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〇〇な子はかわいい  作者: 車男
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学校帰りの女の子はかわいい

 「つぎは、○○、〇〇、お乗り換えは前方の改札から…」

大学の授業を受けた帰りの電車内、俺はついうとうとしてしまい、乗換駅で慌てて目を覚ます。今日の授業は1限と2限。帰ったらまずは昼寝をしよう。電車が駅につくと、俺は一度改札を出て、それまで乗っていたJRから地方私鉄に乗り換えた。列車はすでに来ていて、平日のお昼とあって、車内には俺一人しかいなかった。2両編成の前の方の車両に乗って、クロスシートの端っこに座る。次の発車は約10分後。スマホで友人のつぶやきや今日更新されたマンガを見て過ごすことにする。

 数分後、にぎやかな笑い声とともに高校生と思しき女子が2人、乗ってきた。制服ですぐにわかる学校。今列車が止まっている駅の近くにある、有名な女子高の生徒だった。制服にしてはあまりにもかわいい、紺色のワンピースタイプ。夏真っ盛りは過ぎたものの、まだまだ暑いはずなのに、2人ともその上に白いカーディガンを羽織っていた。あまり半そでから腕を出したくないのだろう。けれどスカートは短めで、素足が膝の上までのぞいている。ストレートな髪の長い一人は、制服よりも濃いめの紺ソックスを、くしゅっとして下げて履いていた。靴は一般的なローファーだ。そしてもう一人、ショートな髪でボーイッシュな感じの女の子は、有名ブランドのスニーカーを履いていた。一瞬、靴下の類が見えなかったのだが、履いてないのかな…?そういった女の子に目がない俺は、スマホの画面を見ながら、目の前に座ったその女子高生二人の挙動にも注意する。最近は視線を向けるだけでも危ういので(もちろん、盗撮なんてご法度だ)、視線に気づかれないように、視界の端っこでその二人を観察することにする。

 車内は冷房が効いていて、確かに半そでだと風が直接当たった時に寒く感じることもある。2人はカーディガンを着たまま、良さそうに肩をくっつけて、ボーイッシュな子の持つスマホの画面を一緒に見ていた。その子のカバンには、最近流行りのスマホゲームのキャラぬいぐるみがくっついている。よくよく見ると、もう一人の方にも、同じゲームの別キャラクターがくっついていた。2人とも好きなのかな。かくいう俺も、一応、自分のスマホには入れてあるんだけれど。最近ログインしてないなと思いだす。

 2人がどこまで乗るのかわからないけれど、やがて発車時刻が来て、列車は扉を閉め、時刻表通りに発車した。ゆらゆら揺れる車内で、前に座った2人は相変わらずスマホを見ている。やがて紺ソックスを履いた子が、前に伸ばしていた足をいったん引いて、ローファーから両足ともかかとをパカっと浮かせた。そしてローファーのかかとを床につけ、素早い動作でグイっと足をそこから引き抜く。右足のローファーがバランスを崩して床に落ち、パカン、というかすかな音をたてた。音に気付いたのか、ボーイッシュな方が下を向くようなしぐさを見せたけれど、何事もなかったかのようにまたすぐスマホに戻る。かわいい制服のかわいい女の子が靴脱ぎをしている。その場面が見られただけでも今日は最高にラッキーだ。

 列車は一つ目の駅について、数人の乗客を乗せてまた発車した。相変わらず俺の周りには誰も座らず、向かいの席もガラガラのままだ。長い髪の子がローファーを足でもてあそぶ中、もう一人も脱いじゃえ…!という念をおくっていると、ついにその時が来た。

 ちょうど見ていた動画が終わったのか、スニーカーを履いた子が、一度スマホを膝の上に置くと、かがんでそのひもを緩め始めたではないか。右足、左足と、ひもを緩めて手で靴の上部を広げる。そしてかかとの部分を手で押さえると、ぐいっと靴を脱いでしまった。引っかかりながらも現れたのは、なにも履いていない、素足だった。期待通り、素足でスニーカーを履いていたようだった。

 スニーカーの子は、右足、左足とスニーカーを完全に脱いでしまうと、素足をその上に乗せた。赤く火照った足の指がくねくね、と動いている。そしてそのまま、またスマホを触りだした。ローファーの子も、相変わらずローファーをパカパカ、くるくる、動かしている。今日はなんて運がいい日なんだろう。

 やがて列車は駅について、また扉が開く。数人の客が乗ってきたが、2人の女子高生は我関せずという感じで、スニーカーやローファーを脱いだままだ。そしてまたすぐに発車する。スニーカーの子は足の指でスニーカーのひもをいじいじ。もみもみ。ローファーの子はあいかわらず、足先でくるくる回したり、足を出したり引いたりしてもてあそんでいた。しばらく2人ともそれぞれのスマホの画面を見て無言で座っていたが、列車がまた駅にとまったときにふいにローファーの子が話しかけた。車内にはまだまだ人は少なくて、彼女たちの話声は反対側の俺の方まで聞こえてきた。

「あれ、ニカちゃん、なんでハダシなの?」

ニカちゃん、と呼ばれた子の方は、足をグイっと前に伸ばしてスニーカーから浮かせると、足の指を空中でくねくねさせながら、

「え、今気づいたの?あたし、ずっとハダシだよ今日」

そう言って、伸ばしていた足のかかとをそのまま床に着けてしまった。足の裏をこちらに向けたまま、気持ちよさそうに足指をくねくねと動かしている。

「え、まじ?どして?」

「えー、だって今日暑いじゃん?」

「まあねー、もうすぐ10月なのにねー」

どうやらスニーカーの子は、暑いからという理由で靴下を履いてこなかったらしい。一日中素足で過ごしていたのか…。同じクラスの子がうらやましい。

「ローちゃんも、脱いじゃえば?靴下」

「え、私も?」

反対側に俺がいるにもかかわらず、また足をググっと伸ばしながら、完全にリラックスした様子でニカちゃんはローちゃんをさそった。もじもじしていたローちゃんと呼ばれた子は、周りをうかがうそぶりをして、危うく俺と目が合いそうになりながらも、

「うん、じゃあ、脱いじゃおっかな」

とつぶやいて、座ったまま紺ソックスをするすると脱いでいった。判断基準はどうだったんだろう…?脱いだソックスは丸めて、横に置いているカバンに入れる。素足になったローちゃんは、ローファーの上に足を置いた。よくよく見ると、足先に赤いペディキュアを塗っていた。ニカちゃんもそれにすぐ気づいた様子で、顔をローちゃんの足に近づけて、

「あれ?あれあれ?ローちゃん、つめ!」

「あ、これ?えへへ、日曜に、塗っちゃった」

そう言って、恥ずかしそうに右足を左足の上に重ねて置いた。足の指はそんなに動かない。

「えー、かわいい!いいなー」

「でも、学校で見つかったらまずいからね…。ニカちゃんはやっちゃだめだよ?」

素足をローファーに突っ込みながら、ローちゃんが言う。どうやら2人の学校では校則違反らしい。真面目そうな子がちょっとした違反をしているのを見て、またドキドキしてしまった。

「やらないよー。あたし、それよりハダシでいたいもんね!あ、もうすぐ着くよ」

「ホントだ!あ、靴下…」

「いいじゃんいいじゃん!」

列車はまた駅に着きそうで、どうやらここが2人の下りる駅らしい。残念ながら俺が下りるのとは別の駅だった。一緒に降りてしまうと、次の列車までけっこう待つことになるので、泣く泣くここでお別れをすることにする。降りる間際、ローちゃんは靴下を履きなおそうとしたけれど、もちろんそんな余裕はなくて、素足にローファーを履いたまま、ニカちゃんに連れられて下りていった。ニカちゃんはもともと靴下を履いていなかったから、素足をスニーカーに突っ込んで、しっかり履く間はなかったのか、かかとをふんずけているのだった。扉が閉まって、列車は発車する。2人は楽しそうに、そのままの格好で跨線橋を上っているところだった。


つづく

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