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記喪転我意 (きそうてんがい)―Lost Memory―  作者: Spumante Rock


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第11話  小さな交渉人

偶然の再会は、

ときに予定を大きく狂わせます。


走り続けていた谷本の前に現れたのは、

思いがけない「約束の相手」と、

その隣にいた小さな存在。


この話では、

恋よりも先に、

誰かを思う気持ちが動き出します。

ゴールデンウィーク2日目

谷本は朝のランニングを走りだした。


朝が苦手と言う事もあり、

太陽も高く昇り

暖かい日差しが気持ち良かった。


汗が流れた頃

谷本は足を止めた、

「伊東さん!」

谷本に気付いて美織がこちらを見た。


「谷本くん、今日もランニング?頑張るねー」


そう言うと、美織の隣りに

妹の愛がいた。


「お姉ちゃん誰?このヒト…」

谷本は美織の約束相手が誰か、

分かった気がした。


「伊東さん今からどこ行くの?」

「あー、ごめんね、こないだ谷本くんの誘い断っちゃって、

ゴールデンウィークは両親が仕事で、妹が1人になっちゃうから、、」


と、前置きをして今日は水族館に行くんだと教えてくれた。


谷本は、「俺も一緒に行っていいかな?」

細かいところまで考えていなかった。


ただ、脳から口に直結した電気信号は、

考える時間を与えなかった。


美織は

「別にいいんだけど…」と言いかけると、


「ヤダ!!」妹の愛が口を挟んだ。


谷本は愛に頼み込み、

パンケーキをご馳走することで交渉成立となった。


谷本は

「今財布持って無いから、すぐ取って来る

駅に向かってて、追いつくから!」


と、来た道を来た時の倍の早さで戻った。


家に着くと、いつも持ち歩く

トートバックを1つ持って、駅に向かった。


駅に着くと、

美織と愛がベンチに座って待っていた。


「谷本くん、服装そのまま?」


谷本は、ランニングのウエアー上下

黒のシャカシャカした長袖長パンツにTシャツ

決してデート向きでは無いが、


美織はクスっと笑って、「いこーか?」と、

改札ゲートに入った。


谷本は慌てて、切符を買いに走って

後を追いかけて行った。


美織と谷本の間に、妹の愛が座る。

谷本は美織に、

「ごめんね、急に割り込んじゃって、」

美織は首を振りながら、

「全然大丈夫、助かる。」

と、言って笑った。


「乗り換えは1回みたい、」スマホを見ながら教えてくれた。

谷本はまだ、水族館に行った事が無かった。


魚か、、、

電車では、妹の愛から質問攻めで、

美織とはほぼ会話はなかった。


でも、愛との会話を横から聞いて、

笑っていたので、

美織と話してた感覚で嬉しかった。


水族館では、美織と愛ちゃんが楽しそうに歩く姿を見ているのが嬉しかった。


谷本は思いついたように、

「伊東さん!

 人物クロッキーのモデル頼んでもいいかな?」


妹の愛ちゃんが

「脱ぐの?」

美織が赤くなって「イヤ!」


谷本は慌てて、「違うよ何もしなくていいんだ、

学校の課題で、サラって描くスケッチだよ」


美織は少し笑顔になって

「ふーん、じゃあしょうがない。」


そう言って、また愛ちゃんと水槽を周りだした。


谷本は少し離れた所から、

2人を見守りながら着いて行った。


そのまま、水族館のカフェで谷本がご馳走する事になった。


ペンギンパフェ、アザラシかき氷、チンアナゴドーナツ、

など、とても美味しそうとは言えないネーミングだった、

3人はそれぞれに食べたいスイーツを食べながら、

谷本の絵に着いて話し出した。


「谷本くんは小学校から、絵が上手かったよね?」


谷本は、一瞬事故を思い出した。

「伊東さん、小学校の時俺の事知ってるの?」



ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


今回の主役は、

間違いなく「小さな交渉人」でした。


理屈も遠慮もなく、

素直な感情だけでぶつかってくる存在は、

大人よりもずっと強い説得力を持っています。


谷本は、

恋を意識するより先に、

誰かの時間に入り込む一歩を踏み出しました。


ぎこちなくて、計画性もなくて、

でもそれが今の彼らしさ。


次話では、

この一日の出来事が

谷本と美織、それぞれの記憶に

どんな形で残っていくのかが描かれます。


引き続き、

物語を見守っていただけると嬉しいです。

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