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ライフアーク  作者: トカゲ
第一章 ライフアーク 
3/25

03

朝早くから俺は草原に出ていた。

クエストである薬草を手に入れる為だ。俺はスライムを無視しつつ薬草を探す。

薬草採取は薬草を10個収集するとクリアになる。

簡単に思えるかもしれないが、薬草は普通の草に良く似ている為、探すのに結構時間が掛った。


合間に息抜きとしてスライムを倒しながら薬草を採取していく。

未だにラピアスに出会えていないがもしかしてレアモンスターなんだろうか?


草原の端の方には森が広がっている。

あっちの方が薬草も沢山生えていそうなので、そっちの方に行ってみることにした。

森はそこまで大きくなく、迷うような場所でもないみたいだ。

ここにはスライムがいない代わりにレアモンスターだと思っていたラピアスの姿があった。

どうやらここがラピアスの出現場所らしい。


ラピアスはウサギ型モンスターと聞いていたが、どちらかと言うと毛玉に近い容姿をしていた。毛玉にウサミミが生えていると言えば分りやすいだろうか?


戦ってみた感想はスライムより素早く攻撃力もあるが、防御力はスライムより下といった感じだ。

素早いのでスライムより強敵だが、ぶっちゃけドングリの背比べだな。さすが最初の村付近の敵と言った所か。


薬草を15個採取し、5匹目のラピアスを倒した所でようやくレベルアップの音楽が響く。

ようやくレベル2になったようだ。ボーナスポイントが3入ったので力、速、器をそれぞれ上昇させて村に戻る事にした。


村に戻って村長に報告する。

報酬は200ゼニーだった。まだ昼前だったので続けて魚釣りのクエストを受ける。

一度宿屋に戻ってご飯を食べてから依頼者が待っているらしい草原に向かった。


「依頼を受けたのはお前さんか?俺の名前はジャン。実は最近森の方に湖を見つけてな。魚釣りをしたいんだがモンスターが怖い。だから護衛を探していたんだ。そうそう、釣り竿は2つあるからモンスターが居ない時間はお前さんも釣りをしてもいいぞ。」


依頼者であるジャンはそう言うと釣り竿を渡してきた。

木と糸と針でできた最低限のやつだ。

目的地の湖は森を数分進んだ場所にある。

護衛も何もこちらから攻撃をしない限りここのモンスターは攻撃してこないので俺の仕事は無いに等しかった。


釣りの仕方をジャンに教えてもらってスキルである【釣り】を入手した後はひたすら糸を垂らす作業に移る。

しかし中々釣れない。もう少し釣れるようにした方が良いんじゃないだろうか?

ゲームなのに30分位何も釣れないのは流石にクレームレベルだろう。


「釣れないなぁ。っと、来た来たぁっつ!」


ジャンが愚痴を溢した瞬間、釣り竿が大きくしなる。

かなりの大物のようでジャンの方が湖の方に引きずられて行く。

このままだとジャンが湖に落ちてしまうだろう。


「お、おい!手伝ってくれ!!」


俺は急いでジャンの体を掴み、引きずられていくのを止めた。

かなりの引きの強さだ。釣り竿が折れないか心配になってくる。

魚の影が浮かんできた。いや、あれは魚なんてものじゃない。どっちかって言えば竜に近い気がする。

あんなのを釣りあげて、本当に大丈夫なんだろうか?


ボキッツ!!


そんな事を考えていたら予想通り釣り竿が折れた。かなりの大物だったのは間違いないだけにかなり悔しいが、同時にホッとする。

釣りあげていたらどうなっていたか分らないからな。

ジャンも相当に悔しがっていたが、最後は良い経験だったと爽やかな笑顔を浮かべていた。


一応はこれで依頼完了になるが、報酬は釣った魚の何割かだったらしく、代わりに借りていた釣り竿をくれる事になった。

あの魚はレベルを上げて釣り竿を強化すれば釣れるようになるんだろうか?

いずれ釣りあげてみたいものだ。


・・・


これでこのセドア漁村で受けられるクエストは残り一つになった。

商人護衛のクエストを村長から受けて商人達に会いに行くと、明日の早朝に出発するから出発の準備をして明日また来てくれと言われた。

朝の5時に草原側の村の入り口に集合みたいだ。

次の町である商業都市エグベアに到着するのは昼過ぎくらいになるらしい。

どれだけ遠いんだよ。リアルにしすぎだろ。


旅の準備も何も準備するような店がこの村には殆どないので、食糧として魚の干物を3つ程買っておく。

後は海岸でも散歩してみようか。


ゲーム内時間で2日が過ぎたが、まだ他のプレイヤーと話していない気がするのは気のせいだろうか。

実はプレイヤーも少ないけど周りにいたりするんだが、大体のプレイヤーは先にゲームをやっていた友人プレイヤーに守られながら村のクエストを無視して外に出てしまう。


俺みたいにノンビリプレイをする人は意外にも少数派らしい。

確かに早く強くなりたいとか良い装備が欲しいという気持ちも分らないではないが、最初からそんなに急ぐのは勿体ない気がするんだがなぁ。


きっと彼等はこの月の光に照らされたこの静かな海も見ていないのだろう。

中々に幻想的でワクワクする光景なのに勿体ない事だ。

強くなる事に必死な彼等のおかげでこの浜辺は俺の貸し切り状態。何て良い気分なんだろうか。


……寂しくなんかない。絶対ない。


浜辺をノンビリ散歩していると、人影を発見した。


「ふふふ……もうすぐ完成よ。作成時間4時間の超大作、その名もアークキャッスルが!」


そこには俺と同じく初心者装備の少女が2メートルはあるだろう巨大な砂の城を造っている姿があった。

綺麗な金色の長髪が潮風や浜辺の砂で汚れているのも気にせずに少女はせっせと砂の城の作成に勤しんでいる。


良く見てみるとその砂の城には窓や扉なんかもしっかりあった。

しかも城の周囲には巨大な砂の竜が城を護るように佇んでいる。

その造形は最早職人レベルと言っていい物だろう。少なくとも俺には真似できないレベルだって事は良く分る。


「すごいな、こりゃ……」


思わず声が漏れる。瞬間、少女がビクリ!と肩を震わせる。

そのせいで城の見張り塔らしき場所の先端が崩れてしまった。


「おっと、すまない。驚かせるつもりは無かったんだ。散歩していたら偶然人影を発見してそれで……」

「いや、別に良いですよ。ゲームを始めてから初めて他のプレイヤーさんに声を掛けられて驚いただけですし。」


彼女はそう言うとニッコリと笑った。

彼女も俺と同じ2日前からライフアークを始めたらしい。

最初に薬草採取の依頼を受けて森に入った所、ラピアスを発見して攻撃したら次々にラピアスが加勢に来てやられてしまったんだそうだ。


どうやらラピアスは攻撃している時、近くに他のラピアスがいるとそっちのラピアスも戦闘に参加してくるリンクモンスターだったらしい。


「それでちょっと戦闘が怖くなっちゃいまして。少し落ち着こうと思って浜辺で遊んでいたんです。」

「という事はまだ薬草採取も終わらせてないとか?」

「恥ずかしながら終わらせてないですね。」


顔を少し赤らめながら彼女はそう言った。

このままだと直ぐゲームに飽きてライフアークに来なくなりそうだな。

それはなんか勿体ない気がする。


「良かったら手伝おうか?まぁ、ラピアスは攻撃さえしなければ敵対されないから別に手伝う事もないけどさ。」


俺の言葉に彼女は表情を明るくさせて良い笑顔で「お願いします!」と言ってきた。

俺は明日には村を出るので今から行く事にする。


「俺はクロ。速度特化のアタッカーを目指している。よろしくな。」

「私はミルファっていいます。支援特化の後衛になるつもりです。あの、えっと、よろしくです。」


俺とミルファはフレンド登録をして森の方へ向かった。

もう太陽も沈みきって完全に夜だが、月明かりのおかげで採取する分には何の問題もなさそうだ。


モンスターは夜になると変化する場所もあるみたいだが、初心者エリアではそんな事はなかった。朝も夜もラピアスのみだ。


ミルファは既に7枚の薬草を採取しているみたいだったので残り3枚だ。

俺はもしもの時の為に周囲を警戒しながらミルファと雑談していた。


「そういえば、あの砂の城、本当に凄かったなぁ。まさに職人って感じだった。」

「うぅ……恥ずかしいです。私、昔から何か作るのが好きなんです。何か作っていると無心になれるというか、なんというか。」


ミルファは少し照れているようで、顔がうっすらと赤い。

それでも薬草を探すのはしっかりやっているようで、今もブチブチと薬草を採取している。


「あれだけ器用なら生産職にでもなったらいきなり生産のトッププレイヤーになれたりしてな。武器とか鎧とかも結構好きに外見弄れるらしいし。」


俺の言葉にミルファの手が止まる。採取が終了したんだろうか?

そう思って声を掛けようとしたらミルファが凄い勢いで顔を上げた。


「それって本当ですか!?自分で作った武器防具の外見は自由に弄れるってやつ!」

「あ、あぁ。デザインが良かったりすると能力補正もでるらしいよ。」

「そうなんだ!私、鍛冶やります!やってやります!」

「そ、そう。がんばってね。」

「はいっ!」


どうやら変なスイッチが入ったようだ。

その後はハイテンションなミルファとの会話に若干疲れながらも無事に採取を終えることができた。



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