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記喪転我意 (きそうてんがい)―Lost Memory―  作者: Spumante Rock


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40話 止まった日の訪問者

いつも読んでいただきありがとうございます。

谷本は事故以来初めて学校を休んだ…

身体が起き上がらない…

意識が朦朧として、目眩が治らない。


スマホの電源を切ったまま放置した。


初めてだった…

人からの連絡が怖くて仕方ない。


ベッドに入って、眠りについた…

もう目覚め無ければいいのに、

夢と現実の境目がわからないくらいだ。


記憶を消してください…

そう、願っていた。


夕方になって、

ばあちゃんが呼ぶ声がした。

意識が朦朧とする中…

「寸!!お友達がお見舞いに来たよ〜」


誰だよ…

「ばあちゃん起き上がれないから…ごめん」

と、言い掛けたら


「谷本!大丈夫か〜」

入って来たのは荒木だった。


「荒木…お前え…」


「おばあちゃんありがとうございました、

あと、大丈夫です。」

と、荒木は谷本の部屋まで押し掛けてきた。


「谷本、どうした〜?

足怪我した影響で熱でもでたのか?」


谷本は驚いた表情で荒木を見ていた…

荒木が真剣な顔をして

「なんだよ…恋の病か?」


「えっ…」谷本は否定もできず、

目をそらすしか出来なかった。

「ごめん!急に来て勝手に上がり込んでごめん!」


「でも、様子が気になって…

携帯も見て無いだろ」

「朝からずっとLINEしてるのに、

既読にもならない」


「彼女に振られたのか?」


「失恋して学校休むなんて、

やっていいのは、乙女だけだから…

どうした?聞いてやるから言ってみろ!!」


「荒木…強引だな…」と、吹き出した。


「ありがとう、ちょっと笑う元気出たわ」

そう言って、ベッドに座った。


「そう、ちょっと自分が嫌になってしまって…」

荒木は、イーゼル前の椅子に座った。


「何があったの?

誰にも言わないから話してみな…楽になるかもよ」

そう言って、小さなペットボトルを

谷本に投げた。

「今買ってきた、私が飲みたかったから…」


「ありがとう」

2人はペットボトルを開けた。


「荒木は、思い出したく無い過去ってある?」


荒木は、少し考えて

「あるよ、そりぁ忘れたい事ばっかり。」


「今日、ここに来た事も、

忘れたくなる時が来るかもしれない…

それは、仕方ない。」


谷本は良くわからなかった…

「どういう事?」


荒木は少し笑って

「未来が動けば、環境が変わる。

だから過去では良かった事も、

未来では黒歴史になったりするでしょ、

昔付き合ってた彼氏の名前を、

タトゥーで入れたら別れた…みたいな。」


「頑張って動いた人ほど過去を背負うんだよ、

それだけ環境が変わってしまうから、」


「荒木…聞いてくれる?僕が高校入学した頃、

事故で記憶が無いって聞いた事あるよね…?」


「あ〜聞いてた。」


「それが少し影響してて、

知りたくなった過去を、

掘り起こしてしまったんだ…」


谷本はゆっくり深呼吸した。

「自分の知らない過去は、

人が誰にも言えない過去だったら…

知ってはいけない記憶だったら…」


「どうする?」


荒木が答えた。

「受け入れるしか無いよね…」


「だって、向かっているのは未来なんだから、

未来を変える為に今日行動する、

過去を変える事ができるのは嘘だけ。」


「だから自分で見た事実しか信じない」


谷本は黙って俯き

ゆっくりと話しだした…

ペットボトルの蓋を閉めようとするが

手が震えてぎこちない。


中学校に行き先生と話した事

喜田公司と話した事


その取り止めもない話しを、

荒木は黙って、聞いてくれた。


それから谷本にこう伝えた

「谷本は事故で記憶を無くした…

今ある過去は人から聞いた話しばっかり、

嘘かもしれない。」


「だって、学校の先生だって嘘を、

言ってたわけでしょ…でも、

その嘘は誰かを守ってる嘘」


「過去は変えられない。

谷本は記憶を無くして良かったんだよ…」


「これからの未来を、大切にするべきだ。」


「今動いた行動は、過去は変えられないけど、

明日以降の未来を変えてくれる。」


「じゃあ!私帰る!」


「えっ!急に来て、急に帰るんだな…」

谷本が言うと、


「私は優しくないから…

これ以上いたら、谷本の事…」


「殴りそうだから…」


そう言って、荒木は帰って行った…

谷本は荒木の閉めたドアの音が、

しばらく耳に残っていた…


荒木は谷本の家を出て足早に歩く、

駅に向かう道は、いつもよりも長く暗く感じた。


「あー、来るんじゃなかった〜、

イーゼルに好きな女の絵描いたまま置いてるの見たら、私は諦めて応援するしかないじゃない!」



ここまで読んでいただきありがとうございました。


引き続き次回もお楽しみ、いただけると幸いです。

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