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〇〇な子はかわいい  作者: 車男
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夏期講習の子はかわいい

 「ねえねえ、あの子、今日からなのかな?」

「ん、そう、みたいだね」

夏休みが始まった初日、ワクワクドキドキ…かと思ったら、塾の夏期講習も同時に始まった。まだ中学2年生だけど、来年は受験生だし、ということで通うことになってしまった。少人数のクラスなので、学校は違うけれどみんな顔見知り。そして夏期講習の初日、新しく一人の女の子が僕の前の席に座っていた。夏らしく半そでのTシャツにショートパンツ、そして足元は中学生らしい運動靴だった。靴下は、履いてる、のかな…?まだ後ろ姿しか見えないけれど、髪は肩にかからないくらいのショートヘア。ちょっと机が大きいのか、足先しか床についていないのがかわいく見える。

 僕が通う塾は私服OK。ちなみに僕は私服選びがめんどくさいので、夏休みでも毎日制服で行っている。隣に座って、さっきから新しいその子のことを気にしているのは、同じ学校の佐々木さん。学校では頭がよくて結構かわいいとウワサになっている。黒く長い髪を下ろして、背は僕と同じ、155㎝くらい。目鼻立ちは端正で、アイドルグループにいてもおかしくないくらい。僕が彼女と同じ塾に通っているというのは、まだ誰にも言ってない。彼女からもそれは言ってないみたいだ。もし知られてしまったらきっとみんなここに来るんじゃないかなあ…。

 担当の先生が入ってきて、1時間目が始まる。授業はホワイトボードを使った集団形式。僕たちは専用のテキストを使って勉強する。夏期講習は1年生と2年生の1学期の復習だ。もう習っていることばかりだけれど、忘れていることもあったりする。授業は夕方6時半から9時半まで。それが終わると確認テストをして、終了という流れだ。今日の1時間目はその説明。時間割や、塾の決まり、入試の話を聞いていく。学校ではないから、転入生紹介なんかはなくって、普通に授業が始まっていく。


 「こんにちは、結城ゆうきさん、っていうの?」

「あ、うん…」

1時間目が終わった後の休憩時間、コミュ力の高い佐々木さんがさっそく声をかけていた。気になって仕方なかったのだろう。

「あたし、佐々木サキっていうんだ。よろしくね」

「あ、うん、よろしく…。ウチ、結城ユキっていいます」

「どこからきたの?」

けっこうぐいぐい行く佐々木さん。結城さんも、少しばかり押されながら、会話を続けている。大人しい子なのかな。そこから先は、佐々木さんの質問に結城さんが答えていく感じで、会話が続いていった。

「あ、もう始まっちゃう。またあとでね!」

「うん」

休憩時間は10分ほどで、佐々木さんはまた僕の隣に戻ってきた。前の席の結城さんは、ホッとした様子でテキストを開いていた。佐々木さんとの会話を聞いていてわかったのは、結城さんは帰省してきたようで、夏休みの間だけ、この塾に通うことになったらしい。休みなのに大変だなって思う。出身は関西の都会の方。ここまでは車で来たらしく、移動がすっごく長かったって言っていた。制服も一応持ってきているらしいけれど、私服OKだからってことで、私服で来ているらしい。

 1コマ60分の授業は淡々と進んでいく。テキスト演習して、解説があって…、の繰り返しで、だんだんとうとうとしてきたのは30分ほど経った頃。ふと前の席の結城さんを見てみると、意外なところに気が付いた。あれ、結城さん、裸足になってる…!

 さっきまで運動靴を履いていたはずだけれど、その靴は机の下に脱ぎ置いて、完全に裸足になった足を椅子の下で組んでいた。右足の足先だけを床につけて、真っ赤っかになった足の裏を僕の方に向けているのだった。大人しい印象の結城さんがこんな大胆な行動をとるなんて。僕はうとうとしていた目が一気に覚めてしまった。さっき靴下を履いてるかどうか気になってはいたけれど、やっぱり履いてなかったみたいだ。脱いだ靴下が見当たらないし、さすがに靴下を脱いでいたら気づくはずだ。

 それからの結城さんは、片方ずつ足を組み替えながら交互に足の裏を見せてくれていて、結局その授業が終わるまで、靴を履きなおすことはなかった。休憩時間に入ると、佐々木さんが待ち構えていたかのように結城さんの目の前に座って、お話を再開した。結城さんはあわてて、脱いでいた運動靴に素足をスポッと入れる。ちょっとだけ靴が小さいのか、足を完全には入れられずに、両足ともにかとをぐいっと踏んずけていた。休憩時間はすぐに過ぎ去って、佐々木さんがまた席に戻る。結城さんは安心したかのようにまた靴を脱いでしまって、裸足の足を気持ちよさそうに外に出していた。椅子の下で足を空中に浮かせて、足の指をくねくねと動かしていた。

 「はい、ではいまからテストを配ります。終わった人から持ってきてください」

3時間の授業がおわって、その日の確認テストタイム。結局結城さんはその後1度も靴を履きなおすことはなくって、気持ちよさそうに足の裏を僕の方に向けて、足の指をくねくねと動かしていた。土足の床に足を付けているので、足先がちょっとずつ黒っぽくなっていくのがますますかわいく見えた。

 テストが始まって10分ほど経った頃、佐々木さんが一番に席を立った。まあこれはいつも通り。僕は前の席の様子が気になっていつもより遅れている。相変わらず結城さんは裸足のままで、なかなかのスピードでシャーペンを走らせている。同時に足の指もくねくね、もにもに…。いけないいけない、早く解かないと!

 ガタン、と物音がしてふと前を向く。ちょうど、結城さんが席を立ったところだった。もう終わったのか。と思いながらまた紙に目を戻そうとすると、彼女の足元が目に入って目が覚める。靴を履きなおすことなく裸足のまま立ち上がっている結城さん。そのまま前に行こうとしてはっと気づいて、あわてて靴を履きに戻っていた。顔がちょっと赤くなっていて、とてもかわいい、と思った。ちなみに、佐々木さんも結城さんも、一発100点だったらしい。


 「おつかれさま、結城さん!」

「あ、おつかれさま」

テストも無事終わって、今日の授業はすべて終了。帰り支度をしている間、佐々木さんが声をかける。結城さんはさっきまで靴のかかとを踏んでいて、いまようやくきちんと履きなおしたところだった。足先を床にトントン、として調整している。

「結城さん、アタマいいんだね!」

「いやいや、佐々木さんこそ」

「えへへえ、負けないよ!」

初日ですっかり仲良くなったらしい2人。並んで一緒に階段を降りる中で、佐々木さんがこっそり話しかけてくる。

「…結城さん、ハダシ、みたいだよね」

「えっ、う、うん…」

「なんかそれ、かわいくない?」

「そ、そうかな…」

ここで「ウン」といってしまっていいのかよくわからずに、なんとなくはぐらかしてしまったけれど、大丈夫だったかな…。ちなみにその翌日も、結城さんはしっかりと(?)素足で履いていた靴を脱ぎ脱ぎしてくれているのだった…。


つづく

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