蒼球の黙示録
遥か昔、宇宙がまだ歌い始めたばかりの頃、すべての始まりである神は自らの身体を刻んで世界を創った。その最も神聖な一部、双つの睾丸が、宇宙の深淵に投げ出され、輝く球体となった。それが地球と火星、生命と荒廃の二つの星である。
地球は青く脈打つ神の左の睾丸だった。そこには水が流れ、緑が息づき、生命が歌い踊った。人間たちはその上に生まれ、神の鼓動を感じながらも、その起源を知らなかった。
ある日、とある科学者が火星にて奇妙なものを見つけた。それは微かに脈打つ生温かい模様………まるで人間の血管のようであった。
「火星が生きている?」
前代未聞の仮説に科学者の心臓は走り始めた。彼の脳内にはそこから予想される予測が次々と飛び交う。その中でも真っ先に気になったのは我々の住む地球は如何にのいう疑問だ。
彼はすぐに火星の血管と地球の関係性を調べた。すると彼は予想だにしない事実を知った。それは地球のマントル内にある鉄は地球全体へと血管のように広がっていたことだ。
「流れる鉄、中心から広がる血管………まさしく生きているではないか?!!」
彼はその事実を知るや否やそこから展開される論文を狂ったように書きなぐる。
脳の構造と宇宙の構造に似ているという論文を前に見た。睾丸と脳の神経細胞ネットワークが似ているという論文も前に見た。
つまり!?!この世界は?!!!!!
彼は長い時間をこの問題に費やした。そのなかでもとある疑問が特に彼を苦しめた。それは地球と火星が似ているのに似ていないことであった。
水の痕跡、血管、アミノ酸の存在………生命が存在していてもおかしくないはずだ。しかしなぜ生命だけが存在していない?
彼は全てを投げ捨て実際に火星の地中を調べることにした。それはもちろん簡単な道程ではなかった。だが知りたいという知識欲、見つけたいという探求心それのみが彼を動かした
彼は途方もない時間を火星に捧げ遂に原因を突き止めた。それは壊れた血管だった。彼は少しでもどうにかならないかと数少ない生涯を血管の再生に勤しんだ。
しかしその努力も虚しく彼は今その生涯を終えようとしていた。火星に寂しく一人残された彼は最後に自分の一番神聖なもの鉄に流し込んだ。そのときだった火星が激しく燃え上がり。彼は火葬でもされているのかと錯覚するがそうではなかった。
火星は激しく燃え上がるが熱くない………まるでフェニックスの炎のようだった。彼は何が起こったのかと理解が追い付かない。空に輝く遥か彼方の丸い何が彼を見つめる。
「汝が呪いを癒したのか?」
彼は遠くから響き渡るその声に応える。
「呪い?なんのことだ?私は何かを成し遂げたのか?」
響き渡るその声は笑いながら彼を誉め称えた
「貴様は半神に成ったのだイーセよ。遥か昔に振りかけられたハゼスの呪いを解きこの我スレクラヘを見事に救って見せた。汝の人の子とは思えぬ手腕を私は買い貴様を魂を半分甦らせ探求の半神としたのだ。」
今この瞬間科学者は探求神イーセとなり全宇宙の人の子に未知を指し示す神となったのだ。しかしイーセはなんとも言えないような浮かない顔をしていた。それを見かねたスレクラヘは男に問いた。
「嫌か?」
その言葉にイーセは滅相もないと言わんばかりに答える
「いえ、ただなぜ半分だけ甦らせたのかということ。神とはなんなのかが分からないのです。」
スレクラヘは答えた
「神とは貴様らでいう人間である。そして汝らはその細胞のようなものなのだ汝らが我ら神々の力であり、神々に力を与えられている存在なのだ。もう一つ半分だけ貴様を甦らせたのは人の子らの魂を管理する黄泉の王ハゼスから奪えた汝の魂が半分だけだったのだ。私は再生を司る神でハゼスとは戦争状態にある。」
イーセは質問を重ねる
「魂をもう半分奪い返すにはどうすれば良いのですか?」
スレクラヘは答えた
「黄泉へ行きハゼスから奪い返せば良かろう。これ以上質問はするな。貴様にはまだやるべきことがある」
イーセはスレクラヘに神の船へ乗せられ神々の国へと向かう。その船はとても大きくかつて地球の全ての生き物を乗せたといわれていた。内装は大きく丈夫そうな見た目に反して素朴で面白味のないものだった。
2日程経った頃、神々の国が見えてきた。イーセは神々の国に上陸する前にスレクラヘに神々の国での注意を教わる。
「神は万物が存在する限りそれに対応する神が無数に存在する。そのなかで貴様が関わらない方がいい神だけは教えておこう。混沌の神ケース、終焉の神フェレーナ、黄泉の神ハゼス、崩壊の神、産出の神レオパルド」
イーセは崩壊の神だけ名前を呼ばれないことに気づいた。イーセはその理由を尋ねた。
「少々、悪戯を仕掛けたのだが50点といったところか?」
スレクラヘはフッと鼻で笑ってから理由を話す
「崩壊の神は文字通り崩壊を司る神だ。彼は触るもの全てを崩壊させる。無論自分すらもだ。故に彼には名がない。万物の根源たる崩壊は崩壊しているのだ。もうこの世には完全なる崩壊は存在しない」
イーセはまたもや質問を重ねる
「ならなぜ終焉の神は存在しているのですか?」
「その質問含めれば65点だ。この世には終焉が存在しているしかし終焉は存在していない。何故ならば終焉は存在しない存在だからだ。少なくとも貴様に分かるのは終焉の存在を確認できるほど終焉が存在していないことだ」
イーセはその意味が全くもって分からなかった。
「分からぬだろう?それが彼女の魅力なのだ」
イーセとスレクラヘは船を降りて神々の国の地面を踏みしめた
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