天狗幽霊との語らい
「で、結局御年何歳?」
「主殿。無礼極まりない詮索ではないかの?」
と、いつものように詮索されるのを嫌う一言。
まぁそりゃそうだろう。実年齢はともかく目の前に居る語らいの相手は少女だ。
いや違った。『外見は』少女である。まぁその外見もただの少女と一言で済ますには少々特殊だが。
整った顔立ちは少女そのものだが、背中からは鴉を連想させる翼が生えている。
そう、ちょっとばかし半透明だが彼女は天狗と呼ばれるものだ。
「そういえばさ。」と適当に話題を切り替える。
「うん?なんじゃ?主殿。」向こうもこの流れを理解してくれる程度には付き合いが長い。
「前から気になってたんだけどさ。なんで『主殿』って呼ぶんだ?」
「それは主殿に依存しているからですよ。」依存?ちょっと解らなくなったな。
「依存?そんなそぶりされた記憶がないんだが。」
なんというか、茶飲み仲間?縁側でまったりお茶を飲むことが多い。なんともまぁ奇妙な女友達だと実感しているが。
「主殿が私の主だからであろう?」ん?なんか余計わからなくなった。
「私は永遠にこの年だから、何かに依存しないと生きていけないのじゃ。」
や、なんか夢とロマンとオタクっぽいこと言ってるけど、故人ってことだよね?
それって自分が幽霊だってことを自覚しているだけですよね?他意はないですよね?
「天狗が幽霊っていう謎現象はもう理解しているから。普通に話して欲しいんだが。」
「主殿は本当に余裕がないのう。」それは面目ない。
「そも、幽霊というのは何かに依存して存在を保っているものじゃろ?」
「それってつまり、地縛霊は土地に依存しているとか言いたいのか?でも浮遊霊はどうなんだ?当てもなく彷徨っているようにしかみえないんだが。」
「当てはなくても、依存するものがあるじゃろ?」なんだそれ?謎かけか?
う〜んと頭を唸らせて考えている間に団子を一串食べた天狗幽霊は答え合わせをする気になった。
「主殿は無い物を探すことはあまりしない方かえ?」「まぁ探し物はあんまりしないな……あ。」
そういう事か、と合点のいった顔をみて満足そうにほほ笑む少女……天狗。
「そう、『探すことに依存』しているのじゃよ。」ふむ、ある種納得はできる。
「……で、なんでその話なんだ?まったく最初の質問の答えが見えないんだけど。」
「そりゃ主殿。どんな仲でも話せないこともあるだろうに。さも主殿と私の様に仲が良いと、の?」
納得できない顔で団子を口にする俺と、仕返しできたといわんばかりに満足している天狗……幽霊。
どうやら一杯喰わされたらしい。団子の補充をしてくると言って、赤い顔を隠す為にその場を立ち去った。