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記喪転我意 ―Lost Memory―  作者: Spumante Rock


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7/12

第7話  大嫌いと筆箱

この話は、何気ない言葉と、何気ない持ち物が、

思っている以上に心を揺らしてしまう

そんな瞬間を描いた回です。

「大嫌い」という言葉は、

必ずしも本心を表しているとは限りません。

けれど、受け取る側には

確かに刺さってしまうこともあります。

ささやかな出来事の中にある、

小さな痛みと違和感を感じていただけたらと思います。

日曜日の部活が終わって、

谷本は駅前のStarbucksに向かった。


伊東美織に《今から行きます。》と、

LINEを送信した。


決して足取りは軽くなかったが、

1歩前に進める期待感を感じ始めていた。

谷本がStarbucksに着いた時

二人はもう座って待っていてくれた。


「ごめんね呼び出したのに、最後に来てしまって、」

谷本は伊東美織の隣りに座った。


「いいよ、まだ16時30分前だし。」


藤田鮎子が慰めた、

鮎子の髪は記憶より長くなっていて、

私服だったせいか、大人びていた。


「久しぶり、今日は来てくれてありがとう」


谷本が話した、

「伊東さんも、ありがとう」


そう言って、事故で記憶が無くなっている事を話した、


「藤田さんの事は記憶に残ってて、

その記憶がとても不愉快な記憶なのに忘れられなくて、」


谷本は額から汗を流して話していた、

「だから、藤田さんに謝りたかったんだ、」


谷本は机に頭が付くくらい、

謝罪した。

藤田が優しく

「谷本くんは変わらないね、優しい、」


谷本が

「えっ!」て、

顔で藤田を見た、

「中学の時に私が、出したラブレターの返事が、

大嫌い!!だったもんねー」と、


イタズラな笑顔で谷本を睨んだ。


伊東美織が、それを聞いて

眉を顰めて、「ひど、、!」言いかけて止めた。


谷本は学校から走ってきたのか、

汗が止まらない。


伊東美織が谷本に、

「ココ、お店だから何か買って来たら?」

と、促した。


「そうだね、ちょっと行ってくる」と、

席を外した。


美織は、「あゆちゃん、さっきの話しホント?」

と、こっそり確認した、


鮎子はにっこり笑って、

「それには理由があるのよ、

谷本は忘れちゃってるんだねホントに。」


美織は理由を聞きたかったが、

聞かずに鮎子に言った。

「私が居ない方がいいよね?」

と、言うと

鮎子が少し不安そうな目をして首を横に振った。

「お願い、一緒にいて聞いてて欲しい」


「お待たせ、」谷本が珈琲片手に帰ってきた。


谷本が席に戻ると、

「藤田さんもイヤな思い出を、

今更謝られたってよくわからないよね?」


藤田が少し俯いて

「ホントよく分からないよ、」と小さく呟いた。


美織は鮎子の悲しそうな表情を見逃さなかった。


「谷本くんはホントに忘れてるの?

私がどうやってラブレター渡したか覚えてる?」


谷本は一瞬、伊東の方を見て。

「藤田さんじゃない、誰かが届けにきたんだ、」


「そう、私がクラスメイトの心音ここねちゃんに頼んだから、、」


「あの時は結構落ち込んだよ、」


「ごめん…」


「あの時、ここねちゃんが谷本に

『好きならいいけど付き合うつもりも無いのに、

期待を持たせる様な返事しないでよね』って、

言ったんでしょ。」


フリーズする谷本、

「覚えて無いの?」と、谷本を見た。

「覚えてる、、けど…断片的なんだ。」


藤田は少し、

表情の硬さが取れたように

谷本の失った記憶を少し話してくれた。


いつの間にか、

昔からの友人のように、三人は自然に話していた。


「最後にいいかな?」藤田が言った。


「私が谷本を好きになったきっかけ、中2の話しだよ、

席が近くでね、私が筆箱忘れたんだけど、、

何も言わず谷本の筆箱を私に差し出したの!

一瞬ビックリしたんだけど、

なんか嬉しくって、、多分それがキッカケ!」


谷本は少し恥ずかしそうに笑った。

「谷本は私に書いた"大嫌い"の文字が記憶にあるんでしょ?

 私は今でも谷本が貸してくれた筆箱の方の記憶が鮮明にあるの…」


「だから谷本も、私の思い出

 筆箱にしてくれないかな〜?」

藤田はにっこり立ち上がった。


「私、今からデートなの

 久しぶりに会えて嬉しかったよ」


藤田はそう言って、店を出て行った。

明るく手を振る、藤田は谷本の記憶とは違い

楽しそうだった。


「ありがとう!」伊東美織には

小さな谷本の言葉が聞こえた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


筆箱という、日常の中に溶け込んだ小さな存在が、

谷本にとっては「過去」と「現在」を

つなぐ鍵のようなものになっています。


記憶を失っていても、

感情だけは残っている。

でも、その理由がわからない。


だからこそ、

何気ない一言や態度に、

必要以上に傷ついてしまうのかもしれません。


この回で生まれた違和感は、

後々、静かに効いてきます。


次話も、ゆっくりお付き合いいただけたら嬉しいです。


今週から 土日投稿になります

8話は明日日曜日掲載しますのでよろしくお願いいたします。

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