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デスボに魅せられし仲間たち

 モヒカン男に——名前は確かモヒートと名乗っていたな。

 彼に引っ張られて神殿らしき場所を出ると、そこはどうやら城だったようで、眼前には城下町が広がっていた。


「ああ、それでか」


 僕は街を行く人々を見て納得する。

 獣人や羽のある妖精、爬虫類顔の亜人種たち。

 この世界で、モヒートの悪魔メイクに反応する人がいないのは、『そういう顔の種族だと思われているから』だな。


「で、ヴェイス!

 破壊神のいるっていう北はどっちだ?」

「この街道を進んだ方向です」

「ちょっと、二人とも!

 破壊神への道中って危険なんじゃないの?」


 足早に破壊神退治へ向かう二人を呼び止める。


「たしかに、モンスターが出ますね」

「やっぱり危険なんだ!?」

「しかし、エルフであるわたしは上級魔法が使えますから問題ありません」

「俺はデスボイスが使えるぜ!」

「デスボイス!?

 師匠、実に強力そうな名前の技ですね!」

「そういうのいいから!

 なんか、武器とか必要なんじゃないの?」

「それでしたら!

 ちょうど、この街には凄腕で評判の鍛冶屋がいますね」



 ◆ ◆ ◆



 エルフの青年——ヴェイスの案内で、街にある武器屋へとやってきた。


 奥からは、カンカンと職人たちが鉄を鍛えているらしき音が日々言いてくる。


——カンカン、カンカカン、カカカカン、カカカカカ!


 複数の職人がいるのだろう。

 奥の工房から響いてくる音は、何重にも聴こえた。


「ここのドワーフの職人は両手で金槌を振るう二刀流で、同時に八本の剣を鍛えられるんですよ」


 ヴェイスの説明を聞くや否や、モヒカン男はずかずかと奥の工房へと勝手に入っていた。


「お、おいちょっと!」


 慌てて追いかけて中に入ると、8つの炉に取り囲まれた小柄な髭モジャ筋肉男がいた。

 複数の鍛治職人がいるのかと思ったが、工房には彼一人しかいない。

 両手には鉄槌を持ち、リズミカルに武器らしき金属を叩いている。

 しかも、8つの炉を同時にだ!


『ヴォ”エ”エ”エ”エ”エ”エ”!!

 肉を焦がす灼熱!!

 何度も何度も鉄槌を振り下ろす!!

 悲鳴を上げても止まらない!!

 逃れられない運命ィ”ィ”ィ”ィ”ィ”ィ”ィ”ィ”ィ”ィ”!!』


 ちょっと!?

 なんで歌い出した!?


——ダムダムドン、ダンドドン、ズドドド、ダダダダダダダーン!


 彼のデスボイスと共に、金槌の音が変化する。

 これはドラムの音なのか!?

 金属のぶつかる音じゃないだろ!


「ふう。なんじゃ、お主らは!?」

「わたしたちは勇者パーティ。

 これから破壊神を倒しに行くので、武器を調達しに来たのですよ」

「そんなことを聞いているんじゃない!

 なんだったんだ、今の音は?」

「デスメタルだぜ。

 今の音がオメーの求める魂の音色だ!」

「魂の……!

 どうりで、いつも以上に鍛治のキレがあった」

「よし、オメーも一緒に来い」

「ぜひそうさせてもらおう」

「俺はモヒート、こいつはノゾム!」

「わたしはヴェイス」

「ワシは鍛治職人のドワムじゃ」


 ひいい!?

 僕が見ている前で、どんどん話が進んでいく。

 今度は『ドワーフのドワムが仲間になった』だな?


「ぼ、僕たちは、身を守るための武器を探しに来たんです!」


 当初の目的をドワーフに伝える。


「好きなものを持っていけ!

 旅に出るなら、しばらくは閉店だからな」

「俺はこの鉄の大斧にするぜ」

「わたしは魔法が使えるので、ここにあるような武器は要りませんね」


 僕は戦いたくないので、この店に唯一あった防具——大盾を持っていくことにした。



 ◆ ◆ ◆



 街を出て草原を抜け、森までたどり着いたところで辺りはすっかり暗くなっていた。


「わたしは『旅の吟遊詩人』をやっていましたからね。

 ここはお任せください」


 エルフのヴェイスがテキパキとキャンプの準備を進める。

 実に頼もしい。

 けど……僕はなんでこんな旅しているんだっけ?

 女神や王様に何か言われたとして、断る選択肢もあったはずなのに。

 いつもあの男——モヒートが勝手に話を進めてここまで来てしまった。


「こんな感じで、任せたぜ!」

「ワシにかかれば朝飯前じゃよ!」


 そのモヒートはというと、ドワムと何か相談している。

 僕は破壊神に会っても何もできないからな!

 きみたちで勝手に倒してくれ!



 ◆ ◆ ◆



 翌朝。


——ギャギャギャギュイーン♪


 派手な音で目を覚ます。


「ギャハハ!

 マジで朝飯前にやってくれるとはな!

 さすが凄腕の鍛冶屋だぜ」


 モヒートが鉄の大斧を振り回してご機嫌に叫んでいる。

 朝から悪魔メイクがバッチリすぎるな。


 ん? な、なんだあれ!

 鉄の大斧に、弦が引いてある!?

 まるでギター!?


「師匠、さすがの音です!

 わたしがやるとどうしてもこう——」


——べべべべン♪ ビーン♪


 ヴェイスはリュートの音ではないが、ギターの音とも違う音を奏でた。

 ベース……か?


「オメーはそれでいいぜ!

 それが、オメーの魂の音だ」

「わたしの、音……!」


——べべべべン♪ ビーン♪


 ヴェイスはその言葉に吹っ切れたのか、嬉しそうにリュートを奏でた。

 なんだこれ?



 ◆ ◆ ◆



 森の奥深く、僕たちは狼の群れに囲まれていた。

 腹をすかせた狼たち。


「ひいっ」


 僕は大きな盾に身を隠すことしかできない。


「こいつはやべえ!

 というわけで、オメーら行くぜ!」


——ギャギャギャギュイーン♪


『ヴォ”エ”エ”エ”エ”エ”エ”!!

 腹をすかせた狼!

 肉を切り裂き牙を剥く!

 今夜は人肉パーティだァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”!!』


 え、演奏!?

 モヒート、歌っている場合じゃないだろ!


——べべべべン♪ ビーン♪

——ズドドド、ダダダダダダダーン!


 ヴェイスとドワムも演奏を合わせ始めた!?

 も、もうお終いだああー!


「…………?」


 だが、無防備な僕たちに対して、狼たちは襲ってこない。

 大音量にひるんでいるのか?


 !?


 いや、そうではない。

 狼たちが演奏に合わせて頭を上下に——ヘドバンしている!


「ウォウ♪ ウォウ♪ ワオーン♪」


 ついには曲に合わせて、狼たちの遠吠えが始まった!


「ノリのいいオーディエンスだぜ!

 センキュー!

 オメーらも一緒に地獄へ送ってやるぜえ!」


 こうして、僕たちの旅に狼の群れが加わった。

 山を越えたころには、狼の他にも熊やらゴリラやらゴブリンやらのモンスターも観客となり、総勢50匹を超える軍団となっていた。

 なんだよこれ、こええよ!


ヴォ”エ”エ”エ”エ”エ”エ”!!

作者の伊勢カインだぜ!

次回、ついに最終回! 長らくの応援ありがとう!

高評価と、この話の感想をよろしくな!

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俺だ。作者の伊勢・カインだ。
よかったら、これも読んでくれ!
おっぱい揉んだらレベルアップ!
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