30話 美織の過去(前編)
いつも読んでいただきありがとうございます。
「私、谷本くんに嘘をついてた、」
谷本が一瞬不安な顔をした。
「えっ…」想像と違う言葉に不安が顔に出たと谷本は気付いた。
「私、谷本くんと話した事あるよ。」
「記憶に無いって言ったけど、あれは嘘」
そう言って、谷本を見た。
「それは、クラスメイトなら喋る事だってあるよ、どんな関係だったの?」
美織は少し下を向いて、
「仲が良かったわけじゃないの、ただ…」
美織は少し考えて、話題を変えた…
「谷本くんとは小学校6年の時に同じクラスだったの、」
そう言って、1枚の写真を谷本に差し出した。
写真には美織と谷本が楽しそうに笑う写真。
「えっ…これ、僕と伊東さん?だよね…」
小学6年生の自分と美織が笑う写真。
「これは小学校の謝恩会の時の写真で、私達は席が向かい合わせだったの、だから1番2人が目立った位置で写ってる」
「へ〜、こんな写真あったんだ…、僕も記憶を無くしてから、昔のアルバムは結構見たけど、この写真は初めて見るな〜」
「そりぁ初めてだよ、この写真撮ったのお母さんだもん。」
「え〜、そうなんだ…じゃあ、お母さんは僕のこと知ってた感じ?」
美織は頷いた。
「小学校の時、私…谷本くんの事が好きで、
お母さんに頼んで撮ってもらったの。」
谷本は顔を真っ赤にした。
「そうなんだ、嬉しいよ…ホントに」
美織は少し涙ぐんで、
「でも、結局谷本くんに気持ちを伝える事は出来なかった、」
「それどころか、意識してしまうと近寄れなくて、ほとんど話すことも無く中学時代も終わるはずだった。」
谷本が、不思議そうに美織を見た。
「谷本くんは中学の卒業式、まったく記憶が無いよね?…」
美織が真剣に谷本の顔を見て言った。
「ごめん…まったく記憶に無いんだ。」
「ここから先は、谷本くんの記憶に無い、谷本くんの話しにもなるんだけど、最後まで聞いて欲しい。」
「谷本くんは当時、優しかったんだけど今とは雰囲気が違って、もう少し子供っぽい性格だったと思う。」
「だから私も怖くなってしまって、鮎ちゃんのことはこないだ聞いたばかりだったけど、谷本くんが誰かを拒否したって、噂を聞いたの。」
「そしたら、私も拒否されるんだと、怖くなってしまって、出来るだけ近づかないように意識してしまって、結局話せず終わったの…」
「それが中学の卒業式が終わった帰りぎわ、谷本くんが私の所に来たの、」
「え?僕が…?」
谷本は知らない自分の行動に完全に頭が着いて来ない為、混乱していた。
美織は少し、呼吸を整えて話しを続けた。
「伊東さん少し時間ある?…
喜田くんが話したいらしく来てもらえる?」
そう言って来たの。
「喜田くんって誰だ?」谷本は記憶になかった。
「同級生なんだけどね、ちょっと怖い感じの…」
「覚えて無いよね、、」
「私、谷本くんと話しができて嬉しくなってしまって、喜田くんの居る教室までの道のり、谷本くんと少し話しをしたの、」
美織は静かに、微笑んだ。
「覚えて無いよね?」
「ごめん、記憶が無いだ。」
谷本は少し美織の話しが怖くなっていた。
「そうよね、仕方ない記憶喪失なんだもん」
「その時に、小学校の時に謝恩会で席が近かった事を覚えてるか聞いたの?私は楽しかったから…」
「忘れちゃってた?…その時の僕は?」
美織は、谷本の目を見て、
「谷本くん、覚えてたよ…その時の事。
それで、あの時は楽しかったって言ってくれたの…」美織の目から、大粒の涙が流れた。
谷本は
「ごめん、全部忘れてしまって…」
「…」美織は少し間を空けて話しだした。
「その後…」 美織が静かに話し始めた…
ここまで読んでいただきありがとうございました。
丁度、物語の半分まできました。
全60話
後半はいよいよ、
記憶の謎が少しずつ、結び付いて行きます。
引き続き次回もお楽しみ、いただけると幸いです。




