾丸×180、黒色火薬×50


 報酬を確認して最初に上がったのは生産職クラフターの喝采だった。これだけの素材があればかなりのアイテムを作ることが出来る。相当のレベルアップも望めるんだろう。


「なあ鉄心、この狼魔鋼の鉄インゴットってゲームオリジナルの金属なのか?」

「カイは知らないの?インゴットにモンスターの魔核を合わせて鍛えたら出来るんだ。はっきり言ってグレードが上でもただの金属ならこっちの方が性能で上回る可能性があるんだ。俺からしたら夢の金属だよ!」


 なるほど、いつかは俺も魔鋼素材を使った銃を作ってもらいたいもんだな。ただ、鉄心とアイラの喜びは実はそこではなかったらしい。


「ねえ、鉄心は65個あれば足りるよね、そうだよね。残りは私がもらっていいんだよね?」

「いや、できれば80個貰えると本当にありがた…」

「絶対無理、これだけは無理!」


 それを見て錦は楽しげに笑っている。この辺はやっぱり大人って感じがするな。まあ今回は欲しい素材で被ることがなかったからってのもありそうだけど。俺としてはほぼ使い切った通常弾丸といずれ必要になりそうな黒色火薬を貰えれば大収穫だな。後はチジットの実とタルム油を少量貰えれば料理の幅も広がって御の字だ。

 後ろから突然大きな歓声が上がった。どうやら富士達もアイテムの確認を始めたらしい。すぐにどんな装備を作るか楽しそうに話す声が聞こえてくる。


「さて、まだ終わりではないので確認をしてほしい。今回の探索での功績には序列がある。それを一位から十位、それ以下は一定の範囲毎に報酬を用意してある。それ以外にも特殊な依頼を遂行した場合には別途報酬があるはずだ」


 そう言われて報酬のページをめくると、そこには短くこのように載っていた。


《貴方のパーティーの順位は769位です。報酬を確認してください》

《希少探索クエストの達成報酬があります。報酬を確認してください》


順位報酬

蒼鉄の欠片×10、技能石×4、護法のイヤリング×4、


希少クエスト報酬

静者の証×1、静者の瞳×1、知恵者のイヤリング×1、マナウス市民からの感謝状×4


 順位報酬の方置いておくとして、希少クエスト報酬に関してはこれがどんなものなのかよくわからない。なんとなく隠密性が上がりそうって位か。証とかいつ必要になるんだよ。話し合った結果、アイテムはシークレットクエストをクリアした人がもらうべきという事に落ち着き、俺が静者の証と瞳を貰い、錦が知恵者のイヤリングを受け取った。感謝状については1人ずつ持つことにしてある。


 まあ、色々とあったけど、それでもみんなが嬉しそうなのはいいことだ。それは全員の笑顔に表れているし、俺としてもいい2日間だったって言える。

 そう、今日は誰が何と言おうと良い夜だ。イベントを最後までやり切った達成感と良いアイテムを得られた満足感、そしてその思いを共有できる仲間が揃っている。こういう時にこそ出すべきものってもんがある。


「よし、そっちも確認は終わったか?どっちも良い報酬を貰えたようで何よりだ。それで、だ。こんな時にはこういう良い物を食いたいと思わないか?」


 そういって取り出したのはあの闘牛王の舌とロースにホルモンだ。舌に関しては他にドロップがなかったようで富士達からも感嘆の溜息が上がった。まあ、素材は出すけど料理はアイラだからな?どう考えても俺より美味い物作ってくれるし。


「さっきまでのは前菜だ、こっからはアイラ特製の料理と焼肉でも始めようか」


 これで何度目かの歓声が上がり、アイラと楓がキッチンに消える。俺は火の準備だな。室内だし簡単なものだけどこれでようやくイベントも終了だ。運ばれる料理と焼肉に舌鼓を打ち、気付けば富士秘蔵の酒も開封されてにぎやかな夜は日が変わるまで続いた。

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