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短編集:語らい  作者: 睦月芽楼
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淫靡な夢魔との夢

人間が最も休めるのは落ち着いているときである。

肉体的に落ち着くことも、精神的に落ち着くことも。どちらも同じように休息としての効果がある。

が、正常な場合もっとも休むことが出来るのは睡眠だろう。

精神的にも、肉体的にも落ち着いた状態がおおよそ6時間ほど継続するのである。休めないハズが……なかったのだ。


「そう、こんな場所に急に呼び出されたらどうしようもねーよなー……。」


と、目の前の美女にこぼす。もちろん嫌味だ。

「まぁまぁ、こんな綺麗な女性を一晩独り占めにできるんだから喜びなさいよ。」

「でもさ、せっかくの休息を邪魔されて何とも思わないわけないだろ?下手したら死ぬし。」

「え?でも気持ちいいのよ?」そういう問題ではない。


「というかさ、いい加減夢に出るのやめて現実に来ない?どうせ起きても覚えてるんだし。」

「やーねー。それは貴方の思い込みで、本当は覚えてないのよ?」

「いやいや。覚えてなかったらここでこんなこと言えないだろ。」

「夢の中の貴方には記憶があるんだから言えるんじゃない?」


ん、微妙に引っかかるな。夢の中の貴方には?

こういうのは夢魔の専門なんだろう。ちょっと聞いてみてもいいかもしれない。


「あら、いい心がけね。せっかくだから教えてあげる。」 おぉ、親切。

「起きているときの記憶と夢の中での記憶は別物なのよ。

起きているときの記憶は夢の中でも思い出せるけど、夢の中の記憶は目が覚めると思い出すことが出来ない。それが夢を見る、見ないと言い張る人の違いなのよ。

記憶は心と体で覚えるモノ。現実の記憶は心も体も覚えているから心だけになった夢の中でも覚えている。

でも、心だけで覚えた夢の中の記憶は体が受け付けないから思い出せない。

夢を見ている、覚えているーなんて人も大抵はおぼろげな断片をもとに想像力が補填した想像なのよ。」


「ふーん・・・HDDのケーブル違いみたいなもんか。」

「そのたとえはよくわからないけど……貴方が覚えているなんて言っても実際は夢の中で経験したことを想像しているに過ぎないのよ。」

「つまり、実際に夢の中で起こったこととは全然違うと言いたいのか?」「まぁそういうことね。」


ふむ、講釈述べさせておいてだが妙に納得できない。

やっぱり、これを書く時点でしっかりと覚えているからこそ書けるのだし、

実際夢の中で会うたびに何度目かと数え、目覚めた後にもまた来たのかと落胆するのだから。


「ところで・・・ねぇ?」と、呼びかける声に反応して美女の方を向く。

どうやら、俺も相当気難しい顔をしていたのだろう。心配そうにのぞき込む夢魔は淫靡な雰囲気を纏い、上目遣いにこう言い放った。


「講義の代金……体で払って?」


この後、朝日が昇るまで淫蕩な悪魔の誘いを断り続けられたかどうかは、皆の想像に任せるとしよう・・・

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