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ライフアーク  作者: トカゲ
第一章 ライフアーク 
2/25

02

扉を開けるとそこは浜辺だった。

透き通るような青い海に何処までも広がる青い空。

これは作りものの風景だが、こんな綺麗な風景は現実にだって無い気がする。


風景も良いがとりあえず装備を確認する事にした。

どうやら最低限の防具は装備されているようだ。腰には木の剣も装備されている。

多分木の剣は片手剣スキルを取ったから追加されたんだろう。


海とは反対方向には村が見える。

最初の拠点になる【セドア漁村】だ。

ここでチュートリアルをこなしながら、レベルを上げたりクエストをやったりして次の町を目指す事になる。

この村では【釣り】と【採取】のスキルを得られるらしい。

かなり手間が掛るらしいが貰えるスキルは結構便利なスキルのようだ。別途で報酬もあるのでクエストはやっておきたい。


「確か、村長がクエストをくれるんだったよな。まずは村に行くか。」


浜辺には小船とかもあってちゃんと漁村っぽい。

村はRPGにありそうな感じのログハウスが数軒あるだけの小さな村だった。

店みたいな物は何処にもなく、NPCも干物を造っている人達がチラホラいるだけだった。


(確かに漁村で武器とか売っていたら変だけど、そんな所に拘らなくても。)


ライフアークはサービスが開始されてから既に1年が過ぎているので、俺みたいな初心者は少なく、結果この漁村も寂れてしまっている。

サービス開始当初は人の多さを緩和させる為に他の場所にも漁村があって、プレイヤーを振り分けていたらしいが、今ではこのセドア漁村しか残っていない。

他の漁村は廃墟になっていて中級者の狩り場として重宝されているらしい。


とりあえず村長の家に向かう事にしよう。

村長の家は多分だが高台の上にある大きな屋敷だろう。

何故ならあそこだけ他の家の2倍くらいの大きさがあるからだ。

何ていうか、村長の家だとしても豪華すぎる気がするのは気のせいだろうか?


村長の家の1階部分には扉が付いていなかった。

中には殆ど何もなく、申し訳程度にテーブルとイスが置かれているだけの部屋があっただけだ。

どうやらここは集落の人間が集まる場所として使われているようだった。

2階へ続く階段の先には扉が付いていたので、多分2階が村長の家なんだろう。


「何かの用かね」


1階を散策し終わって休憩をしていると後ろから声を掛けられた。

振り向くとそこには白い髭を腰のあたりまで伸ばしたお爺さんが立っている。

多分、この人が村長だろう。


「すいません勝手に入ってしまって。クエストを受けたいのですがここは村長の家で間違いありませんか?」

「うむ、違いないよ。クエストを受けにきたということはお前さん、冒険者か。そうかそうか。」


村長は何やら頷くと3つの用紙をだしてきた。

俺は受け取ってそれを眺める。


「それはクエスト用紙じゃ。3つと少ないが今はそれ位のクエストしかこの村には無い。ここは平和な村だからのぅ。」


クエストは【商人護衛】と【薬草採取】、後は【魚釣り】だった。

攻略サイトによれば商人護衛クエストを受けると次の町まで馬車で移動できるらしい。

途中、ゴブリンに襲われるみたいなので戦闘訓練をしてからクエストを受けた方が良さそうだ。


他の2つのクエストでは報酬のほかにもスキルを獲得できる。

薬草採取で獲得できる【採集】のスキルがあれば薬草が無料で手に入るようになるし、魚釣りで貰える【釣り】スキルは暇つぶしに丁度いいスキルらしい。


「じゃあ、まずは薬草採取から受けてみようかな。」


俺は最初に薬草採取のクエストを受ける事にした。

村長からクエスト用紙を受け取って簡単な説明を受けた後、外に出る。

まずはこの村にいる呪い師のおばあさんに薬草の採取の仕方を習いに行くようだ。

村長に教えてもらった呪い師のおばあさんの家は他の家より少し大きめだった。

やはり薬草なんかを扱える人だし、村での立場も上の方なんだろう。


扉をノックするとしばらくして扉が開いて老婆が顔を出す。

紫のローブを着ていて右手には大きな杖を持っている。

顔はフードを被っていて良く見えないが、中々雰囲気のあるおばあさんだった。


「何か用かの?」

「薬草採取の依頼を受けたんですが、採取の仕方が分らないと言ったらここに来るようにと言われて。」


俺がクエスト用紙をおばあさんに見せるとおばあさんが外に出てきた。

どうやらクエスト用紙を見せる事でイベントが進行するみたいだ。


「採取の仕方を教えてほしいのか?そうか、それじゃあ儂の菜園で薬草を育てておるから、そこで採取の仕方を教える事にしようかの。」


おばあさんはそう言うと家の裏側にむかって歩き出す。

おばあさんの家の裏側は小さな畑になっていて、そこには雑草みたいな草が沢山生えていた。


「まずは採取の時の注意点じゃ。それは根っこを引きぬかない事。根元で千切るようするのがポイントじゃ。」


おばあさんはそう言って手本を見せて来る。

こうすると何度でも薬草を採取する事が出来るんだそうだ。


言われた通りにやってみると薬草を採取した瞬間、ポーンという軽い電子音と共に【採取のスキルを入手しました、】というアナウンスが流れて来る。

これで良かったみたいだ。


「うむうむ、中々上手じゃないか。採取の仕方はそれで良いよ。薬草と普通の草は見分けが付きにくいから気をつけてね。雑草ばかり抜いても意味がないから。」


おばあさんはそう言うと満足そうに帰って行った。


・・・


採取のスキルを入手した頃には既に日が傾いてきていた。

このゲームは現実と同じように時間の概念がある。

現実と同じように24時間を1日として考えられていて、時間帯によって出現するモンスターなんかも変わるらしい。

こんな無茶が許されるのもヘッドギアから流れる特殊な電波により現実の1時間を24時間にまで引き延ばす技術があるからだ。


因みにライフアークでは1日に現実時間で3時間以上遊ぶ事が出来ないようになっている。

それ以上のヘッドギアの使用は脳に悪影響があると言われているからだ。


まぁ、それでも体感時間で3日間も連続して遊べるんだし、プレイヤー側からの文句は出ていないみたいだけど。

今ではプレイヤーも朝昼晩で住み分けられているみたいだ。


まぁ、そこら辺はどうでも良いことか。

夜はモンスターが活発になるらしいから採取は明日にした方がいいかな。

今日は宿を予約したら少しモンスターと戦って終わりにしよう。


セドア漁村にある宿屋は【海の宿 大ヒトデ】だけだ。

この民宿は見た目が宿屋というより海の家と言ったほうがしっくりくる感じの建物だ。

入り口は海の家みたいな造りになっていて、奥の方に部屋が何個かあるらしい。

海の家兼宿屋といった所だろうか?


「いらっしゃい。宿泊料は1日50ゼニーだよ。食事は別料金で20ゼニーだ。食事は5時から22時までの間に注文してくれれば作るけど、それ以外の時間での注文は受けない事にしているから注意してくれ。」


受付に居る男に話しかけると、この宿についての注意事項を説明してくれた。

今の手持ちは300ゼニーしかないが、次の町に行くまで買う物なんかないのでぶっちゃけて宿に泊まれる金額があればそれでいい。


俺は取りあえず今日の分の50ゼニーを支払って部屋の合鍵を貰う。

一応部屋を確認してみたが、小さなベットが1つあるだけでギュウギュウになっている小さな部屋だった。まぁ、50ゼニーだし、最初の村の宿屋だし仕方ないか。


俺は部屋には入らず町の外に出てモンスターと戦ってみる事にした。

もう太陽も沈みかけているが、少しくらいの戦闘なら別にいいだろう。

海岸側には奥にある洞窟以外にモンスターは出ない上にちょっと強いモンスターが出現するらしいのでそっちは放置にしておこう。

今日は海岸とは反対側の草原に行く事にする。

草原には最弱でおなじみのスライムとウサギ型モンスターのラピアスがいる。

スライムは大きなグミみたいな姿でプヨプヨしているモンスターだ。


腰に差した木の剣を抜いて斬りつけるとスライムは俺を敵と認識したみたいでプヨプヨとこちらに体当たりしてくる。

慌てて避けるが避けきれず右腕にスライムの体が当たる。

ゲームなだけあって痛みは無いが、衝撃はあった。

木の剣を落としそうになるが何とかそれを耐える。

スライムの動きはそんなに早くないので落ち着けば攻撃をくらう事もないだろう。

スライムは合計で3回の攻撃の後に倒れて消えて行った。


「やっぱりレベル1だとスライム相手でも苦戦するな。」


木の剣を腰に戻して一息つく。

ダメージは戦闘中に殆ど回復したので連戦も可能だが、最初の戦闘なだけあって精神的に疲れた。

さっきは1対1だったから圧勝できたが、3匹くらいに囲まれたら負けていたのは俺だったろう。まぁ、スライムはこっちから攻撃しない限り敵対してこないからそれはないんだけどね。

続けてスライムを5体くらい倒した所で太陽が見えなくなってきたので帰る事に。

結局ラピアスとは戦えなかった。村の入り口付近でしか戦わなかったから仕方ないのかもしれないけど。


・・・


宿屋に戻ってご飯を注文する。

このゲームは8時間に1回食事をしないとステータスが半減して、24時間食事を取らないとHPが徐々に減っていくようになっている。(なんでも現実で悪影響が出ないようにする為らしい)


宿の食事は見た感じサンマ焼き定食だった。

塩加減が絶妙で美味い。


食べたら食器は勝手に消える。

お金は先払いなのでそのまま部屋に入ってその日は寝る事にした。



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