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記喪転我意 (きそうてんがい)―Lost Memory―  作者: Spumante Rock


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38話  記憶と証言のあいだ

いつも読んでいただきありがとうございます。

バレーボールの地区予選大会が終わり、

日常が戻っていた、


変わったことは、

谷本が松葉杖を使って歩くようになった事。


しばらくは不自由そうだ…


部活も休みで、

自宅で安静にするしかなかったが、

谷本は落ち着かなかった。


そうだ、中学校に行ってみよう、

何か分かるかもしれない。


谷本自身は、過去は思い出す必要ないと思っていたが、

美織の事件についてどうしても気になっていた…


谷本は、松葉杖で中学校に向かった。

当時の担任については、多くは無いが記憶が残っていた。

学校に到着して職員室に向かう途中…


「谷本くんかしら?」

女性の教員から声を掛けられた。


「あっ…ハイ…」


女性教員は親しげに、近寄ってきた。

谷本の足を見て、

「久しぶりね、足どうしたの?大丈夫?」

と、声を掛けて、スリッパを出してくれた。


谷本は女性教員に

「すみません、僕、

事故の後遺症で記憶が無くて…」


そう言うと、

「あら、そうなの…じゃあ私の事も覚えてないのかしら?」

と、残念そうに言った。


「すみません…少し聞いてもいいですか?」


「僕達の卒業式の日、火災報知器が鳴ったの覚えてますか?」


女性教員は、

「私は卒業式の日、遅くまで学校いたけど…」

と、少し考えて…


「立ち話し辛そうだから、こっち来てくれる、」

と、職員室の商談席に案内してくれた。


お茶を持つてきて、

1人の男性教員を連れてきた…

「あ、、近藤先生…」谷本の担任だった。


谷本は同級生の記憶は無いが、一部の教員は記憶が残っていた、

「谷本、久しぶりだな。元気にしてなさそうだな…」と、笑って向かい側に座った。


「私も一緒にいいかしら?」と、

女性教員も座った。


「私は美術の教科を受け持っていた、

池田です、全然…覚えて無いかしら?」


と、微笑んだ。

「はい、ホントに記憶に無いです…すみません。」


元担任の近藤が、

「なんか谷本…ずいぶん大人になったな〜」

「事故にあったんだって?…」


「いつだ…?」


先生達は僕の事故を知らない…

「中学の卒業式の日です、」


「それは、もう1年以上経つじゃないか?、まだギブス取れないのか?」


「あっ!コレは事故の怪我じゃ無いです。

先日、部活で…」


「あー…バレーボールか?」


「すまんな〜、何も知らないで…」と、

近藤が頭を下げた。


「いや、大丈夫です。そんなことより卒業式の日の事を教えて頂きたくて…」


美術教員の池田が、

「卒業式の日、火災報知器が鳴ったの記憶にありますか?」


近藤は日直表を取りに行って、

戻って来た…

「谷本…卒業式の日に火災報知器は鳴っていない。

事情がわからないから、何を知りたいか話してくれないか?」


谷本は美織の話しとの食い違いに、

胸が締め付けられそうだった。


それでも谷本は、

知っている内容を全て説明した。

「なるほど…」

近藤と池田は目配せをして、

近藤が話し出した。


「まず、伊東美織については、個人情報もあって谷本に話しが出来ない部分もある。

話せる範囲で答えるから、理解して欲しい。

確かに卒業式の日、怪我をしてご両親を読んだ事実はある。」


「それから、喜田公司の件だが、

当日、伊東美織と会っていたのかはわからない…

そんな話し伊東の口からは聞いていないしな。」


「それに、喜田公司はお前と同じ戸陽高校だ、

科が違うから会わないか?」


「え!!…」知らなかった…

「そうなんですね…記憶を無くしてしまったので…」そう言って考えこんだ、


池田が、

「谷本くん伊東さんとお付き合いしてるの?」


谷本は赤くなって

「イヤ…そう言うわけでは無くて…」

と、言い掛けて、

「まあ…そうなったらいいな〜って思ってます。」


「あら、いいわねー」と、池田が微笑んだ。


「谷本…伊東は元気か?」

と、近藤は優しく聞いた。


「ハイ、元気です。」


結局、そこまでしか聞けなかった。

喜田公司が同じ高校だとわかっただけでも、

かなり有効な情報だ…


先生達にお礼を伝えて、帰ろうとした時。

「谷本くん」

美術の池田先生が声を掛けてきた。

「谷本くん、絵は描いてるの?」


「はい、デザイン科なんで…

いつも描いてますよ。」


そう言うと、


「そう…良かったわ、私は、あなたの描く絵が好きなのよ…

高校の作品展とかあったら、招待してね。」

そう言われて、嬉しかったが、

松葉杖で歩く足取りは、とても重たかった。



ここまで読んでいただきありがとうございました。


引き続き次回もお楽しみ、いただけると幸いです。

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