2/24
【1】断片1
天気というのは見る人間の感情により大きくその表情を変える。
本来、僕は雨の日が好きだ。濡れたアスファルトや湿った空気。深く沈み沈殿した空気。
街全体の配色が濃く鮮明に映る。立ち込める雲は柔和で優しくこの世界を抱擁している。
だが今日はなぜか酷く気分が悪い。
立ち込める雲は不吉な前兆の様に空を覆い尽くし、微かな希望さえもそこにはありはしない。
鏡だ。
結局のところ周りにある事象というのは僕の感情を反射しているだけなんだと気づく。
それでも僕は空を眺める。紫煙が空に還る。
僕はここで何を待っているのだろう。
雨は一時的に上がっている。
何かがいつかやって来る。
そう僕はそれを待っているのだ。
足元では何層にも重ねられた雪と氷が溶けている。
水は低いところに流れる。その流れが道を作り氷雪に亀裂をいれていく。
そうだ、ここはもう長く持たないだろう。
だが僕はここで待たなければならない。
特に理由は分からないのだけれど。