25話 2人の秘密
いつも読んでいただきありがとうございます。
美織と過ごした次の日の日曜日
朝起きてから、谷本は美織の絵をずっと眺めていた。
昨日、美織とキスをした…はずだが、
夢かもしれないと、現実か自信が無いくらいの出来事だった。
あの後、すっかり正気に返ってしまい、
美織と谷本は、それまでの無言が嘘だったかのように喋り続け、美織を送り届けた後。
自宅まで全速力のようなスピードで走って帰った。
どうやら、電車で寝てしまった辺りから、
良くも悪くも、美織を意識しすぎた事で、
完全にペースが狂ってしまったようだ。
それは美織も一緒で、
変な空気が流れていた時間帯は、様子がおかしかった。
キスした後は、今まで通りの2人に戻っていて、
繋いでいた手も離し、キスした事については一言も話題に出さないように会話した。
今日は、大丈夫かな…?
そんなタイミングで、
いつもの東堂美津子からのLINEが入ってきた。
東堂は集中治療室で隔離されている為、
オフラインで作成したLINEを看護師さんが
決まった時間に病室から持って出て、
屋上に行って、通信を繋ぐらしい。
だから僕の返事が遅いと、
僕の返信の受信と、東堂美津子の発信が同時になって、会話がチグハグになる。
それでも、東堂美津子にとっては、
外部との交流は貴重らしく、
見舞いに行って以来、
すっかり仲良く、なっていた。
記憶喪失の事、美織との事、素直に話しができる唯一の存在でもあった。
美織の事が好きになった事、愛ちゃんの事。
何でも話せた。
愛との接し方について、美織に相談できたのも、美津子からの提案だった。
ただ、キスした事は秘密にしておいた方が良さそうだと、秘密にした。
美津子には、
愛ちゃんの事を美織に相談出来た事だけ
LINEで報告しておいた。
《美織の家》日曜日の朝
愛が、美織を起こしに来た。
「お姉ちゃん!朝だよ!起きて!」
いつもなら、愛より先に起きているが、
昨日の夜は、疲労と緊張で中々眠れなかった事もあり、朝が辛い…
そして、足のふくらはぎが筋肉痛で立ち上がるのも困難だった。
「わかったから、ちょっと待ってて。」
愛にはそう言って、ゆっくりと起き上がった。
階段を下りるのも、困難なくらい筋肉痛が痛かったが、愛に「何で筋肉痛になったか聞かれるのも困りそうだった。」
早くしないと、谷本が来てしまう、
何とか最低限の仕事をこなし、着替えて準備が出来た時、谷本が迎えに来てくれた。
「いらっしゃい!寸くん!」
愛が嬉しそうに扉を開けて、
谷本を迎え入れた。
「おじゃまします。」と、
谷本がリビングに入って来た。
「おはよう、伊東さん!」
「おはよう、谷本くん」
少しぎこちない2人の空気を愛も感じとった。
「どうしたの?2人とも、」
「何がよ、いつもと変わらないでしょ!」
美織が少し慌てて返したが、
愛に言い返す事がほぼ無い美織だったので、
すでに違和感が大きくなっていた。
谷本が、持ってきたトートバックから、
美織の絵を取りだした。
図書館の本棚の前に座る美織の姿だった。
「これ、やっと描けたから…」と、手渡した。
美織は絵を眺めて、
「ありがとう大切にするね!」と、
嬉しそうな表情を浮かべた。
「ズルい、お姉ちゃんばっかり!」
愛が羨ましそうに言った。
「愛ちゃんはこの前に描いたでしょ」
谷本が宥めると、
「次はまた私を描いて!」と、
愛が騒ぎだしたので、
美織はもらった絵を、自分の部屋に持って行き、置いて来た。
「さぁ、今日はどこに行く?」
と、話題を変え
「出来れば、あまりお金のかからない場所がいいかな、、今月もうピンチなんだよ」
と、美織が言う。
「じゃあ…図書館に行こうか?」
谷本が提案した。
美織が、
「図書館は昨日…」まで言いかけて
「図書館良いなー!テスト勉強に必要な参考書も探したいし好都合かも、」と言い直した。
愛はどこでもいい性格なので、
図書館に文句は言わなかった。
結局、3人で図書館に行く事になったが、
ぎこちない2人と、上機嫌の愛。
駅までの距離、美織の歩く速度が遅く
谷本も美織が気になってしまう。
いつも3人でいる時は、
愛に意識を集中していても
美織は笑顔で見守る立場だったので、
少しずつ不機嫌になる、
愛に2人は気づけなかった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
引き続き次回もお楽しみ、いただけると幸いです。




