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第6話  迷走する想い

前話では、美織の日常を描きましたが、

この話では再び谷本の視点に戻ります。

はっきりとした答えがないまま、

心だけが先に動いてしまう感覚。

記憶が欠けているからこそ、

自分の気持ちさえ、うまく掴めない。

そんな「迷い」を、そのまま描いた一話です。

静かに、流れるように読んでいただけたら幸いです。

翌日、朝練が終わってスマホを見ると

伊東美織からLINEが入っていた。


---------------------------------------------

あゆちゃんに連絡してみました。

会ってくれると言ってます。

週末、都合の良い日程はありますか?

---------------------------------------------


谷本は、伊東美織と友達になった感覚でいたが、

そうではない。


伊東美織は真面目に約束を守っているだけだ、

自分から頼んでおいて、

いざ、ホントに会える現実を突きつけられると、

恐怖心が勝ってしまう。


返信を躊躇っている自分に、

腹が立っていた、

伊東さんの、親切心を逃げてはいけない。

と、LINEに返事を書いた。


---------------------------------------------

ありがとう!

日曜日なら16時に部活終わるから

16時30分には、この近くなら行けます。

いかがでしょうか?m(_ _)m

---------------------------------------------


『一緒に来て欲しい、』と伊東美織に

書きたかったが、やめた。


自分の都合で、動き過ぎてる事も

恥ずかしくなっていた。


1年間、問題なく生活できていたが、

失った記憶の不自由さではなく、

記憶に残ってしまった過去と向き合い、

それを清算したいと思ったから

伊東美織に会った時に声を掛けたんだ!

そう、自分に言い聞かせて、

覚悟を決めた。


夕方、部活が終わって

ランニングに行こうと準備していると

伊東美織からLINEが届いた。


---------------------------------------------

あゆちゃん

日曜日の16時30分 OKです

駅前のStarbucksで待ち合わせで良い?

あと、あゆちゃんに頼まれたから、

私も同席するよ。

---------------------------------------------


谷本は伊東が来る事を、一瞬喜んだが、

冷静に考えると藤田鮎子にとっても、

『今更何?怖いから着いて来て!』

って、事なんだろな〜。


これは、藤田鮎子に謝ることが目的

当時のこと説明したいが、

当事者以外の名前が思い出せない。


その時点で、整理などできないことは分かっていたが、

謝ることで何か思い出すんじゃないかという気持ちも強かった。



* 伊東美織の部屋 *


美織はスマホの画面を見つめて座っていた。

藤田鮎子にLINEした事で、

この判断で良かったのか?考えていた。


谷本くんは気にしているけど、

あゆちゃんは、

もう過去の事と忘れてただろうし、

余計な事を、蒸し返してしまったんじゃないかと考えていた。


谷本くん『酷い断り方って、、』どんな断り方かな?


でも、谷本くんには後悔の記憶しか残ってないから、

気になってしょうが無い気持ちもわかる。

私のことも記憶にあるって言ってたけど、、、


たぶん卒業式のことがあるんだろうな…


最後までお読みいただき、ありがとうございます。

好きなのか、気になっているだけなのか。

近づきたいのか、距離を保つべきなのか。

谷本自身が答えを出せないまま、

想いだけが行き場を失っています。

記憶を失ったことは、

過去を失うことでもありますが、

同時に「自分がどう感じているのか」を

測る基準も失っている状態です。

この迷いが、次の行動につながるのか、

それともさらに複雑にしてしまうのか。

次話も、引き続き見守っていただけたら嬉しいです。

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