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Variety of Lives Online ~猟師プレイのすすめ~  作者: 木下 龍貴
3章 イベントは生産職とともに
27/102

クエストの行方

 気付いたらPVが50万を越えてました。これも読んでくれている方々あっての事です。ありがとうございます!

 というわけで感謝の意味も込めて、1話おいていきます。これからもVLOとカイの冒険をよろしくお願いします。


2話連続の投稿になっているため、読み飛ばしにご注意ください。

 森を大きく迂回して帰ったこともあって、マナウスに到着したのは夕日が沈みかけてからになってしまった。

 森の中は相変わらずの静けさではあった。その分周りを観察する余裕もあり、ホーンラビットの動きをよく見ておくように気を配っていた。

 そんな中で気になったのは、ホーンラビットの分布が昼よりも広がってきたように感じられることだ。クエストの報告もあるから、その時に一緒に伝えて騎士団の反応をみることになりそうだな。

 到着前に鉄心達と連絡を取ると、今は交代でクエストをこなしながらハイランドラットの移動網を把握している最中らしい。長時間の追跡でようやく逃走経路や拠点が分かってきたらしく、俺が報告を終えたらいつでも合流できるそうだ。

 広場のクエスト報告場所まで急ぐと、そこには前回と同じ兵士が待っていた。向こうも俺に気付くとにやりと笑みを浮かべる。


「お、君か。今度はどんな報告が聞けるかな」

「今回は前回の結果から拠点のようなものがないか予想し、泉の奥までホーンラビットを追って進みました。報告はこのメモとギルド証で確認してください。その後に質問を受けた方がいいかと」

「ふむ、先に聞いとくけど、モンスターには見つからずに完了したのかい?」

「泉の奥のいつもいるモンスターにあったんですけど、他は何とかなりました」


 さすがだ、と呟いてやり取りを終えると、兵士は真剣な表情で報告を見ている。途中から手に力が入ったのか、メモ用紙がひしゃげる場面が何度かあり、読み終えると大きく息を吐く。そのまま目を閉じて何やら考え事をしていたようだが、目を開けると静かに話し始めた。


「まずは報告をありがとう。まったく、このタイミングで厄介なことが起きたもんだ。いや、君のおかげで対処ができるからまだましだといえるか。結論から言うと、君が発見したのはサンブレードと呼ばれる盗賊崩れの一団のアジトだ。マナウスでの生活が立ちいかなくなり、盗賊に成り果てた者たちだな。落ちぶれた経緯もあって昔からマナウスを目の敵にしていた連中だ。ここ最近は大人しかったはずなんだが、奴等がこうまで活発に動いているとなると、南の異変とも何かしらの関わりはあるかもしれないな」

「なるほど。ちなみに南はどんな状況なんですか?」

「あっちは乱戦続きの膠着状態だ。3か所目の拠点は出来たがそれ以上は上位のモンスターがいるようで思うように進めていない。今は敵の攻勢が強まり、防戦に追われていると聞いている。そういう意味では、単独で見つかることなくここまでの情報を集められる君だ。そっちの敵の出所も探ってもらいたいところだな」


 少し話したことでようやく落ち着いてきたのか兵士の顔には笑顔も見られるようになってきた。

 それにしても南は膠着状態か。富士達もそうだけど、ミハエルとリュドミラもあっちに参加してるみたいだ。彼等には本当に頑張ってほしいところである。


「今度はこちらからいくつか聞きたいことがある。まずは敵の陣容からだ。≪調教≫持ちで確認できたのは3人とあるが、印象として他に存在していたと思うか?それと使役モンスターの規模は」

「えっと≪調教≫持ちの人数に対しては最低でも4人ってだけであとは正直わかりませんね。モンスターの詳細な数についても。ただ、モンスターの収納に使われるであろう檻がまとめて設置されている場所は見つけました。あれならホーンラビットが50から70匹位は収容できそうです」


 なんてこったと兵士が唸る。予想以上に長いやり取りに気になったのか、手の空いた兵士も周りで会話を聞き始めていた。


「そのほかの兵数は」

「砦の大きさだけなら200人くらいは入れそうでしたけど、見張りもかなり少なかったし、実際には半分いるかどうかってところじゃないですかね。ただ、俺はそこまで詳細に≪気配察知≫を使えません。なのでこの情報に確実とは言えないです」

「サンブレードの規模は300人前後と言われている。以前までの情報が確かなら今はまだ準備が整っていない可能性もあるか。もう一ついいだろうか、この正午と夕方の敵の索敵範囲が変わっているというのはどの程度だ」

「おおよそですけど、30メートルは前進してきていたように見えました。ある一定のラインを越えたら攻撃的になる、そのラインについては遭遇していないので何とも言えません。もしかしたら敵の警戒網も前進しているかもしれないとは感じています」


 周囲が騒めく。モンスターの発見に気を取られ、その動きを知る為の斥候は出しているにしても、二面に展開している敵の関連性、その目的やねらいについてはまだ探っている状態なんだから当然か。それに新たな拠点を作れない限りは防衛線の構築が今後も続くし余裕だってないんだろう。当然トップの方では色々と考えているんだろうけども。

 かく言う俺は錦から砦の可能性を聞くまではその存在を考えもしていなかった。そういう意味じゃ俺は情報を持っていても運用に難があったわけだ。やっぱり1人で参加しなくて良かった。


「ありがとう、もしかしたら追加で聴取があるかもしれないがその時は是非協力してほしい。私はこれから至急この情報を城の方たちにお届けしてくる。ここは任せるぞ」


 確認を終えると兵士は城までの道を駆けていった。残った兵士からやたらと注目されている気もするけど、これでクエストは完了したってことでいいだろう。お次はログの確認か。2回の潜伏中にかなりのアラートが鳴っていたけど、そんなに上がることしていただろうか。見てみるとおかしなことになっていた。


≪隠密スキルがレベル11になりました。≫

≪歩法スキルがレベル5になりました。技能ポイントを1取得しました。≫

≪気配察知スキルがレベル8になりました。≫

≪集中スキルがレベル7になりました。≫

≪敏捷強化スキルがレベル6になりました。≫

≪気配察知スキルがレベル9になりました。≫

≪歩法スキルがレベル6になりました。≫

≪集中スキルがレベル8になりました。≫

≪歩法スキルがレベル7になりました。≫

≪気配察知スキルがレベル10になりました。技能ポイントを1取得しました≫

≪歩法スキルがレベル8になりました。≫

≪隠密スキルがレベル12になりました。≫


 これはいったいどういう事だ、たったの半日の探索でここまでの成果が出るなんて。イベントだからなのか、敵のレベルや数に応じて経験値が変わることになるのか。この辺は今度時間があるときに錦かヨーシャンクにでも聞いてみることにするか。

 鉄心達に連絡をとり、夕食もかねていつぞやの酒場で集まることになった。余計な用事をいれてしまったこともあってかなり急いだんだけど、到着するとやっぱり3人が先に座っていた。

 流石は商人も兼ねているだけあるな、いつも俺より早く到着している。生産職クラフターではあるけど、同時に商人でもある。相手を待たせることはないようだ。


「お疲れ、遅くなった」

「気にするな、こうなったのも私からの提案を飲んでもらった形になるのだからな」

「いや、本当はあと30分は早く戻れたはずなんだけどな。ちょっと寄り道してしまって」

「いいんじゃない?私達も結構楽しくやってたし。犯人がモンスターだったのは予想外だったけど、探偵ごっこも楽しいよね」


 錦と鉄心が2人して頷いている。そう、俺もそっちには是非参加したかったんだよ。3人にはたっぷりと話してもらおうか。


「で、どうだったんだ?」

「ハイランドラットを見つけた経緯は日中に話したよね、あの後俺たちは何度も後を追ってたんだけど、あいつらは毎回同じ道を通って居なくなってるんだ。そこで1人は食糧庫から、もう1人は見失った場所で待ってそこから追跡するように作戦を変えたんだ。さすがに何の成果が出るかわからないクエストの為に全員が出ちゃまずいってことで、途中から1人はクエスト受けるようにしてたんだけどね」

「そうそう。どうなったのか知りたくて。全力でクエスト終わらせてたよ」


 なんかそっちの方が凄くパーティーで参加してる感があるな。俺ちょっと寂しさを感じ始めてきたぞ。そんな俺の心のうちは置いといて、錦はマナウスの地図を取り出した。赤く丸が囲まれているのが食糧庫、そこから線が伸びてかなり色々な場所を曲がった後に南の城壁からほど近い家にマークがついている。


「でだ、最終的にはマナウスの南側にある古びた家にたどり着いた。この家は最近は使われていない筈の家だそうだが、しばらく監視してるとハイランドラットが定期的に出入りしていた。これ以上は踏み込んでの戦闘も考えられたため、ここからはカイの帰還待ちってところで待機していた訳だ」

「クエストはそれぞれやったけど、南で3か所目の拠点ができたって以外は大きなニュースはなかったよ」


 古びた家か、詳しく聞くと大きさは家族数人で済むには少し狭そうな大きさで、一階建ての平屋みたいな感じらしい。スクショも見せてもらったけど何の変哲もない一戸建てって感じだ。これに関しては後で実物まで案内してもらおう。


「それじゃあこっちも報告するよ。砦を見つけたところまでは伝えたと思うんだけど…」


 錦の作った地図にその場で書き足しながら俺の成果について伝える。兵士から聞いた話しも織り交ぜて話したが、帰り道で情報をまとめたこともあって要点をまとめて手短に話すことが出来た。

 鉄心は一々頷いたり声を上げて冒険譚でも聞いてるような食いつきだったし、アイラは煮込んでシチューにしたら美味しそうとか言っている。間違いなくホーンラビットを調理する気だな。錦は手元の紙に情報をまとめ、自分なりの解釈を書き込んでいた。


「その兵士の反応からすると、今回の発見はかなりの成果だったという事なんだろうな」

「どうだろう、もしかしたらまた呼び出されるかもしれないけど、クエストはちゃんと終えてきたし」

「まあ、今回はどっちもいい仕事できたよねってことで、かんぱーい!」


 その後はコボルトの情報で盛り上がったりもしながら、良いだけ飲み食いして今日の成果を祝うことになった。

 夜間のクエストもあるって気付いたのは一度ログアウトしようと店を出たときだ。3人は何を言ってるのかと呆れていたが仕方ないだろ。夜はいつもログアウトしてたんだから。

 それにしても通りがやけに騒々しく、プレイヤーの数がやけに多いように感じる。その人混みはほとんどが広場に向かっているようだ。


「やばい、北は偵察任務のはずが討伐戦に変わったってよ」

「盗賊か、俺人間タイプと戦えるかな」

「まさか北にそんな大きな戦力があったなんて」


 プレイヤーから漏れてくる情報をまとめると、午後に見つけた砦の攻略がクエストとして出されたみたいだな。てことは俺の仕事はちゃんと全うできたってことだ。まさか今から呼び出されるなんてことはないだろう。


「ほう、サンブレードの砦はクエスト攻略か。ということはプレイヤーの発見がトリガーだったのだな。それもイベント内容を考えると、砦の発見プレイヤー数が一定数に達する必要があるとみた。どちらにせよ、カイは素晴らしい大手柄だ」

「どうだろうな、これでイベントがなにかしら進むなら貢献できたってことなんだろ。こっからは多対多の戦場だ、俺もお役御免さ」


 どうするか一度話し合ったが、俺は特性上厳しく、3人は戦力に不安があるということで討伐戦の参加は見送り、ハイランドラットの件を進めることにした。集合時間を確認すると休憩を兼ねて一度ログアウトする。

 ログアウトするとベッドに寝転び、本を読んでリラックスしたりとのんびりと過ごしてからログインした。

 広場に顔を出すとまだかなりの賑わいを見せていた。流石に今ここに入っていくのも気が引けたので、そそくさと集合場所に向かう。全員が揃ったら行動開始だ。


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