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金の籠  作者: 溝口智子
24/24

二十四

 その部族には不思議なユルタがあった。

 一つのユルタにたくさんの異民族の人々が住んでいた。彼らは皆、異形の地から来たという。危険を恐れず先達にならい密かにやってきたという。

 異形の地で産まれ異形の地で育ち、しかし地球を、母の星を目指して帰ってきた。子供たちは皆、様々だ。肌の白いもの、黒いもの、黄色いもの、髪が赤いもの、茶色いもの、金色のもの。様々な人、様々な言葉。けれど彼らはただ一つ、同じものを持っている。


 彼らは歌う。

 彼らは笑う。

 彼らは怒る。

 彼らは働く。

 彼らは眠る。

 そして彼らは恋をする。


 彼らは持っている。

 ただ一つのものを。

 彼らは皆、前を向いて進む。







 依子は額に汗を浮かべたまま、産まれたての赤ん坊を抱いた。赤ん坊は両手をしっかりと握って力いっぱい泣いた。ユルタの幕をあげ、雷三が入ってきた。赤ん坊を見て嬉しそうに目を細める。


「依子、ありがとう。俺たちの最初の子供を」


 依子は笑って首を振る。


「この子は私たちの八番目の子供よ」


 依子が指差すユルタの幕の外には、心配そうにのぞきこむ子供たちの姿があった。国籍をもたない遠い星で産まれた子供達。

 雷三は子供たちを手招く。子供たちは、あるいはおずおずと、あるいは依子に駆け寄り、あるいはただ笑顔でたたずんだ。そうして口々に様々な言葉で依子にささやく。


「おめでとう、母さん」


 口々に子供達が祝福を歌う。それは新しい故郷に古くから伝わる歌。

 新しい命が翼を広げ羽ばたくことを、平和の地、真実を愛する故郷をいつまでも ここに、と子らは歌う。

 赤ん坊の新しい泣き声と共に草原に歌声が響いていく。どこまでも広く、どこまでも高く、自由の歌は響きつづける。

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