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第9話 ロリ系ドラゴン娘


「あそこか」


森の奥深く、茂っているはずの木々が倒され、


荒野のように砂埃を上げている。


走って向かうとそこには小さな赤髪の少女が倒れていた。




「おい!大丈夫か!?」


赤髪の少女は気を失っている。


「まさか、ドラゴンの下敷きに?」


「ああ、その可能性が高いな」


ブラッドさんは少女の容態を確認する。




「息はある。だが外傷がひどいな。早くギルドに戻って治療した方が良さそうだ。」


「そうですね、俺が連れて行きます。」


俺は気を失っている少女をおぶって、ブラッドさんとともにギルドに戻った。




そしてギルド内の治癒室に少女を寝かせる。




「レイ様!!」


その時バン、と大きな音を立てて開いた治癒室の扉の先には涙目のシュカが立っていた。




「おお、シュカ。よくここが……ぐはっ」


俺を見るなり、助走をつけて俺に抱きつく。




「レイしゃま、レイしゃまああ!ご無事だったんですね…!よかったです!!」


「お、おお。心配かけたな」


シュカは俺の胸で子どものように大粒の涙をこぼす。


本当に心配してくれてたんだな…


嬉しい、嬉しいがちょっと…




「シュカ、く、苦しい」


「はっ、すびばせん…つい…」


この細い腕のどこにこんな力があるんだ…


涙を拭きながら離れたシュカ。




「レイ様!怪我はありませんか!?」


「ああ、俺は大丈夫だ。それよりこの子に回復魔法をかけてあげれないか?ドラゴンに巻き込まれて倒れていたんだ」


「わかりました!」


シュカは眠る少女の側に跪き、手を開く。




「"ヒール"」


その瞬間、緑の先とともに少女の傷はみるみる治っていった。




「……ここは」


「大丈夫か?ここはブロムバーグの冒険者ギルドだ。森に倒れていた君を保護させてもらった。」


ブラッドさんはまだ意識が朦朧としている少女に状況を説明する。


すると徐々に状況を理解したのか、虚だった黄色の大きい目を大きく開く。




「倒れて…はっ、あの方は!?」


あの方?誰が連れがいたのか?


少女は周りを見渡すと俺と目が合った瞬間に、ベッドから降り、俺に抱き着いた。




「え?」


「ちょ、レイ様になにを…!?」


シュカが大声を上げる。


何をしてるんだ?この少女は。




「レイ様というのですね」


「ああ、そうだが」


少女は抱き着いたまま俺を見上げる。




「あの時はよく見えませんでしたが、なんて素敵なお方…あなたが私を助けてくださったなんて運命ですわ」


嬉しそうにそう言う少女。


あの時?いつの話だ?


俺が助けたときは気を失っていたはず…


前に会っていた?



目が覚めるような赤い髪に大きな黄色の瞳、


俺のお腹あたりほどの身長。


いや、知らないぞ。


こんなロリ…可愛らしい子は。




「レイ様、私と番になってください!!」

「「「は??」」」




小さく可愛い彼女の爆弾発言にその場が凍った。


今なんて?




番、つがい、TSUGAI


俺は脳を精一杯動かす。




「あ、あなたさっきから何を言ってるんですが!!レイ様から早く離れなさい!」


ブラッドさんと俺は衝撃で固まっているというのにシュカだけは冷静に少女を俺から引きはがそうとしている。




「嫌です!さっきからあなた誰ですか!?」


「私は、レイ様の世界で一番大事な仲間です!」


だからそこまでは言ってないって。




「仲間?ふーん、私はレイ様の番になる女です!」


それは本当に言ってないって。




そこから彼女たちは取っ組み合いのけんかをしている。


君たちほんとに初対面だよね?




「ちょっと落ち着け!!」


俺が大声を上げると、2人はその場で固まる。


そろそろ俺も限界になってきたぞ。




「赤髪の君さ、」


「エルヴィナとお呼びください、レイ様」


「エルヴィナさ、その番ってゆうのなんなの?」


エルヴィナはパァッと顔を明るくし、俺にまた近づく。




「そうですね。人間の言葉で言えば、結婚が1番近いですね!」


近いですね!じゃねーんだけど!


初対面で求婚してきたんだけどこの子!




てゆうか、人間の言葉で言えばって、この子は


人間ではない…?




「がはは、初めて会った子に求婚されるなんてレイも隅に置けねーなあ!」


ブラッドさんは呑気に高笑いしている。


このおっさん、完全に他人事だと思ってるな。




「ブラッドさん!笑い事じゃありません!」


おうそうだ、シュカ。言ってやれ。




「これは一大事です!この女を今すぐ処刑すべきです!」


それはやりすぎ。




「あのな、初めて会って急に結婚とか言われても無理だ」


俺のその言葉にエルヴィナは肩を落とし、シュカはぶんぶん顔を縦に振る。




「レイ様がそう言われるなら、最初は夜の営みだけの関係だけでも…」


顔を赤くしてそう言うエルヴィナ。


ちょっとまじでこの子何言ってんの?


こんな可愛らしい顔してまさかの痴女キャラ?


その言葉にまたシュカが顔を赤くして怒り、喧嘩が始まった。




「お嬢さん、さっき人間の言葉ではって言ったよな?もしかして人間じゃねーのか?」


さすがギルドマスター。ブラッドさんは俺が気になっていたことをずばり聞いてくれた。




「そうです、私はドラゴンです」


「「「ドラゴン!?」」」

あ、また揃った。




「ドラゴンってまさか、あのレッドドラゴン…」


「そうです、私です」


なんてこった。


こんな可愛い少女がさっきのおっかないドラゴンだと?


確かにあの現場には少女しかいなかったからドラゴンはどこかへ逃げたと思ってたが、まさかこの少女が…




「いつもはこの姿で、静かに暮らしているのですが、発情期に入ると自分自身が制御できす、ドラゴンの姿になって暴れてしまうのです」


「たからこの街に…」


「はい。街を襲ってしまい、本当に申し訳ありません。悪意は決してないんです。」


エルヴィナは俺たちに深く頭を下げた。




「この体質のせいで仲間からも手に負えないと見捨てられ、一人でとうすることもできないまま暴れていたところをレイ様が止めてくださいました。」


そうか。この子もこの子で大変な思いをしていたのか。

小さな少女は、涙を溜めた目を伏せ、肩を震わせている。




「家族でさえも止められない私のこの暴走を止められたのはレイ様が初めてなのです。」


エルヴィナは俺の手を掴む。




「私をレイ様のそばに置いていただけないでしょうか?」


困ったな。いきなり番とか結婚とか言うから、とんだイカレ女だと思っていたが…


この子にも事情があって、結構いい子なのかもしれない。




俺がここで断ったら、彼女はまた一人で暴走を続けるのか。


そんなの答えは一つしかないだろ。




「わかった」


「レイ様…!?そんな」


シュカは何か言いたげな顔で俺を見る。




「シュカ、お前も孤独の辛さは知ってるはず


だ。俺はこの子を見捨てることはできない。」


「…レイ様は優しすぎです。ですが、私もレイ様の優しさに救われた身…わかりました。」


「シュカ、ありがとう」




エルヴィナはまた俺に抱き着いた。


「嬉しいですレイ様!このエルヴィナ、レイ様の番として…


「番にはならない」


「え!?」


「あくまでも仲間としてそばに置いてやる。それが条件だ。」


「当然です」


シュカはそういいながらまた俺からエルヴィナを引きはがした。




「ブラッドさん、ギルド的には大丈夫ですか?」


今まで黙っていたブラッドさんに聞く。


俺たちがこの決断を出しても、エルヴィナは街を襲ったレッドドラゴンには変わりない。


最悪の場合は…




「正直大丈夫ではないな。実際、怪我人も出てる。」


エルヴィナの表情が一瞬にして曇った。




「そう、ですよね。やはり処刑でしょうか?」


「でもな、さっきの話を聞いて同情心がわかないほど俺も鬼畜じゃない。反省はしてるようだし、ギルドの冒険者達とレイのおかげで街への被害は最小、シュカのおかげで怪我人は全員回復している。今後エルヴィナが暴れない様にレイが見張っているっていうなら今回は見逃してやろう。」


「ありがとうございます!」


エルヴィナはブラッドさんに頭が地面につきそうなくらい頭を下げる。


やっぱりブラッドさんはいい人だ。




「ただし、この街の人に絶対にお前が今回のレッドドラゴンであるということを隠し通せ。被害が最小だったとはいえ恐怖心があるだろうからな。」


「わかりました!」


「レイ、シュカ。お前たちも頼むぞ。」



こうして俺たちに仲間が一人増えたのだった。

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