表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ライフアーク  作者: トカゲ
第一章 ライフアーク 
7/25

07

翌日、ログインした俺はギルドには行かずに森に来ていた。

少しでも戦闘をしたかったからだ。

まだ時刻は昼前くらいなので充分に時間はある。

空腹度を回復する為に露店で買ったサンドイッチを頬張りながらゴブリンを探す。


プレイヤーの殆どは戦闘がしやすい草原や海岸に向かう為、障害物が多い森はあまり人気がない。

森は動きが制限されるだけでなく、モンスターを見つけにくく、しかもモンスターから奇襲をされやすい。

連携も取りにくいし、初心者にはちょっと敷居が高いのだ。


そんな事を考えながら森を歩いていると、目の前にゴブリンを3体発見した。

全員が武器を持っていた。2匹がナイフ、1匹が弓を持っている。


俺は気配を消して弓を持っているゴブリンの背後に回った。

そのまま木の剣で先制攻撃を仕掛ける。狙いは頭だ。


ボコッ!


鈍い音と一緒に弓を持ったゴブリンが倒れる。

流石に1撃では倒せないようで、直ぐに起き上がったゴブリンは怒鳴り声を上げた。

他の2匹もこちらに敵意むき出しでナイフを構えている。


俺は木の剣を構えなおしてゴブリンの出方を窺う。

先に動いたのはゴブリンだった。2匹のゴブリンがナイフを片手に飛びかかってくる。


「くそっ!」


俺は木の剣を前に突き出して振り回す。

運よく1匹のゴブリンの顔面に当たり、ゴブリンが怯む。

しかしまだ1匹残っている。

避けようとするが間に合わない。肩を思いっきり切りつけられてHPが大きく減少した。


「ち、くしょうがぁっ!!」


ゴブリンの腹に思いっきり木の剣を叩きつけた。

ゴブリンの体が少し浮き上がりそのままゴロゴロと転がって木にぶつかる。

ゴブリンは気絶状態になったようでしばらくは動けないみたいだ。


瞬間、矢が飛んでくる。

弓のゴブリンが遠くから攻撃してきたのだ。

2匹のゴブリンと戦闘していた間に弓のゴブリンはかなり遠くまで離れていたみたいだ。


状況はかなり悪い。先に気絶しているゴブリンを数回攻撃して倒す。

そのままもう一匹のゴブリンを攻撃していく。

弓のゴブリンは距離が離れているから後回しだ。時々飛んでくる矢が正直ウザったいが、命中率が悪いみたいで滅多に当たりそうもないから大丈夫だろう。


しばらく攻撃していたらもう1匹のゴブリンも倒す事に成功した。

後は弓のゴブリンだけだ。

そう思って前を向くと弓のゴブリンが逃走していく後ろ姿が見えた。

もう追い付けそうもない。残念だが諦めるしかないだろう。


その後も森でゴブリンとの戦闘を続けていると、洞窟のような場所を発見した。

多分ここがバーテンダーさんが言っていたゴブリンとコボルトが出る洞窟だろう。


洞窟は暗く、奥まで続いているみたいだ。今のレベルと俺がソロって事を考えると入らない方が無難だろう。

俺は洞窟を諦めてその周辺でレベル上げをする事にした。

良く考えてみたらまだ俺はレベル2でしかない。今日は戦闘を集中して行ってレベル5くらいまでは持って行きたいところだ。

幸いな事に他のプレイヤーはいない。何組かのパーティを見かけたが、みんな迷いなく洞窟に入っていく。

これならレベル上げ放題じゃないか。


・・・


あれから太陽が沈むまでゴブリン狩りをした結果、俺はレベルが6にまで上昇していた。

レベル4辺りからゴブリンを簡単に倒せるようになったのが大きかったようだ。

レアドロップのゴブリンソードも手に入れて攻撃力を大幅に強化できたし、今日は満足と言って良いと思う。

夢中になりすぎて他のことは出来なかったが、かなりのドロップアイテムを手に入れる事ができた。後は帰るだけだ。


ガサリ――


草むらから何やら音がした。

嫌な予感がする。振り向いてはいけないと心が警告し、振り向かないと死ぬと本能が直感する。


「グルルル……」


獣の唸り声が背中の方から聞こえる。

強烈な殺気を放つそれは俺を獲物として認識したようだ。

俺は嫌な予感がして前の方に走る。


ゴスンッツ!!


大きな衝撃音が響いた。木が折れて倒れる感じの音がする。

もう逃げられそうもない。

俺は意を決して後ろを振り返り、獣とようやく対面する。

それは大きな熊だった。大きさは5mくらいだろうか?首あたりにだけ白い月の様な模様があるその熊の名前は【ムーンベアー】という。


夜の森にだけ出て来る限定モンスターだ。

森エリアなら何処にでも出るモンスターで、大きさで強さが変わるらしい。

5mのムーンベアーは大体中級ダンジョンのボスモンスターと同じくらいの強さとされている。


(あ、これは死んだな。)


今の俺は中級ダンジョンのザコモンスターにだって勝てないだろう。

ボスクラスなんてとてもじゃないが勝てる気がしない。


「まぁ、やれるだけやってみるか。」


俺はゴブリンソードを構える。

幸いな事にムーンベアーの攻撃を避ける事は難しくない。

ムーンベアーの攻撃は大振りのものしかない。攻撃範囲は広いが集中していれば避けるのは容易い。

避けると同時に攻撃、避けると同時に攻撃を繰り返していく。


しかし攻撃してもHPが減る気配はない。逆にこっちはムーンベアーの攻撃を1回でも受ければ死んでしまうだろう。

死んでも少しのデスペナルティがあるだけだ。本当に死ぬわけじゃない。

それでも、簡単に死ぬのはごめんだ。


・・・


どれくらいの時間、戦っていただろう?

5分?10分?もしかしたら30分くらいだろうか?

ムーンベアーのHPはまだ80%くらい残っている。

俺のHPは1も減っていないが、精神的にはもう限界だ。


「ああああああっつ!!」


何回目の攻撃だろうか?渾身の一撃をムーンベアーの首に叩きこむ。


パキャッ――


変な音がしたと思ったら俺のゴブリンソードが根元から折れた。

俺のすぐ横にムーンベアーの剛腕が見える。


俺の意識は一旦そこで途切れた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ