1 2学期の期末テストが終わって
あれから、2カ月が過ぎようとしている。
12月XY日、期末テストを終えたわたしは、解放感に包まれ、晴れ晴れとした気分で、シーサイドタウンのセンター街を歩いている。
センター街は、港町中学校から歩いて10分くらいのところにある繁華街だ。赤、緑、白のクリスマスカラーで染まっている。
テストを受けてみて、手ごたえはいつものことながら、国語と英語以外はイマイチという感じだが、この街を歩いていると、今はそんなことを気にしていられない。
この街のイルミネーションや、大きな買い物袋を両手にさげて、うきうきしている通行人を見ていると、心が弾んでくる。
わたしは、今日発売の若手作家たちのミステリー小説の雑誌を買いに行く目的で街に出たのだけれど、大きな買い物袋をさげている人たちを見ていると、誰かにプレゼントを贈りたくなった。
今まで、プレゼントは、親や親戚からもらうばかりで、誰にもあけだことはなかった。
真っ先に浮かんだのは、真司の顔だった。今年はよく励ましてもらったし、いいかも知れない。
でも、何にしよう?
わたしはしばらく、ショーウインドーを見て回った。
スーツ、宝石、革靴、ぬいぐるみ、プラレール……。
中学生がもらって喜びそうなものは、中々見つからない。
真司は自転車によく乗っているみたいだし、今は寒いし……、そうだ、これにしよう。
わたしの目は、スポーツ用品店のショーウィンドーに止まった。
マウンテンバイクに乗ったマネキンが被っている青い毛糸の帽子だ。
近づいて値札を見て目を疑った。
3500円。毛糸の帽子がどうしてこんなに高いのよ。
よく見ると、IZUNOとメーカーの印が入っていた。ブランド品というだけで、こんなに高いのね。確かに形はいいけど……。
わたしの所持金は、2000円しかない。両親は厳しいので、お正月までお小遣いはもらえそうにない。困ったな。せっかく、いいもの見つけたのに……。
わたしはあきらめて、本屋さんに戻ろうとUターンした。念のため、反対側のショーウィンドーも見て回った。
仏壇店、お茶屋さん、お花屋さん、真司にあげられそうなものは、見当たらない。
本屋さんの1軒手前まできてみると、色とりどりの毛糸の山の上に、真っ白なセーターと青いマフラー、さっきのスポーツ用品店で見たものとよく似た青い帽子が釣り糸で、吊られていた。
手芸店のショーウィンドーた。左端に、
並太毛糸1玉、アクリル 100円、
純毛 300円
というビラが貼ってあった。
なんだ、灯台下暗しじゃない。編めばいいんだ。編み物は、家庭科の時間に少し習っただけでたよりないけど、これなら予算内だ。
わたしは、早速、店内に入った。毛糸のコーナーは、冬真っ盛りとあって、何十色と並んでいる。青がいいと思ったけど、考えてみると、街を歩いている人はそんな色の帽子を被っていない。真司だって、そんな色の帽子をもらっても困るかも知れない。髪と同じ黒にしよう。
店員さんが、帽子は2玉でできるといったので、練習用にアクリル2玉、プレゼント用に純毛2玉と、その帽子の作り方が載っているミニ本を買った。
ー☆ー
家に帰って、その本を開いてみると、家庭科の授業で習った、こま編みだけでできるものだった。これなら、楽勝と思ったが、編み始めると、けっこう手こずった。
授業ではまっすぐに編んでいれば良かったが、帽子は円形に編んでいかなければならない。本のとうりに編んでいるつもりでも、中々ちゃんとした円形になってくれない。わたしって不器用だったんだって、再認識させられた。
結局、この日は途中で投げ出したが、店員さんの話では、慣れれば1日でできるといっていたし、クリスマスイブまでには充分時間があるので、あきらめないで続けることにした。
真司には内緒にして、明日から昼休みは、家庭科室ね。
わたしは、ベッドの上のスヌーピーのぬいぐるみに話しかけた。
読んでいただき、ありがとうございます。
「シャーロック・ホームズ未来からの依頼人ー麻子と真司の時空旅行ー」の続編短編です。
クリスマスの物語です。
「青いガーネット」というタイトルは、ホームズシリーズのクリスマスの物語のタイトルをいただきました。内容は全く違いますが、楽しんでいただけたら、嬉しいです。
「麻子と真司の物語」ショートショートもよろしくお願いいたします。
初投稿作品です。