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第6話 初めての依頼


「レイ様!早速依頼を受けましょう!」


「ああそうだな」


依頼は受付の隣のボードにランクごとに紙が貼ってあるものを選ぶようだ。




”ドン”


「あっれ~影が薄くて気づかなかった」


そのとき、ガタイがでかい男と肩がぶつかる。


いや、ぶつけられたが正解だろう。


近くのテーブルで仲間らしき人たちがクスクス笑っている。




なんだこれ、めちゃくちゃ新鮮だ。




今までは初対面の人なんて女性しか寄ってこなかったのに。




そして誰かに肩をぶつけられるなんて経験、もちろん皆無だ。


その衝撃に、怒りよりも新鮮さとワクワクが勝ってしまう。変な話だが。




「あ?何笑ってんだこら」


男は興奮したように俺の胸倉をつかむ。




「ちょっと!レイ様を離しなさい!」


「お?なんだ?女まではべらせてんのか。このひょろっちい体でよ」


男は手に力を入れて、俺の体を浮かせる。


なんて怪力だ。敵にしたくないな。




「レイ様!」


「シュカ、大丈夫だよ」


涙目になりながら心配するシュカに俺はそう言った。


そうだ、せっかくあっちから声をかけてきてくれたんだからこの能力の実験をさせてもらおう。


今までの発動条件は目を見ることだった。


昨日の宿屋の店主にも効いたから男にも効くはず。


まあこれで効かなかったら、詰みだが。




「ふははは、何が大丈夫なんだ?女の前で強がりやがって」


俺は少し顔を上げ、フードの際間から男の目を見た。




――光れ。




「……っ」


男は途端、力が抜けたように膝から崩れ落ち、俺は綺麗に着地する。




男の瞳から生気が抜け、顔に恐怖と混乱が同時に浮かぶ。


「……す、すみませんでした……」


その声は、自分の意思じゃなく、誰かに喋らされてるような棒読みだった。




魂が抜けたような顔をしてそう言った男の言葉にギルド内が静まり返る。




「おい、兄貴どうしたんだよ!」


「そんなひょろいの兄貴なら一発だろ!」


仲間たちが野次を飛ばすも、「うるせえお前ら!行くぞ」と男は言い、一味でギルドを出て行った。




その瞬間、ギルド内は拍手に包まれた。


なにしろ、さっきのやつらは新人漬しと呼ばれ、これまで何度も新人の冒険者たちを辞めさせてきたのだという。


戸惑う俺たちに近くにいた冒険者たちが教えてくれた。




「あいつらを追い返したのは君が初めてだよ!どんな技を使ったんだ?」


「君たち強いのか?ぜひとも僕たちのパーティーへ」


…結局目立ってしまった。



ーーー



一方その頃、ギルドの裏の溜まり場で新人潰し達は言い争っていた。


「兄貴、まじでどうしたんすか」


「俺もわかんねえ」


「「は?」」


「わかんねえんだよ、あの方の目を見た瞬間に急に力が抜けて。」


パーティーのリーダーであり、一番ガタイのでかいダントは目がひどく怯えていた。




「あの方って、ただの新人冒険者だろ!?」


「目を覚ませよ、兄貴!」


「とにかく、あの方は只者じゃねえ。お前ら手出すんじゃねーぞ。下手すりゃ殺される。」


そう言うと、ダントは子分たちを置いて街に消えていった。



ーーー



モンスターの討伐に、薬草採集に人探し、街の掃除、Fランクでも結構依類はあるんだな。


俺とシュカは気を取り直して依頼を決めていた。


モンスターの討伐が高難度で報酬が多いようだが、いきなりってのもな。


ここは無難に薬草採集でも…




「レイ様、これにしましょう!」


シュカが持っているのは報酬が一番高いゴプリン討伐。




「さっきはレイ様に更新料の件でご迷惑をかけてしまったので、この依頼で必ずお役に立てることを証明して見せます!」


なんかえらい張り切ってんなー


この感じ、なんかすごくフラグが立ってる気がする。




「シュカ、初めての依額なんだぞ?別に最初から高難度にしなくても…「ソフィアさん、これでお願いします!」


聞きやしねえ。




半ば強引に初めての依額が決まってしまった俺たちは、さっそく初めての依頼にむけて準備を始めたのだった。


「あの、シュカ」


「なんでしょう、レイ様」


「俺、武器持ってないんだけど」


「お任せください、シュカがレイ様をお守りしてみせます!」


そういう問題じゃない。


てか多分それは男が言うセリフだ。


シュカといると男としての尊厳がことごとく失われていく気がする。




「レイ様はシュカの後ろに隠れていてください!」


シュカが、どれだけ強いか知らないが、背後から攻撃されたら俺終わりじゃね?


そんなシュカは強そうな大さい剣を持っている。いいなあ。


念のためにアイテムボックスに入れていたらしい。140年生きてるからな、すごいのを持っていておかしくないけど。




「着きました!この辺ですね!」


ギルドから教えられた大体の場所にたどり着いた。


やばい、怖い。


転生してから7年、喧嘩もろくにしたことないのにいきなりモンスター討伐なんて。




「そうだな」


ビビる気持ちをシュカに悟られないように必死にクールに振る舞う。




その時、カサカサという草の音と同時に10匹ほどのゴブリンが姿を現した。


ゴブリンたちは武器を持ってこちらに迫ってくる。


お、おいいきなり?


「レイ様、下がって」


そう言ったシュカはゴブリンたちに立ち向かって、1匹、2匹、すごいスピードで剣を振るい、次々とゴプリンたちを倒していく。


あっという間にすべてのゴブリンたちを討伐してしまった。


やばいシュカ、すげ一頼もしい。




「レイ様、残党がいるかもしれませんのでそこにいてください」


「お、おう」


てか、シュカってすげ一強いのでは?


いつも俺の後ろをとことこ付いてくる彼女と大違いだ。




「来ました」


その声にシュカの視線を先をみると、さっきとは桁違いの数のゴブリンの群れがいた。


「お、おい。シュカ、大丈夫かこれ」


「これはちょっと、剣術ではキリがありませんね。レイ様、少しお下がりください。」


俺は言われた通り、後ろに下がる。


剣を置いたシュカは手のひらを空に掲げる。


「これで片づけます。澄み渡る天よ、光を放て。高級光魔法、スパークルストーム」


その瞬間に、光の矢が無数に空から降り、そこにいた無数のゴブリンたちを一掃した。




…う、そだろ。


あの数のゴブリンを一気に。




「これでもう気配はなくなりました。レイ様、出てきてください…」


「お、おい、大丈夫か!?」


フラっと倒れかけたシュカを俺は駆け寄って支える。




「すみません、魔力を使いすぎたようです」


「ありがとうシュカ、助かった。お前強いんだな。」


「いえ、レイ様の足元にも及びませんが、お役に立てて、シュカ感激です」


待て、シュカは俺をなぜ強いと思ってるんだ?




「俺は別に強くないぞ。シュカのほうが強い」

「またまた、ご謙遜を」


全くもって謙遜してない。


そもそもモンスター相手に戦ったことなんてないし…

ドン、ドン、

魔法なんて使えないし…

ドンドン…

剣だって…




「おい、これ何の音だ?」


「レイ様…少しまずいことになったかもしれません」


後ろを見ると、今までのゴブリンと比べ物にならないほど大きなゴブリンがこちらを見ていた、


はい、フラグ回収。




「レイ様、少し離れてください」


「いや、シュカは!?」


「私はなんとか最後まで戦ってみます」


そう言うシュカはすでに足がふらふらで戦える状況じゃない。




おい、聞いてねーよ。


ほんとにこれFランクなのか?


俺が戦う?そもそも俺のこの能力、魔物に効くのか?




わかんねー。わかんねーけど、シュカがここまで頑張って戦ってるんだ。


ここで逃げたら王殺しなんてできねーだろ。


「シュカ、下がってろ。俺がやる」


「レイ様…」


俺はフードを下し、シュカの前に立つ。


「これ、借りるな」


そして、地面に刺さっていたシュカの剣を手に取った。


効かなかったらその時だ。




フードの影に隠れたまま、俺は威職している巨大ゴブリンの目をしっかり捉えた。


一瞬だけ静寂に包まれたような感覚に陥る。




その時、巨大ゴブリンの大きな目が赤く光る。




ーーよし、光った




「ゔゔゔ」


巨大ゴブリンはドスン、と大きな音を立ててその場に跪く。




今だ。




「死ねー!!!」


俺は剣を振りかざし、ゴブリンの元へ走る。


"ドン"


その瞬間、ゴブリンは急に思考停止したように前に倒れた。




え?俺まだ何もしてない。


戸惑う俺の前で、巨大ゴブリンはびくとも動かない。




「レイ様ー!!」


シュカは興奮した様子で俺に近寄る。




「さすがレイ様!!シュカは感動いたしました!!あんな巨大な化け物を一瞬にして倒される剣さばき。凡人には見えないまさに閃光の剣…カッコよかったです!惚れ直しました!」


…何言ってんだ。


剣さばきもなにも俺斬ってないし。




「シュカ、この巨大ゴブリン死んでるのか?」


「はい!魔力が感知されないので死んでます!」


「俺が倒したのか?」


「もちろん!シュカは何もしておりません!」


ほんとに?


上からシュカが魔法落としたとかじゃなくて?




ーもしかして本当にこの能力で倒せた?




「レイ様!早くゴブリンの右耳を切ってギルドに戻りましょう!」


こうして能力に疑問を残しながらも俺たちは、初めての依頼を終えたのだった。

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