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2032年10月1日 08:45
(だりぃ~~
明日から土日だけど、こうも毎日毎日同じことの繰り返しだとなぁ)
勤務先である品川へ向けて移動中の 32歳サラリーマン 斎木 瞬 は 心の中でぼやいていた。
夏の猛暑は過ぎたものの 歩けばまだまだ暑く 今日のように雲ひとつ無い晴天だと尚の事だ。
樹木の紅葉も見せず秋の訪れはまだ先であると感じる。
(しかし、満員電車には慣れななぁ
てか! もっと奥詰めろよ奥空いてるだろが)
東京都内の電車事情はどこも同じで、いたるところで無言の争いが起きている。いつものことだ。
俺の目の前に居る女OL2人がチラチラ見てヒソヒソと話しをしている。
イケメンの宿命だな と一瞬だけ軽い冗談めいた妄想し直ぐに辞める。
知ってるのだ「キモイ」とか「痴漢かも」と言っているのは。いつものことだ。
(安全を重視するなら女性専用車両行けよ)
といつものように心の中で呟いた。
そうこうしている内に見慣れた品川駅に到着した。
(やっとか)
うんざりする電車を降り改札を抜ける いつものことだ
沢山の人が行き交うが そこは日本 中央は港南口へ行く列 左右は駅に向かう列 と
誰に言われるでもなく 皆が規則正しく各々の目的に向かっている。いつものこと。
屋根がある場所を狙って通れば雨が降っていても濡れずに会社につけるのは良い事だなっ思った。
出口についた。いつものこと。いつものこと。うん?
異音に気付いた。
凄く小さい音だが ピィィン と耳鳴りのような音だ。
(疲れとストレスが等々限界を超えたかなw)
等と考えていると。
「まりさぁ~なんか聞こえない?」
「え?何も聞こえないけど・・・
やめてよねそういうの弱いんだからぁ~ あれ・・・ホントだ何か聞こえる」
(電車にいたOL2人組だ
会社同じ方角だったんだなぁ)
自分だけだと思っていたが どうやら違うらしい
行き交う人々が足を止め始めた。
なんだなんだと周りを確認し始めると同時に
先ほどの異音が大きくなる。
ビィィィィンビィィィィン イィンイィンィン
「おい!! 空が!!! 空を見ろ!!」
近くに居た40代だと思われる男が指を空に差しながら声を上げた。
釣られたように同じ方向を確認した
「な、なんだよあれ!空が紫に」
色だけでは無く、徐々に群青色の斑模様が浮き上がっていく。
肉眼で100円玉サイズくらいの大きさで、無数に存在していた。
実際に近づけばもっと大きいであろう。
徐々に大きくなり、そして止まった。
あの異音も無くなり静寂に包まれた。
見たことも聴いたことも無い現象に人々は言葉を発せなくなる。
人間とんでもない事が起きると次の行動にまでラグが生じる。
テレビドラマや映画などでは直ぐに悲鳴を上げて逃げ惑うのであろうが、
そんなのは嘘っぱちだ
「うわっ」
と誰かが発したときには、
斑模様の一つから異型のものが蠢きだしてからだ。
徐々に大きくなり、それはそこから這い出ようとしているのが分かる。
(だめだ。ここに居ちゃいけない。
に、逃げるんだぁ・・・)
直感的にそう感じた。だが、動こうとしても恐怖のあまり動けないのであった。