31話 美織の過去(後編)
いつも読んでいただきありがとうございます。
谷本は
「ごめん、全部忘れてしまって…」
「…」美織は少し間を空けて話しだした。
「その後…教室の前で私が頼んだの、
谷本くんに一緒に来てほしいって…」
谷本は不安そうに、
「なんて言ったの?僕は、」
「谷本くんは、別にいいけど…って、言って来てくれた。」
「中に入ると、喜田くんと数人居たかな…
よく覚えてないんだけど、私は怖くて」
美織は少し、話しのペースを遅くなった。
「そこからは、少し記憶が曖昧なんだけど、
喜田くんと付き合うように言われたから断って。教室から出ようとしたら、誰かに掴まれたの、その後、谷本くんが間に入ってくれたけど、人数の差は大きくて、、」
「谷本くんは教室から、引きずり出された。」
「その後、非常ベルが鳴って
廊下で争う声と、ガラスが割れる音」
「喜田達はその後、
逃げて行ったけど、谷本くんは助けに戻って来てくれたの、
なのに私は、怖くなってしまってよく覚えていないの…」
「その後、先生が来て事情を話して
お母さんに迎えに来てもらったの。」
「だからその後、谷本くんは事故に遭ったって事でしょ?
私はしばらくパニック状態が続いて、
全然、誰とも連絡を取らなかったから。
2年の春に谷本くんと会うまで、事故の事は知らなかった。」
「だから呼び止められた時、卒業式の事を聞かれるのかと思った。」
「当時の私は…」
「その後、情緒不安定になってしまって。」
「高校に通えるようになったのも
入学式から1ヶ月後だった…」
「その時の事を思い出したく無くて、
実は谷本くんと会った時も怖かったの」
「ただ、記憶が無いって聞いて
あの時の事も覚えて無いんだ…って、
何か納得行かない感覚から、
藤田さんの件を聞いて」
「私は忘れたいのに、谷本くんは思い出したいんだ…って、興味に変わってしまったの。」
「谷本くん…話しを聞いて、何か思い出した?」
谷本は申し訳なさそうに、
「正直、何も思い出さないよ…ごめん」
「谷本くん、藤田さんも東堂さんも、罪悪感が記憶の鍵だって言ってたよね?」
「私の記憶の鍵は、これだと思ってた。」
谷本は、早くなる心臓の音がうるさくて耳を塞ぎたくなっていたが、
耳を塞げば、心臓の音は今よりも大きく早くなる事は予想がついた。
そして、何より
事件のキッカケを作ったのは自分なんだと、
急に伊東に対する罪悪感が加速して、
高校時代の記憶をどこかに連れ去られる感覚だった。
「伊東さん、ありがとう忘れたい記憶を教えてくれて、それでも思い出さない自分が情けないよ。」
谷本は美織の前に立ち、
「過去は思い出せないけど、僕は今、
伊東さんが好きだよ。」
美織は、
「…私は、昔から好きだったよ。」
と、笑顔で涙を拭った。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
引き続き次回もお楽しみ、いただけると幸いです。




