表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ライフアーク  作者: トカゲ
第一章 ライフアーク 
8/25

08

目が覚めるとそこは白い天井が広がっていた。

ここは病院のようだ。ライフアークでは死ぬと病院に強制転送されるようになっている。

デスペナルティはアイテムのランダム消滅と経験値のマイナスだ。


アイテムを確認してみると回復アイテムと食品アイテムが何個か消えている。

経験値の方はレベルも低い事もあってそこまで減ってないみたいだ。

全体的に被害が少なくて安心した。


病院から出ると、太陽が真上を照りつけている。どうやら随分と眠ってしまっていたらしい。

そういえば、ゴブリンソードが壊れてしまったのを思い出した。

また木の剣に戻るのは抵抗がある。ゴブリンソードの攻撃力に慣れると木の剣に戻るのはちょっと辛い。

NPCにゴブリンのドロップアイテムを売ると結構な額になったので新しい武器を露店で探す事にした。

今なら1000ゼニーくらいならギリギリ出せる。

まぁ、1000ゼニーではそんなに良い武器はないんだけどね。


折れたゴブリンソードと同じやつも売っていたが5000ゼニーもした。手が出せない。


結局、木の剣に毛が生えた程度の攻撃力がある【ブロンズソード】を購入した。

ついでに防具も新調する。【紺の冒険者服】と【紺の冒険者ズボン】がセットで400ゼニーだったのでこれを購入。

これで初心者装備からは完全に脱出だ。


レベルもかなり上がったし、今日はクエストをやってみようと思う。

冒険者ギルドは相変わらずの賑わいだ。1階の酒場では料理を食べるプレイヤーとNPCで賑わっている。

今日は2階の受付でクエストを受けるつもりなので掲示板はスルーして2階に上がった。

受付に入ってクエストを紹介してもらう。


「紹介できるクエストは【ゴブリン討伐】【薬草採取】【洞窟探査】の3つですね。」


受付の女性はそう言ってクエスト用紙を出してきた。

洞窟探査はまだ実力的に無理があるからゴブリン討伐か野草採取のどちらかだろう。

報酬はどちらも300ゼニーだ。クエストは複数受ける事ができるので両方受ける事にする。薬草採取は薬草を10個納品すればそれでいいみたいだ。採取できなかったら足りない分は露店で買えば良いと思うし、大丈夫だろう。

ゴブリンは5匹倒せばいいらしい。昨日は20匹以上のゴブリンを倒しているのでこっちも余裕だろう。

クエストを受けた後、俺は取りあえず1階でご飯を食べてから行く事にした。


・・・


「クロさんじゃないですか!」


1階の酒場でご飯を食べていると後ろから声がした。

振り向くとそこにはセドア漁村で出会った女性プレイヤーのミルファがいる。

聞いてみるとミルファはさっきここに着いたらしく、今からギルドに登録してそれから街を見て回るつもりなんだそうだ。


「街の探検、クロさんも一緒に行きませんか?」

「あー、ごめん。さっきクエスト受けちゃった。食事が終わったら直ぐに森に行くんだ。」

「そっかぁ。残念です。」


ミルファはそう言うと残念そうに2階へと上がって行った。悪いことしたかな?

まぁ、いいか。食事も終わったし俺もそろそろ行くとしよう。


・・・


薬草採取の方は森の入口辺りで集中して探したら簡単に10個採取できた。

後は奥の方に行ってゴブリン狩りだ。

武器は弱体化したものの、最初とはステータスが全然違うのでゴブリンは楽勝で倒せるようになっている。


5匹倒してもまだ太陽は沈みそうもない。

余裕を持って帰るにしてもまだ大丈夫な時間だろう。

しばらく狩りを続けていると、変わったモンスターが遠くの方にいるのが見えた。

体中が真っ赤なゴブリンだ。黒いマントを靡かせながら右手で巨大なハンマーを振り回して歩いている。


(あれは確か…デスゴブリンだっけ?)


商業都市エグベア付近に出現するユニークモンスターが確か赤いゴブリンで、名前はデスゴブリンだったと思う。

デスゴブリンはエグベア周辺の何処か1箇所にランダムで出現するレアモンスターだ。

コイツは出現範囲が広すぎるせいで滅多に会えないらしい。


落とすアイテムは高値で取引され、もしレアドロップなんて出そう物ならオークションが開かれてもおかしくないと言われている。

デスゴブリンの強さはかなりの物だが、出会うこと自体が幸運なこのモンスターなので逃す訳にはいかない。

幸いなことにレベル5の4人パーティなら倒せるモンスターと言われている。

俺の今のレベルは6だし、もしかしたら倒せるかもしれない。


(ギリギリ行けるか?いや、こんなチャンスは滅多にないんだ。誰かに倒される前に倒しちゃおう!)


俺はデスゴブリンに向かって走り出した。


・・・


デスゴブリンとの戦闘を開始して思った事は失敗だと言う事だ。

デスゴブリンは本当に強いモンスターだった。

昨日今日始めた初心者が一人で相手をしていいモンスターじゃない。

失敗だった。これは本当に失敗だった。

デスゴブリンの巨大なハンマーが俺の頭上スレスレを通り過ぎて行く。


俺はブロンズソードをデスゴブリンの右腕に当てるがダメージは微々たるものだ。

瞬間、デスゴブリンの剛腕が俺の腹を突く。


ドゴゥ!


鈍い音がする。体がくの字に曲がる。

空気が腹から噴き出る。目がチカチカする。

HPゲージは半分にまで減少し、足がガクガクと震える。

次の攻撃がくる!


俺は必死に足を動かしてデスゴブリンのハンマーを避けた。

ドゴンッ!という衝撃音がして地面が揺れる。


俺はバックステップでデスゴブリンから距離を取り、息を整えていく。

薬草を取りだしてHPを完全に回復した後、ブロンズソードを構えなおす。

デスゴブリンと戦い始めてどれくらいの時間が過ぎただろう?

多分10分以上戦っているはずだ。


幸いな事にデスゴブリンは防御力が低く、急所を狙えばダメージもかなり入る。

まぁ、それでもまだデスゴブリンのHPはまだ4割以上残っているけれど。

これはシャレにならない。まだ半分くらい残っているのか。

回復アイテムももう薬草が10個しかない。これはクエスト達成の為に取っておいた物だが、いざとなったら使うしかないだろう。


幸いな事にデスゴブリンの動きには慣れてきている。

攻撃ももう殆ど当たる事は無い。でも、完全に避けられるようになった訳でもない。


(……薬草が無くなるまでにあいつの完全に攻撃を見切るか倒すかしないと詰むってことか。)


俺は気合いを入れてデスゴブリンを睨みつける。

連携が取れたレベル5以上の4人パーティならギリギリ倒せるだろうって攻略サイトには書いてあった。

やっぱり1人で倒すのは無理かもしれない。でも、半分は削れたんだ。やれるはずだ。

何か、何か手は無いだろうか?


デスゴブリンから一旦距離を取ってメニューを開く。

すると新しくスキルを覚えていた。どうやら片手剣のレベルが5になった事で追加されたみたいだ。


我流剣技 さみだれ【我流剣術。高速で連続攻撃を行う。】


「よし!これで勝てるかも!」


いや、勝てると決まった訳じゃないが、俗に言う必殺技を俺は手に入れたという事だ。

説明だけしか見てないので連続攻撃くらいしか技の内容は分らないが、普通に攻撃するよりは強いダメージを期待できるだろう。


技の発動の仕方は叫ぶか頭の中でイメージするかで大丈夫だったはず。

今回はミスが許されないから確実に発動できるよう、叫ぶ事にする。


まずはデスゴブリンが必殺技を避けられない状態を作らないといけない。

攻撃に注意しながらチクチク攻撃する。主に下半身を集中して攻撃する。

デスゴブリンは明らかにイライラした感じで唸り声を上げながら攻撃してきた。

俺はそれを華麗に回避して攻撃を再開する。

10分位攻撃していたらデスゴブリンが膝をついた。

どうやら足を重点的に攻撃したのが効いたみたいだ。これで準備が整った。

デスゴブリンのHPも残り僅かだ。これで決める!


「これで終わりだ!さみだれぇっ!」


叫んだ瞬間、俺の体がシステムに動かされて技の動きを描く。

まずは上から下に斬る。次に下から上、右から左右左右左上下上右左……

この剣技は10秒以上続く。システムに補助された高速の攻撃はデスゴブリンに反撃の余地を与えない。

スキルが終了して剣が鞘に収まる頃にはデスゴブリンは光になって消えていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ